寄せては返す潮騒の音
心地好く一定のリズムを刻む自然の音楽は、まるで揺り篭のようだ。
今はただ、この大自然の息吹に身を任せて、現実から離れ、穏やかな時間を過ごしたい。
寄せては返す潮騒の音
他に何も聴こえない、まるで世界にただ一人だけ取り残されたかのように。
そう、誰が何と言おうと絶対に、絶対に、絶対に何も聴こえない。
聴こえないッたら聴こえない。
ドッゴーーーーーン
・・・・・・聴こえないよ、未来の自分の断末魔や、尋常じゃない爆発音なんて全然、俺には聴こえないよ。
その4〜坊主が水着に着替えたら
耳を塞ぎ目を閉じる衛宮士郎、完全に自分の世界に入り込んでいる。
その現実逃避っぷりは、さすが己の体内に『全て遠き理想郷』を持つ男だけはある。
「あ゛ー!!止めでー!!!宝石剣は、それだけは勘弁・・・アベシッ!!」
自分の世界で夢を見る士郎には、未来の自分の断末魔や、尋常じゃない爆発音、巻き込まれた人々の阿鼻叫喚は全然聴こえない。
「・・・おいおい、お嬢ちゃんとうとう宝石剣まで使い始めたぞ」
・・・・・・・・・・
「うむ、愚民どもが巻き込まれておるな」
・・・・・・・・・・
束の間の夢を見た
それは・・・・・・
『正義の味方』になりたかった、と呟く切継と眺めた月夜の記憶
衛宮士郎は何と言った?
あの時確かに誓った言葉
・・・・・・最近、ハーレムだ、巨乳だと狂ってて忘れてたけど、衛宮士郎は『正義の味方』になる、そう誓ったのではなかったか。
ならば、目を開かなくては、耳を澄まさなければ・・・・・・
巻き込まれる、無関係な人を救わなければ。
「それでこそ、お前さんだぜ」
「雑種よ、貴様なら、我に認めさせた、貴様ならばあれを止められる」
真直ぐな瞳で俺を見つめる戦友たち。
かつては闘ったこともあった、殺されたこともあった、けれど今は何て頼もしい奴らだ。
「よし!行くぜ、ランサー、ギルガメッシュ!!」
「よし、行って来い!」
「がんばってくるがよい!!」
・・・・・・・・・え?
「いや、行くぞ、二人とも」
「死ぬなよ」
「骨くらいは拾ってやるぞ」
・・・・・・ワカラナイ、何を言ってるのかさっぱりワカラナイ
「・・・来てくれないのか?」
「「なんでさ」」
俺の物真似しながら答える二人。
「安心しろ、貴様に何か有ったら、セイバーは我が幸せにしてやる」
「嬢ちゃんは俺に任せろ」
「むしろ、何か有れ!そうすればセイバーは我の物に・・・」
遠くで魔力の奔流を感じる。
冷や汗タラリなアーチャー
「ちょ・・・セイバーお前、いつの間に魔力回復したんだ」
「イリヤやリンに供給してもらってますから」
ドッゴーン
「あのツインバスターライフル顔負けの破壊力は、カリバーンとエクスカリバーの二刀流だな」
「早く行かなければ手遅れになるのではないか?」
「お、次はは天馬だ。そうか、ベルレフォーンか」
・・・あそこに、俺一人で行ったら絶対に死ぬ
「命あっての物だねだよ」
切継もそう薦めてくれていることですし、まぁギャグだから死にはしないだろうし・・・
ココは一つ、海の家の焼きそばでも食べに行きますか
立ち並ぶ海の家の中で一際異彩を放つ店がある
海の家『泰山』
・・・なんだか、凄く覗いてはいけない気がする店が目に入った
しかも、暑苦しい髪形をしたマッチョな男がマーボウ豆腐を掻き込んでいる姿が目に浮かぶ
・・・・・・気がつかなかった、見なかった、聞かなかった
うん、それで良い
そんな俺の元に一成が血相を変えて走ってきた。
「衛宮、大変だ、さっきから爆発が起こっているのは柳洞寺の皆が居る所のようなのだ」
「何だって?」
「頼む、一緒に来てもらえぬだろうか」
チラッと横の英雄を見る
笑顔で手を振ってやがる
「・・・・・・わかった、一成行くぞ」
がんばれよー、とか、セイバーは任せろー、とかの戦友の声援だか呪詛だかわからない言葉を背に一成に頷く。
『あいつら覚えてろよ、絶対に復讐してやるから
・・・・・・ただし、生きてたらの話だが』
「すまない、衛宮。礼は今度の放課後、生徒会室でじっくり返す」
・・・・・・何故か一成の言葉に寒気を感じた。夏真っ盛りなのに・・・
「着いたぞ、衛宮」
走ってきたため、荒い息をつきながら一成と辺りを見回す。
「居たぞ、みんな無事のようだ」
一成の指差した方向を見る。
目の錯覚だろうか
いや、僧に違いない、じゃなくて、そうに違いない
あれが錯覚じゃないなんて、ありえない
「よかった、皆無事のようだ」
手を振る一成に手を振り返し、甲羅干しをしている。
「・・・・・・一成、あれ誰だ?」
「何を言っている衛宮、何度も会っている修行僧の山田さんではないか」
「僧の皆さん、随分痩せた気がするんだが」
「ああ、皆夏バテしたみたいなんだ」
「そうか、そうか、なるほどなー」
って、そんなわけあるか!!
「骨じゃん!
っていうか、全員竜牙兵じゃん!!」
「何を言ってるんだ衛宮は?」
コクコクと頷く、山田さん(仮)
サンオイルを塗って甲羅干し・・・って、焼くところ残って無いじゃん
目を転じればビーチバレーをしている竜牙兵が、回転レシーブした衝撃でバラバラに崩れている。
「一成、あれあれ」
「ああ、大丈夫ですか斉藤さん」
何事も無かったかのように組み立てなおす一成。
「あれ、上手くいかないな。衛宮、海まで来てすまんが直してくれないか」
「ああわかった、そっちの左手の小指の第一関節とってくれないか・・・って、おかしいだろこれ!?」
士郎の全力のツッコミでバラバラに崩れる斉藤さん(仮)
「いや、みんな夏バテ気味でな、お恥ずかしい」
「・・・夏バテで骨になるわけが無いだろう」
「いや、本当に皆骨みたいに痩せてしまってな、お恥ずかしい」
恥ずかしそうに笑う一成と、恐らく笑っているのか、カラカラと音を立てて首を上下に振る斉藤さん(仮)
「だから、骨そのものじゃないか!!」
疲れ果てた士郎のツッコミは、潮騒の音に掻き消され誰の耳にも入らなかった
「アンリ・ユマは止めてくれ、食われる食われてるよ桜さん!!」
アーチャーの断末魔はまだ続いていた。
戯言
お久しぶりの更新です、前の更新が4月の12日でしたから、丁度2ヶ月ぶりですね
と言う訳で、今回は士郎君が久々にまともでした(そうか?
しかし、いつまでたってもキャスターが出てこないですねぇ
次回、次回は絶対にキャスターを書くぞ!
できれば、感想などよろしくお願いします
ついでに、出て欲しい人とか居れば書いてくださいな
だからって出てくるとは限りませんが(ヲ