『晩酌』
「ただいま」
「おかえり〜♪」
「あら、お帰り」
深夜の鍛練から帰ってきた恭也を迎えたのはリビングでグラスを傾けるリスティと桃子だった。
本来ならここにいるはずの美由希は受験勉強のため深夜の鍛練には参加していない。
「リスティ……と、かーさん。まだ起きてたのか」
「……なんか、リスティちゃんとわたしと随分と扱いが違わない? せっかく帰ってくるのを待っててあげたのに」
「気のせいだろ。とりあえず、汗を流してくる」
恭也は桃子の文句を一蹴して風呂場へと向かった。
「あ……もう。最近恭也が冷たい」
「そうかな、ボクにはいつでも優しいよ?」
「リスティちゃんは恭也に愛されてるもの。少しでもいいからその愛をわたしにも分けてほしいわ」
深々と溜め息を吐いてグラスを避けてテーブルに突っ伏す桃子とは対照的に余裕のある表情でグラスを空けるリスティ。
「まったく、育て方間違ったかしら。甘い物とお酒が大好きだった士郎さんとは正反対だし」
ぶちぶちと恭也に対する文句を漏らし始める桃子。
「まぁまぁ、恭也のことはボクに任せて。桃子さんはもう休んだ方がいいんじゃないかな?」
「そうね、そうするわ。それじゃ、後お願いね。おやすみなさい」
リスティに諌められて桃子は席を立つと自分が使ったグラスを水に浸けて部屋へと向かった。
「おやすみ桃子さん」
桃子を見送ったリスティは空になったグラスにワインを注ぐと再びちびちびと飲み始めた。
「ふぅ、さっぱりした。リスティだけか? ああ、そうか、かーさんはもう寝たのか」
リビングに姿を見せた恭也は入ってきた瞬間に状況を把握した。
「やぁ、遅かったね。恭也も一杯どう? もう未成年じゃないんだから一杯くらいはいいだろう?」
と言いつつも、リスティは有無を言わせないつもりのようで、すでに恭也の分のグラスは満たされていた。
半分より少なくなっていた自分のグラスにも注ぎ足すのを忘れないあたりはさすがと言うべきか。
「む……まぁ、このくらいならいいか」
一瞬眉を顰めたが、たまにはいいだろうと恭也はソファーに腰を下ろすとグラスを手に取った。
「よしよし。それじゃ、乾杯」
かちん、とグラスを合わせて乾杯する二人。
「……ありがとう」
「ふぇ?」
不意に恭也が言った言葉に上手く反応できなかったリスティは間の抜けた返事しか出来なかった。
「俺が帰ってくるのを待っていてくれたんだろう? だから、ありがとう。そう言ったんだ」
「ふ、ふん。そんなの当然じゃないか。旦那の帰りを待つのは良妻の務めだろ」
恭也の言葉と笑顔に完璧にやられてしまったリスティはすっかり余裕を無くし、早口で捲くし立てるとぐい、と一気にグラスを傾けた。
アルコールが入り赤みを帯びていたリスティの顔がますます赤くなったのを見て恭也は相好を崩した。
他人が第三者としているときのリスティは強気でクールだが、恭也と二人きりのときは一転して拗ねたり甘えたりと感情と表情が豊かになる。
その傾向は好きな人には甘い恭也の性格も相まって頓に強くなっている。
「あぅ……」
ぽむ、と恭也の大きな手がリスティの頭に載せられる。
「そんな良妻の旦那である俺は幸せ者だな」
そのまま二度、三度と滑らかで艶のあるリスティの髪を恭也が優しく撫でるとリスティは恭也の肩に頭を乗せた。
「それを言ったらボクだって幸せ者だよ。こーんな素敵な旦那様がいるんだから」
「そうか」
「うん。ボクは恭也のこと愛してるし、恭也もボクのこと愛してるでしょ?」
「…………」
恭也はそれには何も答えないでぽんぽんと軽くリスティの頭を子どもをあやすように撫でた。
しかし、リスティにはそれで十分に恭也の気持ちが伝わっていた。
これは不器用で照れ屋な恭也なりの愛情の表し方のひとつなのだということをよく知っているからだ。
「さ、もう寝る時間だ。そろそろ部屋に行こうか」
「……うん」
グラスを水に漬け、ボトルを片付けるとリスティを抱きかかえるようにして支えながらて部屋へ向かった。
例によってどこかへ投稿するときだけのあとがき
ども、須木透言います。たまにトールです。最近使ってませんが。
これ、何とか間に合い……合ってるとおもいたいです。
某N.T.氏の所為(おかげ?)で恭リスSSたくさん書いてます。
そのため、いつの間にかすっかりリスティがお気に入りですよ。
いや、それはそれで良いんですけどね。
これで少しでもLMPを増加させることが出来たならOKです。
例によってあとがき使い回しでゴメンナサイと言っておきます。
魔術師のお礼状
うん、恭也冷たいなぁ。
桃子さんに何のフォローもないんかい!!
でも、その分恭也×リスティは甘々のストレートな直球ですね。
リスティの髪をポンポンとするところなんか、もうLMP〜!!って感じですね。
恭也にだけ甘えるところとい短い中にリスティ萌が凝縮されてます。
ごちそさま〜!!