「士郎、まだ起きてたんだ」
日付も変わろうかという時間に一人縁側に腰掛けて夜空を見上げていた士郎は、そう声を掛けられて振り向いた
「ん、どうも寝付けなくてな。ここしばらくはずっと夜に魔術の鍛練してたろ。そのせいかこの時間じゃ眠くならないんだ。遠坂こそもう寝てたんじゃないのか?」
桜や大河が泊まっていくことも稀にあるが、基本的に衛宮の屋敷で生活しているのは家主の士郎とその恋人である凜の二人だ
「わたしも士郎と同じ。どうも寝付けなくて。ね、隣座っていい?」
「ああ。けど、別にそんなこと聞かなくてもいいぞ」
「そう? ありがと」
にこ、と微笑むと凜は士郎のすぐそばに腰を下ろした
ふわり、と夜風に遊ばれて艶のある凜の髪が士郎の鼻をくすぐる
「ねぇ、士郎は何を見てたの?」
「空――というよりは星、かな」
「星?」
「うん、星だ。今日は――もう昨日になったかな。ほら、七夕じゃないか」
士郎が指さした先には一本の笹の木
それには衛宮の屋敷で食事をともにするものたちの願いが書かれた短冊が色とりどりの色紙で作られた飾りとともに吊るされている
「ええ、そうね。藤村先生が短冊に一杯願い事書いてたわね」
「ははは・・・」
凜が呆れ、士郎が苦笑いをするしかないその願いを一部抜粋
『みんなが作るご飯がもっとおいしくなりますよーに』
『タイガーって呼ぶなーっ!!』
『わたしの前でいちゃつくの禁止。てゆうかお姉ちゃんももっと構いなさいよぅ』
これでは凜が呆れ、士郎が苦笑いをするのも仕方がないというもの
ちなみに桜は今日も今日とて慎二のお見舞いだそうで、短冊には
『兄さんが一日も早く元気になりますように』
と書かれていて、それを見た士郎が、桜は優しいな、と桜の頭を撫でて凜に嫉妬の籠もった目で見られていた
「ねぇ、士郎」
「どうした?」
「士郎は七夕のお話知ってる?」
「七夕の話? ああ、織姫と彦星のあれか?」
「そう、それそれ」
「そりゃ、藤ねえに何度も聞かされてきたから一応は知ってるけど?」
士郎が切嗣に拾われて、衛宮の屋敷に大河が出入りするようになってから毎年のように士郎はその話を聞かされていた
「士郎はあのお話どう思う?」
「どう思うって言われてもなぁ・・・」
何と答えればいいのか上手く整理できず、まいったな、と頭を掻く士郎
「わたしの聞き方が悪かったわ、ごめんなさい」
「え、いや、遠坂は悪くないぞ。遠坂が言いたいことは大体理解できたし、上手く言葉に出来ない俺が馬鹿なだけだ」
バタバタと手を振って否定の意を表す慌て顔の士郎を見て凛は声に出して笑った
「何だよ、笑うことないだろ」
「ふふ、そうね、ごめんなさい。笑ったことは謝るわ。もう一回聞くけど、いい?」
「おう」
「士郎は自分が彦星の立場だったら、どうする?」
「え、俺が彦星の立場だったら?」
腕を組んで空を見上げる士郎
凛も釣られるようにして視線を上に向ける
二人の視界には一面の星空が広がる
「そうだな・・・そうなると織姫は遠坂なんだから、たぶん何とかして逢いに行こうとするんじゃないかな。あの天の川を渡ってさ」
空を見上げたまま士郎は体を倒して縁側に寝転がると凛の体に手を伸ばして引き寄せた
「きゃっ!? ちょ、ちょっと、士郎?」
「それでさ、遠坂が嫌だって言うまでこうやって抱きしめて離さないんじゃないかな。そんでさ、二度と離さないようにそのまま家まで連れて帰るんだ」
――ずっと、一緒にいたい・・・離れたくないから
士郎の言葉には言外にそういった意味が含まれていた
どこかへ投稿するときだけのあとがき
ども、須木透言います。たまにトールです。最近使ってませんが。
短い上に当日に間に合わなかった七夕SSです。
というか、Fateでは士×凛が一番だと言いたいだけです。
これを読んでくれた皆様、3票のうち1票を士×凛に入れちゃってください。
魔術師のお礼状
はや!!
須木さん、投稿はや!!
前回から引き続き凛ファンなんですね。
七夕か、昔と違って細かいイベントごとにSS書こうとする情熱すら失った私に比べれば期日に間に合わないくらいかわいいものです。
個人的には大河のお願い事がつぼです。
『わたしの前でいちゃつくの禁止。てゆうかお姉ちゃんももっと構いなさいよぅ』
がかわいくて仕方ないです。
タイガー萌(w
ちなみに、私は、個人的にはアーチャー×セイバー、凛×士郎の組み合わせが好きです。
ゲームの順番が原因なのもあるかもだけどね。
なにはともあれ、凛×士郎10P獲得!
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