今日という日は私、遠野秋葉にとって特別な日だ
確かに、毎年祝われていたけれど
そこに、あの人の姿が無ければ喜びも半減だ


だけど今年は違う
兄さんが帰ってきてくれたんだから・・・
だから今年は違う、今までで最高の今日という日を迎えられる

さあ兄さん、存分に祝ってください

可愛い可愛い妹の今日という日を・・・

ぷれぜんと・ふぉ〜・ゆ〜



ガッシャッァァァァァァァァァァン


『本当に今年はいつもと違うわね』

けたたましい破壊音をBGMに、秋葉は怒りを何とかこらえて冷静を装う。


向こうからは、

「カレー!カレーはどこ?!何でカレーが無いんですか!!?」

なんて、絶叫が聞こえてくる。

「カレーなんてパーティーに出すわけ無いじゃん」

「何ですって!!誕生日にはカレー!
カレーケーキ、カレースープ、カレージュースなどなど、カレー味のものをふんだんに用意するのが当然じゃないですか」

「そんなのあんただけだにゃ〜、このカレー女」

「なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?
ほとんど出番の無いあ〜ぱ〜の癖に!!」

「「コロス!!」」


ドンドン



バリン



ガシャァァァン



ザシュザシュ


ニュロンニュロン
(?



けたたましい、破壊音がまたも鳴り響く

『・・・・・・あなたたち、いい加減にしなさい・・・
私の記念すべき日に、何曝してくれやがるのかしら?』

『兄さんも兄さんよ、何でわざわざあんな人外たちを呼んだのかしら?』


本当なら今日という記念すべき日を、兄さんと二人で過ごしたかったのに・・・
そんな、腹立たしさも手伝って、二人に対する怒りのボルテージも徐々にMAXに近づいていく。


「いいかげんにしなさい!!」、咽喉まで出掛かったこの言葉よりも速く、兄さんが頭を抱えながら人外どもに説教をかましてくれていた。

「もう、アルクェイドも先輩も今日は仲良くしてくれって約束したじゃないですか」


ザシュザシュザシュザシュ(×34)


『って、いきなり血の雨ですか、兄さんてば過激。』

「兄さん、あの・・・何もいきなり・・・その・・・分割しなくも」

「なんだい、秋葉?」

ずれたメガネを戻す繊細な指先
春の陽光のような笑顔

「あの、その・・・」

もう!そんな表情されたら、秋葉は何もいえなくなるじゃないですか

頬が熱くなるのを感じる。何故か、モジモジとしている自分に苦笑する。

「なんだ、珍しいな、いつも毅然とした秋葉が。
なんだか昔の秋葉みたいな表情しちゃってさ」

顔いっぱいに優しい微笑を浮かべる兄さん。
顔立ちは、より男性的に顎は鋭角に引き締まり、声は少しだけ低くなったけど、昔の優しいお兄ちゃんの顔をした兄さん。

『やっぱり兄さんは素敵(ハート)』



「すっかり二人の世界を作ってらして」

琥珀が傍らにたたずむ翡翠に話しかける。

「・・・異様な光景です」

あは〜、と笑顔を浮かべながら

「愛する二人には、あんなもの目にも入らないんですよ〜」

「あんなものとは、志貴様に仲良く17分割された、シエルさんとアルクェイドさんの肉片ですか?」

翡翠の言うとおり、34の肉片や臓物と赤一色の世界をバックにいちゃつく二人の姿は、まさにシュールそのものだった。



「ね〜ね〜志貴〜。妹にプレゼント渡そうよ」

アルクェイドがまだ、回復しきらない下半身をずるずる引きずりながら二人の所へ来た。

「さすが真祖、すごい回復力ですね」

「っていうか、這いずった血の跡を掃除するのが大変です」

冷静なメイド姉妹

「ちょっとアルクェイドさん、私はあなたの妹になった覚えはありません!」


「姉さん、まだ、体中から血を流してることは気にもならないんですかね?」

「分割した志貴さんも気にしてないし、あの人たちには些細なことなんじゃないのかな」

「まあ、馬鹿ネコは非常識が常識みたいな存在ですから」

『『あんたもだよ!!』』

もう、全快して嬉しそうにカレーパン(持参)を頬張るシエルを冷ややかに見守った。



パン!パン!


