真一郎君が泊まりにきて、今日で…5日目。
平気だ、平気だ、と自分に言い聞かせて今日にまで至ったが…
そろそろ、俺の自制心も限界に近い。
前回振り切れちゃったじゃん、てつっこみはなしね。
ほら、未遂だからセーフ。OK?
だって未遂だもん?
やってないもん?
出しちゃったけど中じゃないからね?
……最初からちょっと飛ばしすぎてるか、俺?
真くんと一緒
覚醒編
「あ、耕介さんお出かけですか?」
「うん、ちょっとね」
今日、真一郎君は一日中寮にいるらしい。
というわけで、俺は今日一日外で過ごすことにする。
あんな誘惑空間に漬かるのは、夜だけで十分だっていうか、一日中漬かってたら俺はきっと道を盛大に踏み外す。
既に踏み外してるじゃないかというつっこみは以下略。
「しかし、どうしたものか…」
適当に町をぶらつきながら、ぼそっと呟く。
真一郎君が寮に滞在するのは明日まで。
つまり今日の夜を耐え切ればいいわけなのだが…
――本当にそれでいいのか?
く、悪魔の囁き…!?
――しかし、真一郎がいなくなってしまうことに寂しさを覚えているのも事実だろう?
そ、それは確かに否定しきれないものが…
「…もしかして俺は、もう後戻りできないところまで来てしまっているんじゃ?」
否定したい。
凄く否定したいけれど、真一郎君を見ると胸の鼓動が高まってしまうという現実。
これが女の子相手だったら何の問題もない現象なんだが…
「真一郎君は男の子だしなぁ…」
性別の壁は高く険しいのだよ。
そんな所に挑む気なんてさらっさらないわけで。
――自分に嘘をつくのはよくないぜ?
…う。
今日の囁きは何やら説得力があるような…(気のせいです)
「何やら困ってるみたいっすね」
「!?」
いきなり声をかけられ、マジびびる俺。
さっきまでの独り言が聞こえていた!?
振り返った先にいた人物は…
「…………誰?」
「って忘れたんすか!?
俺ですよ俺、端島大輔です」
言われた名前を頭の中で吟味してみる。
「…………誰?」
「………」
「………」
「……そういや、初対面でしたっけ」
(自己紹介中)
「ああ、ななかちゃんの彼氏君なんだ」
「今はちっと離れちまってますけどね。
まあ色々あいつもお世話になっちゃったようで」
「いやいやこちらこそ…で、何の用?」
「そうそう、話は戻りますが…」
こほん、と一つ咳払いが入ってから、
「耕介さん、あんた今、真一郎に恋しちまってるでしょう!?」
「!!?」
ずびしっ…と今俺が悩んでいることを言い当てた。
「な、何故それを…じゃなくて、俺が真一郎君になんてそんな馬鹿な…」
「隠さなくたっていいんです。
気持ちはわかります。
男同士なんておかしい、そう思っているんでしょう?」
「だからそんなことじゃ…ってちょっと待った、気持ちは分かるってひょっとして君も…」
「ふっふっふっふ…」
俺がそう指摘したとき、大輔君は怪しい笑いを浮かべた。
「今、君‘も’って言いましたよね?」
………。
し、しまったぁあああああ!!!!
「ゆ、誘導!?
誘導尋問!!?」
「落ち着いてください。
気持ちはわかるって言ったでしょ」
こちらの反応をすべて見透かしているかのように、大輔君は落ち着き払って言葉を紡いでいく。
「俺も真一郎の奴とは付き合いが長いんで。
あいつの仕草にむらむらっと来たのは一度や二度じゃあない…」
「ということは、やはり…!?」
「……フッ」
大輔君は、ニヒルな笑みを浮かべただけで、明確な返答はしない。
しかし、それは事実を肯定するも同義の行動だ。
「!! もしや、ななかちゃんと疎遠になった理由は」
「いやそれは別件っす。
あのまめだぬき、せっかく俺が映画に連れてってやったってのに文句ばっかいいやがってね?」
あ、違うんだ。
「ちなみにどんな映画?」
「ダンサー・イン・ザ・ダークとか、ジョニーは戦場に行ったとか、エレファントマンとか」
「……そりゃあ、分かれるわな…」
「な!?
