『遊園地』




ある晴れた休日、恭也はいつものように・・・
盆栽の世話をしていた。
「うむ、なかなかいい枝ぶりになったな」
そして、彼の隣では
「ねえパパ、ここ、こんな感じでどうかな〜?」
なぜか盆栽に興味を持った彼の娘のティオが、大きなはさみを手に
自分の盆栽の世話をしていた。
「おお、なかなかよくなったな」
「えへへ♪」

「パパ・・・」
「ティオまで・・・」
それを縁側で少しあきれて見ているのは、恭也の妻のフィアッセ、
そして息子の士郎だった。


「ねえ、恭也。せっかくのお休みなんだから、お天気もいいし
どこかに行きましょうよ〜」
「そうだよ、パパ。僕もどっか行きたい〜。
 ね、ティオも行きたいよね〜」
「えっ、わたしは別に・・・」
「(む〜)」
「はい、わたしも行きたいです・・・」
「なら、3人で行って来れば・・・」
「(む〜)」
「(む〜)」
「(パパ、ごめんなさい・・・)」
「・・・わかった、みんなででかけるか」
「うん♪」
「やった〜♪」
「で、どこに行きたいんだ?」
「僕、遊園地がいい!」
「遊園地か、ティオは?」
「遊園地? わたしも行きたいです♪」
「だったら、遊園地に決まりだね〜。ちょうど券もあるし♪」
「そうだな。って、フィアッセもしかして最初から・・・」
「てへっ、桃子から『みんなで行って来なさい』ってフリーパス券もらったの♪」
「・・・・・」
「わ〜い、遊園地、遊園地♪」
「わ〜い♪」



鷹笛プレイランドについた親子四人
「ねぇ、パパ、早く早く〜」
「ママも〜」
「はいはい」
「おいおい、あんまり引っ張るな。それで、まずどこに行くんだ?」
「あれ♪」
「あれ?」
「うん、じぇっとこーすたー♪」

ジェットコースターの乗り場。
「え〜、乗れないの?」
「そんな〜」
「ああ、身長が足りないからな」
「「しんちょう?」」
「背の高さの事だ。このくらいないと危ないからな」
と恭也は身長制限の高さまで手をあげた。
「ちぇ〜」
「残念・・・」
「なに、すぐに大きくなるさ。それまで我慢できるな?」
「「は〜い」」

メリーゴーランドの乗り場。
「わたし、パパと乗る〜」
「僕も〜」
「えっ、俺も乗るのか?」
「わたしも恭也と乗りたいな♪」
「フィ、フィアッセまで・・・」
「えへっ」
「ね〜パパ〜?」
「いいでしょ〜?」
「わかった、わかった。順番にな」
「「「うん」」」

そしてお昼時。
「パパ〜、おなかすいた〜」
「僕も〜」
「でも、レストランいっぱいだから、時間かかるぞ」
「大丈夫だよ〜」
じゃーんとフィアッセはバスケットからサンドイッチの入ったタッパーを
いくつか取り出した。
「よ、用意がいいな」
「出掛けに桃子からお昼にみんなで食べなさいって貰ったんだ」
「わ〜い♪」
「桃子おねーさんのサンドイッチ好き〜♪」
「桃子おねーさん?」
「うん、この前、ティオと2人で『おばあちゃん』て呼んだら、
『桃子おねーさんってよんでね』って言われたんだよ。あの時は怖かったね〜」
「うん、あの時は美由希おばさんとたんれんしているときのパパよりも怖かったよ〜」
「・・・(桃子・・・)」
「・・・(かーさん・・・)」
「え、え〜と、芝生の中は入っちゃダメだから、木陰のベンチで食べよっか」
「「うん♪」」

お昼を食べた親子はまたアトラクションをまわり始めた。

お化け屋敷前。
「おい、2人とも。本当にここに入るのか?」
「2人とも大丈夫? ここ、ものすごーく怖いって話だよ」
「だ、大丈夫だよ〜。お、男の子だもん」
「わ、わたしも〜。み、みかみのけんしは負けないもん」
そのとき、お化け屋敷の中から、
「キャーーー」
「わーーーー」
「イヤーーー」
という悲鳴が聞こえてた。
そして出口から出てきた高校生らしきカップルの、男の子のほうは青ざめ、
女の子のほうは泣きじゃくっていた。
「どうする? 入るか?」
「ど、どうする?」
「ど、どうしよう?」
士郎とティオは目配せすると、
「「パパ、やっぱりやめる〜」」
といいながらお化け屋敷に背を向けて離れていった。
恭也とフィアッセは苦笑しながら2人の後を追いかけた。


