魔術師のお礼状


はい、ということで新婚さんのセイバーと士郎君です。
え?違う?
そんな馬鹿な!?
だって、ハートのエプロンですよ。
これは、新婚さん以外考えられません、というか考える気がありません。
しかし、凛やシオンも顔負けのミニスカプリーツスカートですが、やはりその辺りの空間は固有結界なんでしょうか?


例えていうなら

サーヴァント『お嫁さん』って感じですよ。
「―――問おう、汝が我が旦那様か?」


お礼SS

「シロウ、次はどこを掃除すればいいのですか?」

「え・・・そうだな・・・」

お風呂の掃除を終えたため、濡れた手や服をタオルで拭きながらセイバーが声をかける。
せっかくの日曜日、何故か大掃除めいたことをしている衛宮家、無論こういったイベント時は虎は野生の感を発動させて衛宮家に寄り付きもしない。

「そうだな、じゃあ、居間の埃を払ってくれるか」

「わかりました」

何が楽しいのか、最近買ったピンクのエプロンを身に着けるとはたきでパタパタと埃を払い始めた。

「お掃除、お掃除♪」

鼻歌まじりで掃除をする彼女こそがイングランドの英雄アーサー王だと誰が信じるだろう。
最近のセイバーは、もう英霊というよりも普通の年頃の少女という感じだ。
最も、相変わらず道場で士郎を滅多打ちにしたり、並々ない食への探求を目の当たりにすると『普通の』という部分に疑問符をつけてしまうが。

『それでいい。』

楽しそうなセイバーの後姿を見守りながら思わず笑顔がこぼれる。
士郎が望んだのは、英雄として『アーサー』の彼女ではなく、少女の『アルトリア』と過ごす、退屈だけど貴重な平和な一日だからだ。

凛ではなくても、新婚家庭とからかう気持ちは良くわかる。
士郎がバイトや学校で家を空けている間、洗濯や掃除をしながら待ってるセイバー。
最近は、魔術の補充が、それこそ新婚家庭よろしく、頻繁に行われているので、寝ている必要がなかったりするわけだ。
もっとも、食事だけは決して自らの手で作ろうとしないが。

「私にはシオウの料理が好いのです」

一度、理由を尋ねた凛にセイバーはこう答えた。

「セイバーさえ良ければずっとオレの味噌汁を飲んでくれ」

という、士郎の返答はプロポーズの言葉に聞こえなくない。

最近はオシャレにも興味を持ちはじめたのか、凛と二人で買い物に行くことも多い。
一度二人についていったが、とにかく疲れたの一言だった。

女の買い物は長い。
それに加え、凛とセイバーの人目を引くこと人目を引くこと。

視線にさらされなれていない士郎にとっては監視されているも同然だった。


「お掃除〜♪」

鼻歌に合わせてゆれるスカート。
思わず視線がそちらに行ってしまい慌てて離す。

でも、士郎君も結局男の子、好きな女の子があんな短いスカートをフリフリしてれば、横目でチラリチラリと目が行ってしまうのは正義の味方といえども仕方がないことに違いない。
一度気が付いてしまったらもう頭から離れない。
凛の影響か短いスカートからすらりと伸びた白い足。
柔らかそうな太もも。



・・・いや、実際その柔らかさも、固有結界に護られたスカートの中身も脳裏に思い浮かべられるくらい良く見知っているわけだが、やはりチラリズムって言うのは別の趣があるわけで・・・


「って、オレは何を考えてるんだ」


不思議そうに自分を見るセイバーに何でもないと答える。


「そうですか、では私は続きをしますね」


何とか煩悩を追い払おうと苦悩する士郎。


「私は、貴方に会えてよかった。
貴方に会えなければ私はこんな幸せを知ることはできなかった」


夢見るように静かに瞳を閉じる。


「好きな人のために掃除や洗濯をして、シロウとともに何気ない日常生活をともに生きる。
私が王として、貴方が正義の味方として護りたかった物はこういった日常なのですね」


「セイバ、いやアルトリア・・・」


滅多に士郎が呼んでくれない自分がかつて捨てた少女の名前。


「オレだって同じだよ、お前に出会うまで、オレはただ『正義の味方』になりたかった。
でも、アルトリアと出会って、自分に欠けてた物がわかった気がする。
何を護りたいのか、明確になったのはお前のおかげでよ」

いつの間にか、自分の前に立つ士郎、その瞳はセイバーを強くやさしく見つめている。
士郎の固い手が、アルトリアの白い頬に添えられる。
目をつぶり近づいてくる士郎の顔。


「ちなみにシロウ、先ほどまでの露骨な視線ですが・・・」


「え゛!?」


近づきつつあった顔がビクッと止まる。
さすが、直感スキルA、とっくに士郎の視線に気が付いていたらしい。
怖くて目を開けられない。


「さて、掃除も終わったことですし道場にでも行きましょうか」


するっと士郎の腕から離れていくアルトリア。
こうして冬木の町に響き渡る士郎の悲鳴。


あの赤い弓兵がいればきっと呟いたに違いない


「戯け」



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