いい映画じゃないすか!?」
「否定はしないけど、カップルで見に行くもんじゃないだろ、アレ。
まあそれはともかく」
話が逸れてきたので修正を。
「結局君は何を言いに来たんだい?」
「…おっと、すっかり忘れてた。
えっとですね。
先達として、耕介さんにアドバイスを送りに来たんですよ」
「アドバイス?」
「ええ。
俺は真一郎と過ごしてきて、気づいたこと…悟ったことがあるんです」
「悟ったこと?」
「…真一郎を、男と思うのがそもそもの間違いってことです」
「いやしかしその事実は変えようがないだろう」
「耕介さん。
人の性別に、男と女しかないなんて、誰が決めたんですか?」
「え?」
一瞬、呆気に取られる俺。
しかし大輔君はそのまま言葉を続ける。
「つまり、人類には性別が三種類あるってことですよ。
男と、女と、そして…相川真一郎!!」
「!!!!!!」
全身に衝撃が走った。
「そ、そうか!
男同士は色々問題があるけれど。
男と真一郎君なら何も問題は無い!
だって性別違うもん!!
そういうことだね!?」
「Yes, I
do!!
その通りっすよ!
真一郎相手に、性別のことでああだこうだ悩む必要なんて無いんです!!」
「なるほど、そうだったのか!!」
それまで抱えてきた悩みが全て無くなった、まさにその時。
「落ち着け、君ら」
それは、俺たちの熱を一気に冷ますような冷淡な声だった。
聞こえた方向を見てみれば、そこにいたのは…
「「………誰?」」
俺と大輔君の声がハモった。
相手はそんな俺たちの対応が意外だったらしく、少し調子を崩しながら、
「し、失敬な奴らだな!
ふん、氷村遊と言えば、少しは聞いたことがあるだろう!?」
「「………いや、全く」」
またしてもハモった。
「「「………」」」
(自己紹介中)
「ああ、さくらちゃんのお兄さんだったのか」
「妹がいつも世話になってます」
「いえいえこちらこそ…で、何の用?」
「何の用もなにも、往来のど真ん中で頭の悪い妄想を大声で喋っていたからだ。
いいかお前たちよく聞け?」
一拍間をおいて、
「真一郎は僕のものだ」
「「お前が落ち着け」」
やっぱり俺たちの声が以下略。
「だいたいあんたは真一郎のライバルキャラっつうか、嫌味な敵キャラって立ち位置じゃなかったか?」
「いやいや、そういう風に接してるうちにある日突然目覚めました」
「目覚めちゃったか…」
俺は生暖かい目で遊君を見る。
「ま、それはそれとして」
仕切りなおすかのように改まった声を出す大輔君。
「こうして同じ志を持つ人間が集まったわけだし。
ここは一つ、この3人で勝負して、勝った奴が真一郎を独占できるってのは?」
「どういう流れでそうなるの?」
「いいだろう、貴様らに純血の夜の一族の力を見せてやる」
「あ、ノっちゃうんだ」
「耕介さんだって、目がマジ入ってますよ」
おや?
「…はっはっは。昔っから勝負事となると血が滾る性質でね?」
「まあ、どうやら全員異論は無いようで」
3人、顔は笑っているが目は笑っていない表情で向かい合った。
「やるか」
「やりますか」
「やってみるか」
「………」
「………」
「………」
「「「うぉぉおおおおおおおおお!!!!!」」」
…………
終わろう…ね?
あとがき
長かった他力本願寺の投票も終わってしまいましたね。
耕介×真一郎に投票して下さった方、ありがとうございました。
ではではー
(SSの内容にはあえて触れずに完)
魔術師の後書き
衝撃の問題作は、シャーマン○ングみたいな終わり方で終わるんですねw
プリンセス真一郎に蜜柑持たせると良いよ。
と、わかる人だけ笑ってくれれば良い後書きですが、ホント衝撃の問題作をありがとう。
衝撃で笑劇でした。
今回も良い感じに逝っちゃってます。
なんで、大輔こんなに男らしいの、ホント。
終わるの?
ちゃんと最後まで書ききってねw
人気投票じゃなくてノーマルの投稿作品として待ってるから。
きっと、読みたい人も一杯居ると思うんだ。
主に、大輔の言葉に納得した、困った人たちが。
いやぁ。
今回のイベントの最後を飾るのがこれかぁ・・・私好みですww
ご馳走様でした〜