「計算によると、そろそろ各自が用意したプレゼントを秋葉に渡すのがよいと思います」
と、シオンがクッラカー代わりにブラック・バレルを鳴らして周囲の注目を集めた。

ガラガラという音ともに、天井だったものが降ってきている。

「あは♪掃除が大変です」

破片が、琥珀が作った料理に降り注いでいる

ギリギリギリ・・・

「・・・ギブギブ」

琥珀が、シオンにチョークスリーパーを決めながらいつもどおりの笑顔で呟いた。

「姉さん、そのくらいにしておいた方が・・・」

「許し、てくださ、い・・・私も目・・・立ち、たかっ・・・」

ビクンビクンと泡を吹いているシオンを尻目に翡翠は溜息をついてた。



「じゃあ、一番手は私だよ」

ごそごそとプレゼントを取り出すアルクェイド

「確か誕生日プレゼントって、祝われる人が一番喜ぶものを贈るんでしょう?
妹は絶対に喜んでくれると思うんだ」

フフフフ、と嬉しそうに笑いながら秋葉に箱を渡すアルク。

その、無邪気な、純粋に好意の塊のような顔で差し出されたプレゼント。
なんだかんだ言って、純粋な好意から贈られる物を邪険にできるような冷たい秋葉ではない。

「どんなくだらないものでも、とりあえず喜んでさしあげるのが礼儀ですね」

「ブーブー、くだらなくないよー。絶対に喜んでくれるんだから!」

口調とは裏腹に、秋葉はいそいそと包みを開けた。


『天使のブラ』
『胸パット』
『バストアップ用の運動器具』


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「嬉しいでしょ?妹。
やっぱり本人が一番喜ぶものを用意しなきゃね」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴオゴゴゴゴゴゴゴゴゴッゴゴ・・・・・・・・・・・・・・

アルクェイドの純粋な善意が余計に怒りを助長する。

「あれ?嬉しさのあまり反転しちゃった?」

いつの間にやら髪が紅に染まっている。

「貴女の胸を『略奪』してやるぅぅぅぅぅぅuuuuuuuuuiiiiirrrrrrryyyyyyaaaaaaa」

秋葉の怒りの絶叫が屋敷中に響き渡っていた。


「しょうがないですね、あ〜ぱ〜吸血鬼は」
「困ったものですね」
「・・・まったくです」
「予想道理の結末です」

秋葉とアルクェイドの追い駆けっこを尻目に、各自が用意してきたプレゼント

シエル(『寄せて上げるブラ』
琥珀(『豊胸剤(琥珀特性)』
翡翠(『バストアップマッサージ券×10回』
シエル(『アトラス印の豊胸器具』

を、みな無言で投げ捨てた。



30分後

「ぜはぁーぜはぁー」

ホノルル24時間マラソン完走後ばりに、疲れて息も絶え絶えの秋葉と、まったく疲れていないアルクェイドが居間に帰ってきた。

「妹が絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に喜んでくれると思った、私のプレゼントを見栄はって拒否するから・・・」

『まだ言うか、このアーパー(怒)』

再度、鬼ごっこが始まるかと思いきや

「もっと良い物を上げることにするよ」

「え?」

「それは、志貴を一日何でも言うこと聞かせる券!!」

「え?」

アルクェイドの言葉に志貴は当然として、他の人間も目を丸くしていた。

「おいおい、俺の人権は・・・」

志貴が、言い終わる前につかつかとカレーパンマン・・・じゃなくてシエルが歩み寄ってきた。

「アルクェイド、貴女ちょっとね・・・何を考えているんです?」

「なによ〜、私の魔眼で志貴を一日、妹の奴隷にする気だったんだけど」


『何気にひどいことを・・・。
さあ、先輩!ガツンと言ってやって下さい!!』

期待に満ちた目でシエルを見守る志貴

「私と同じプレゼントは無いでしょう」

「あんたもかよ!!!!」

「ええ、正確には私は強制的に一日、秋葉さんの言うことに逆らえないって言う暗示をかける気だったんですが」

「待てやオイ!!」

「あは〜、私もこの素敵なお薬で、一日志貴さんの自由を奪って、秋葉様のお人形さんにしてプレゼントする気だったんですが」

「ショッキングピンクの薬って(冷汗)」

「・・・・・・・・・・・」

「・・・狂狂狂狂、僕は誰ここはどこ・・・
って、俺の目の前で指をクルクルまわすなぁぁぁ!!」

「秋葉には日ごろ世話になってます。
喜ぶものを贈るのは当然です」

「エーテライトを刺すなぁぁぁぁぁ!!!」






「大体みんな、何を考えてるんですか!!?」

全員を見回しながら、腹のそこから叫んだ

「え〜、だって妹が喜んだら志貴も嬉しいでしょう?」

無邪気に・・・・・・こいつは・・・

「志貴君ならどうせ、秋葉さんに絶対服従じゃないですか」

ニコって先輩、あんまりだ・・・・・・いくら多分に事実でも(血涙。

「貴方を奴隷です」

洗脳探偵、駄目だ、翡翠なりきっちゃってるよ

「秋葉が志貴に危害を加えることは無いのは確実です、安心してください」

シオン・・・君まで染まってしまって・・・(号泣。

「あは〜、駄目ですか?」

うわぁぁぁぁぁぁ!!!絶対に確信犯だ。
割烹着の悪魔め!!!!


