『お月見♪』





「お月見♪、お月見♪」
と、浮かれながら部屋に入って来たのは、
ここクリステラ・ソングスクールの校長フィアッセ=クリステラその人だった。
「どうしたんだ、フィアッセ。ずいぶんと浮かれているようだが」
と、尋ねたのは、
ソングスクールに常駐する唯一の男性で警備担当、そしてフィアッセの夫である、
恭也=クリステラであった。
「うん。今夜は満月でしょ?だからお月見パーティーするんだって」
「へー、イギリスにもそういう風習があるのか?」
「ううん、私は聞いたことないよ〜。でも企画したの、ゆうひだから・・・」
「なるほど、あの人らしい・・・。それで、何時にどこでやるんだ?」
「ん〜、後でゆうひが教えるとか言ってたけど・・・」
その時、扉をノックする音がし、
「フィアッセ〜、おるか〜?」
とSEENAこと椎名ゆうひが入ってきた。
「おろ?恭也くんもおったん? もしかしてお邪魔だったか〜?」
「ゆ、ゆうひ!」
「ゆ、ゆうひさん!」
2人は顔を赤くして慌てた。
「冗談や、冗談。恭也くんもおったんならちょうどええ。恭也くん、今夜の事聞いた?」
「ええ、たった今聞いたところです。」
「それで、ゆうひ。何時にどこでするの?」
「6時に食堂でやるで〜」
「えっ、食堂でするんですか?」
「ゆうひ、食堂じゃお月様見えないよ〜、しかも6時じゃ早くない?」
「ほら、外じゃ恭也くん、ゆっくりできんやろ?それに早くから始めるのは
少女楽団の子もおるからや」
「そっか、少女楽団の子がいるんじゃあんまり遅くはなれないね」
「すみません、気を使っていただいて。」
「ええって、ええって。それにお月見なんて半分騒ぐための口実やからな〜
 それに本当のお月見やったら、後で2人でしっぽりとすればいいやん」
「ゆ、ゆうひ」
「・・・・・」
「ほな、準備できたら呼ぶさかい、そしたら来てや〜」
というと、ゆうひは部屋を出て行った。
「ゆ、ゆうひ、相変わらずだね」
「そ、そうだな。でも折角気をつかってもらったんだ、今夜は楽しもう」
「そうだね」
と言うと、2人は軽く口付けを交わした。





「かんぱ〜い♪」
かくして「お月見」の名を借りた宴会が始まった。
2・30人の少女・女性達、しかも声が命の歌うたい達の話し声は
否応なく恭也に届いていた。

「ねえねえ、恭也さんってやっぱりかっこいいよね〜」
「ほんと、校長先生がうらやましいわ」
「私、誘惑して不倫しちゃおうかな〜」
「きゃー、大胆〜」
とか、
「校長先生と恭也さんって幼馴染なんだって」
「じゃ幼馴染の恋が結ばれたの?」
「きゃー、ロマンチック〜」
とか聞こえてきてただでさえただ一人の男である恭也は
少々、いやかなり恐縮していた。

「ねえ、ゆうひ」
「ん、なんやリーファ?」
「日本のお月見ってこんなに賑やかなの?」
「うんにゃ、これはゆうひさんが企画した会やで〜
 しっぽりとしたお月見なんてできるわけないやろ〜」
「それにな、しっぽりとしたお月見は後であの二人がするやろ(にやり)」
とゆうひはフィアッセと恭也に視線を移した。
「そうだね〜(にやり)」
リーファもそれにならった。

宴も終りにさしかかったころ、一人の学生がゆうひに尋ねた。
「ねえ、SEENA先生。」
「なんや〜?」
「この前、本で読んだんですけど、日本には月にかかわる少し悲しい
 物語があるそうですね」
「物語?」
「ええ、月に帰っていく女性の話」
「ああ、かぐや姫やな」
「かぐや姫?」
「そうや」
ゆうひはその学生にかぐや姫の話を話して聞かせた。
ほかの学生たちもゆうひの話に聞き入っていた。
「なんか、せつないお話ですね」
「かぐや姫、かわいそう・・・」
場はしーんと静まりかえった。
「私思ったんですけど、かぐや姫と校長先生、なんか感じが似ていません?」
「えっ、わたし?」
といきなり言われて驚くフィアッセ。
「うん、私もそう思った」
「SEENA先生は、どう思います?」
「そうやねえ、似てるかもしれんねえ」
「でもな、フィアッセがかぐや姫と大きく違うとこがあるんよ。それはな〜」
そういうと、ゆうひは立ち上がり恭也をビシッと指差すと
「恭也くんを連れて帰ったところや〜」
と声たからかに言った。
「きゃー♪」
会場は黄色い声に包まれた。




「きれいなお月様だね」
「そうだな」
宴の後、恭也とフィアッセは、庭に出て月を眺めていた。
「今日は、楽しかったね」
「ああ、少しいや、かなり圧倒されたけどな・・・」
「うふふ、まわりみんな女の子だもんね」
「それにしても、わたしがかぐや姫とだぶるなんて思ってもみなかったよ〜」

「ねえ、恭也。本当にこっちに来て良かったの?」
「どうした、その事については何度も皆で話しただろう」
「そうなんだけどね。かぐや姫の話を聞いてふと思ったの」
「美由希となのはがさびしがっていないかなって」
「そうかもしれんな。でも俺がここにいるのは、俺の願いだからだ」
「あのツアーのとき思った。ずっとフィアッセと一緒にいたいと・・・迷惑か?」
「ううん、そんな事ない。ありがと、恭也。大好きだよ〜」
「俺もだ、フィアッセ」
「でも、時々は顔見せに行こうな。」
「うん♪」
こうして寄り添う二人を月明かりがやさしく照らしていた。




〜〜〜〜〜 おまけ その1 〜〜〜〜〜
校舎の窓に群がり、学生・講師たちが二人を見ていた。
「どや?あれが本当の日本のお月見の姿や〜」
『お〜』



〜〜〜〜〜 おまけ その2 〜〜〜〜〜
恭也とフィアッセの部屋にて・・・
「フィ、フィアッセ。その格好はいったい・・・」
「ゆうひが月にウサギはつきものだからって」
フィアッセは頭にウサ耳、おしりにはふさふさの丸い尻尾をつけた、バニーガールさんだった。
「どうかな?似合うかな?」
上目遣いに恭也を見るフィアッセ
「フィアッセーーーーー」
ガバッ
「きゃー(はーと)」
かくして、おおかみ恭也はフィアッセうさぎをおいしく食べちゃったのでした♪
めでたし、めでたし(笑)



(あとがき)
調子に乗ってまた書いちゃいました。
おまけその2を書きたかっただけですけど・・・
書いた後に気づいたんですが、ゆうひさんは英語がしゃべれないので
講師は無理だったかな?
でもこの手のパーティーにはゆうひさんは欠かせませんからねえ・・・
よしとしよう。
今回も気に入っていただければ幸いです。
でわ〜



魔術師からのお礼状

おまけ2、フィアッセのバニー!!
他に語ることなし!!








じゃ、さすがに私の性格がばれそうですね。

やっぱり、こういったイベント時にはゆうひは欠かせませんね。
しかし、恭也マスオさんになったのか。
フィアッセかぐや姫は月とは言わないけどイギリスまで恭也を連れて行ってしまいましたとさ。

さあ、皆で狼になって感想を書いて一票投じやがれ!!



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