○○日記



 某月某日 曇り

 仕事の依頼をしに大学まで恭也を迎えに行く。
 暫く正門の前で待っていると恭也がやって来た。だが一人ではなく女の子と一緒だった。
 同じ大学に通う月村忍ちゃんではない。まったく見知らぬ、多分この大学で知り合った子だろう。
 早足で彼に近づいて女の子を睨み付け、「急ぎの用事だから」と恭也の腕を引いて車に連れて行った。





 某月某日 雨のち晴れ

 今日は休日。昼から翠屋に行く。
 カウンター席で恭也の淹れてくれた珈琲を飲みながら彼と話をしていた。
 彼と話をしている間はずっと笑みが耐えない。
 だけどいつまでも話をしていられず、恭也は途中で奥の厨房へと行ってしまった。
 彼が居なくなってしまった途端、口から溜息が零れた。





 某月某日 晴れ

 今日は仕事があって帰りが少し遅くなった。
 夕食を片付けていつものメンバーで酒を呑む。
 今日の仕事で恭也がいかに活躍をしたか話をしていると、
「リスティ、ずっと恭也君のことばかり話しているな」
 耕介がからかうように笑いながら指摘した。
 直後空のビール瓶が彼の頭に直撃したが、これ位日常茶飯事だから問題ない。
 グラスに残っていた酒を一気に煽る。顔が赤くなったのは酒のせいだけではないと思う。





 某月某日 曇りのち晴れ

 今日も恭也と仕事をした。仕事の後行きつけの屋台に誘う。
 相変わらず彼は酒をあまり飲まないが、ここのおでんの味は気に入っているようだ。
 彼が一緒だとペースがいつもよりも少し速い。もしかして緊張しているのだろうか?
 帰りは恭也が寮まで送ってくれた。
 本当に送ってくれただけで、それ以上は何もなかった。
 彼が真面目な人間であることは解っているが、もう少し何かあってもいいように思う。





 某月某日 雨ときどき曇り

 いつもどおりに起きてリビングに入ると恭也と鉢合わせした。
 何でも忘れ物を届けに来た彼を、耕介が朝食に誘ったらしい。
 そんなこと露とも知らず、思いっ切り彼の前でパジャマ姿を披露する。
 顔を真っ赤にして部屋に駆け戻った。

 耕介には後でお仕置きが待っていた。





 某月某日 晴れ

 今日は大ニュースがある。何と明日は恭也とデートだ!
 といっても買い物に付き合うだけなのだが――――まあ、これも一応デートだろう。
 何にしてもこのチャンスを逃す手はない。
 部屋に戻るとすぐに持っている服をあらかた引っ張り出した。明日のデートに相応しい服装をじっくりと吟味する。
 二時間以上掛けて考えた末にようやく服が決まった。
 普段彼の前で着ているのに、ちょっとだけ大人の魅力を加えたようなものだ。
 下着の方は彼の好きな色である黒をチョイスした。
 見せる機会があるかどうかは分からないが……。





 某月某日 快晴

 今日はいつもより目覚めが早かった。
 シャワーを浴び、髪を梳かし、強過ぎないように気を付けて化粧を施す。身嗜みをしっかりと整え、朝食を取る。
 準備は万端。あとは――――





「な、なななななななんだよこれッ!?」

 リスティ・槙原は部屋で悲鳴に近い声を上げた。といってもここは彼女の部屋ではない。リスティに最も近しい女性――というかリスティが最も影響を受けた女性――仁村真雪の部屋である。
 本来の部屋の主人たる真雪はおらず、リスティ一人だけがこの場にいて肩を小さく震わせていた。両手で握り締めるようにしてA4サイズのノートを持っている。ノートの表紙にはサインペンで大きく、


『リスティと恭也 愛の観察日記』


 などと世迷言のようなタイトルが書かれていた。

「おい、勝手に人の部屋に入って何してんだよ?」

 背中から聞こえた声に振り返る。勝手に部屋に入ったことを怒っているのだろう、仁村真雪が仁王立ちしてリスティのことを睨んでいた。
 しかし怒るのはこちらの方だ。リスティは負けじと睨み返し、握り締めていたノートを真雪に突き出した。

「真雪! これは一体何だよ!」

「あん?」真雪は怪訝そうに突き出されたノートに目を向け――げっ、と表情を歪めた。明らかに見られては不味いものが見つかってしまった、という反応だ。
 睨みを利かせていると真雪が根負けしたように苦笑いを浮かべて喋りだした。

「いや、そのさ、最近ちょっとネタに詰まっててよ。丁度いいネタが無いかと思って――な?」

 ここのところ何かこそこそやっていると思っていたらそんなことか。

「勝手に人を漫画のネタにするな! 大体こ、こんないい加減な…………」
「いや見たまんまを書いただけだぞ。それにお前も嬉しそうに話して――」

 言葉の途中で更に強く睨まれ真雪は押し黙った。

「とにかく、これは没収させて貰うよ。いいね?」
「あー、まあ見つかっちまったんじゃ、しゃーねーわな」

 頭をがしがしと掻いて真雪は小さく溜息を零した。なんだか随分と諦めが早いのが気になるが、いつまでもこのことに構っている暇は無い。そろそろ恭也とのデートの時間だ。

「もう二度と変な真似するなよ!」

 言い捨ててリスティはノートを片手にさっさと部屋を出て行った。


「へいへい」

 気の無い返事を真雪は返す。そしてリスティの足音が一階へ、玄関を出て行ったのを確認して、にやりと口の端に笑みを浮かべた。
 机の引き出しからモバイルを取り出し、ハンガーのジャケットを片手に引っ掛けて部屋を出て行く。
 真雪は寮を出た後大通りですぐにタクシーを捕まえた。運転手に伝えた行き先は、リスティの行き先と同じだった。

「まだまだ甘いねアイツも」

 後部座席で真雪はモバイルを開いた。ワープロソフトを起動させ、デスクトップにあったファイルを開く。
 ファイルのタイトルはリスティに没収されたノートと同じものだった。

〈了〉






 はじめましてとお久しぶりですどうも天田ひでおです。
リスティ×恭也応援SS#@何でしたでしょうか?
 どちらかというとリスティ&真雪応援SS≠カゃねー?
 とか言われそうですけどそこは敢えてスルーでお願いします。リスティ×恭也応援SS≠ナす。書いた本人がそう言っているのできっとそうです(ぉ

 リスティ×恭也いいですよね。具体的に言うとあのリスティさんの普段の(以下リスティ×恭也について延々語られるが長いので割愛)

 ちなみにこのSSは『リリアとトレイズY 私の王子様《下》』収録『王子観察記』を読んで思いつきました。リリアとトレイズいいですよね。具体的に言うと(以下リリアとトレイズについて延々語られるが長いので割愛)

 とまあそんわけで、リスティ×恭也応援宜しくお願いします♪ 


魔術師のお礼状

はい、今回は恭也×リスティの応援SSです。
ってか、まさか二作同時に投稿してくれるなんて思わず、先に恭×フィアだけ載せちゃいました。失礼しました。
しかし、リスティかわいいなぁ。
それ以上に耕介可愛いな(エ?
ビール瓶で頭を痛打されたシーンなんて思わず笑みがこぼれちゃいました。

いや、まあ、個人的には恭也の大学の友達の女の子のリアクションが見たいですw

ということで、私と同じくニヤニヤした人は感想を送りましょうね〜。


投票所

web拍手を送る