さらにみんな声を合わせてこんなコト言いやがって・・・

「私たちの誕生日にも同じプレゼントをよろしくね(ハート)」

『俺の人権はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!?』




遠野の屋敷は、十時を過ぎると消灯となる。
それが、もう十一時を半分過ぎた今の時間なら、静謐な闇の世界が館を覆っているはずだ。
昼間の喧騒が嘘のように、静まり返った屋敷を志貴は足音を殺して歩いていた。

自分の部屋と反対側、正確には東館の二階に目的地はあった。


コンコン

ノックの音がやけに大きく響いた気がする。

「なんか、夜這いみたいだな」

自分の感想に自分で赤面する。
傍から見たら今の行動は、夜這いそのものじゃないかと気がついたからだ。

「琥珀?何の用、こんな時間に?」

「いや、俺だけどさ、秋葉、ちょっと良いかな?」

緊張で少し声が上ずった。

「兄さんですか?こんな時間に何のようです?」

とりあえず扉を開けて部屋に招き入れてくれた秋葉に従って部屋に入る。

秋葉の寝巻き姿って始めて見たな。
そんなことを考えて、秋葉に見とれてしまっていた。

秀麗な容姿に漆黒の流れるような髪
白い肌に天蓋つきのベット
まるで御伽噺に出てくるお姫様のようだ

「兄さん、こんな時間に何のようです?」

兄といえども、異性をこんな時間に部屋に招きいれたせいか、秋葉は少し緊張しているようだ。

「いや、あのさ秋葉」

秋葉の緊張が伝わったのか、それともはじめから緊張しているのか、咽喉がカラカラになって上手くしゃべれない。

何とは無しに視線を送った秋葉の胸元
・・・・・・慎ましやかに存在を主張する、胸の先っぽの突起。

秋葉のやつ・・・ノーブラだ。
いや、当然か、これから寝るところだったんだしな。

目をそらそうとするが、どうしても視線はそこから離せなかった。

「兄さん」

ドキッぃ!!

一瞬、視線を咎められたのかと思ったがどうやら違ったらしい。
秋葉は窓から空を眺めていた。

「せっかくだから外に出ませんか?」

サクサクっと、敷き詰められた落ち葉を踏みながら秋葉と二人連れ立って庭に出た。

さわさわと秋葉の黒髪を揺らす初秋の風が心地よい。

「兄さん、覚えていますか?」

子供のころの秋葉の顔で秋葉は笑っていた。
こうしていると一年前を思い出す。

「まだ、兄さんが屋敷に戻ってきたばかりのころです」

俺に微笑みかけている秋葉に一歩一歩ゆっくりと近づく。
一年位前も秋葉とこうして、庭で時を過ごしたことがあった。

「なんだか同じようなシュチュエーションですね」

同じ?
ぜんぜん違うよ

「同じじゃないよ、秋葉」

「え?」

あの時の俺は、舞い散る紅葉が秋葉の髪を紅く染め上げたように錯覚して、七夜が目覚めたんだから。

こっちをじっと見つめる秋葉の髪を一房掬う。

俺の胸に一年前のように衝動が起こる。
あの時感じたのは殺人衝動
今、感じているのは・・・・・・

「秋葉」、言葉と同時にやや強引に秋葉を胸に抱いた。

ドクンドクンドクン

俺の鼓動が秋葉に重なる
秋葉の鼓動が俺に重なる

二人の鼓動が二つに重なり、やがて熔け落ちていく錯覚

「秋葉、誕生日おめでとう」

「ありがとう、兄さん」

「来年も再来年もこうして誕生日を祝えるといいな」

「私、勝手に兄さんからプレゼントをもらいますね」

俺の首にその細い手を回して、秋葉は俺の唇を優しく『略奪』した。

「来年も再来年もそのまた次の年も・・・ずーっと兄さんと一緒に居たい」

懐から、小箱を取り出して秋葉に渡す。

「こ、これってもしかして…」

もどかしげに包みを開ける秋葉に対して強い衝動が頭を過ぎる・

『この子を幸せにしたい』と・・・



ーーーーーーーーーーーーーアア、ナンダ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーミンナガ言ウトオリジャナイカ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーータッタ一日ダケジャナク、
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー遠野志貴ノ人生ハ
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー秋葉ノタメニアルラシイ


そんなことを考えながら、何気なく空を見上げた。

ーーーーーーーーーーーーー今夜モヤッパリ月ガ綺麗ダ


魔術師の戯言


ダァァァァァ!失敗だ
底抜けに明るいギャグを書こうと思ったのに結局なんかギャグに徹し切れてない。
中途半端な話になっちゃってるよ。
やっぱ私、ギャグ向いてないんだな(溜息

感想求む!!
感想求む!!!

感想よろしく(しつこい)