イベント会場。
TVで放映している戦隊もののヒーローショーを見終わって、出てきた四人。
「カッコ良かった〜」
「う〜ん」
「あれ? どうしたのティオ? 面白くなかった?」
「そうじゃないんだけど、なんかTVとちがうな〜って思ったの」
「TVと?」
「うん。TVだとびびび〜って光線が出るでしょ?」
「ああ、なるほど」
「ねえ、パパ。さっきのだったらパパもできるでしょ?」
「ああ。さすがに光線は無理だけどな」
「へ〜、パパすご〜い。ぼく、見てみた〜い」
「今度な。」
と恭也は士郎の頭をなでる。
「やっぱりパパってすごいな〜。ねえパパ? わたしもできるようになるかなあ?」
「ちょっと、ティオ・・・」
「ああ、美由希おばさんだってできるんだ。ティオもきっとできるようになるぞ」
と今度はティオの頭をなでる。
「恭也・・・」
「そっか〜。よおし、わたし頑張る!」
「もう、ふたりとも。あんまり危ない事はして欲しくないのに・・・」
「大丈夫、ママ。ママのあとは僕が継ぐから」
「士郎・・・。ありがと♪」
今度はフィアッセが士郎の頭をなでる。


夕方になり、親子は観覧車に乗っていた。
「わ〜、高いね〜」
「お家、見えるかな〜」
とはしゃぐ子供たち。
その横でフィアッセはニコニコしていた。
「どうしたんだ、フィアッセ? そんなにニコニコして」
「懐かしいね、恭也♪」
「え、な、なにがだ?」
「もう、とぼけちゃって♪」
「どうしたの、パパ?」
「ママ、なんか嬉しそうだね?」
「実はね、この観覧車はね・・・」
「や、やめろ、フィアッセ」
「「なに、なに?」」
「パパがプロポーズしてくれたところなんだよ〜」
「・・・・」
「プロポーズってな〜に?」
「わたし知ってる〜。結婚してくださいって言う事なんだよね」
「そうよ、ティオは良く知ってるね」
「なのはお姉さんの本に書いてあったよ〜」
「(なのは・・・いったいティオになにを見せたんだ?・・・)」
「そのときのお話、わたし聞きた〜い」
「僕も〜」
「そうね〜、あのときも、こうして観覧車に乗っててね・・・」
「や、やめろ、フィアッセ」
「いいじゃない、恭也。子供たちに聞かせようよ?」
「ダメだ。(恥ずかしいじゃないか)」
「もう・・・。パパがダメって」
「「え〜〜〜」」
「そうね、今度パパがいないときに話してあげる♪」
「「やった〜」」
「フィ、フィアッセ・・・」
夕日があたっているのに相まって恭也の顔は真赤に染まっていた。



帰りの車の中、ティオと士郎は、チャイルドシートで寝息をたてていた。
「2人とも良く寝ているね〜」
「はしゃぎ疲れたんだな」
「恭也、今日はごめんね」
「ん?どうしたんだ」
「だって、恭也を無理やり連れ出したみたいなものだもの」
「何を言う。礼を言わなければならないのは俺のほうだ。
 フィアッセが連れ出してくれなければ、子供たちと遊びに出るなんて
 ことはしなかっただろうからな」
「俺は、とーさんと遊んだ記憶はほとんどない。鍛錬するか
 無茶な武者修行の旅をするかだったからな」
「あはは・・・」
「だから、この子達にはちゃんと親と遊んだという思い出を
 持たせてあげたいと思う」
「俺は、また忘れるかもしれないから、その時は、フィアッセが
 今日みたいに連れ出してくれないか?」
「うん、わかったよ〜。どんどん思い出を作っていこう〜」
「ほんと〜?」
「じゃ、明日は水族館がいい♪」」
「え!?」
「お、お前達、起きてたのか・・・」
「えへへ、約束だよ〜」
「戦えば勝つのが、みかみのけんしでしょ〜」
「ちょ、ちょっと待て! 明日は休ませてくれ!」
「「ダメー♪」」
「フィ、フィアッセからもなんか言ってくれ」
「頑張ってね、パパ♪」
「そ、そんなーー」
「「水族館♪ 水族館♪」」
「かんべんしてくれーーーーー」



おしまい



(あとがき)
え〜と今回の他力本願寺最後(になると思いますが)の投稿です。
私個人的に恭也とフィアッセの子供達が出ているお話が大変好きなので
自分でも書いてみました。
ちなみに子供達の設定としてティオに御神の剣士を、士郎に歌手を
目指してもらっています。
今回も気に入っていただければ幸いです。
でわ〜




魔術師のお礼状

これは、何と言うか和みますね。
癒し系な正統派とらハSSです。
いやぁ、上でかんさん御自身も書いてるようにティオが剣士で士郎が歌手を目指してるんですね。
天使のソプラノは継げませんね、男はテナーでしたっけ?
ちなみに、一番驚いたの車を運転してる部分だったり。

私の中で恭也が車を運転しているってイメージが皆無のせいかも。

あ、でも運転してるのフィアッセかもしれないのか。
そうするとまるで違和感ないや。

何はともあれ、ポワワーンと癒し系の作品に感想を贈ってください。
さあ、これをきっかけにフィアッセは3連覇達成に向けて走り始めるんですかね?



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