俺、城島晶は、男っぽい……けど、女の子です。

たぶん、生まれてくるときに、性別と……生まれる家を間違えたみたいで、いろいろあって、今は高町さんちに寄生している状態です。

だから、たぶん……俺……あのひとのことが、好きです。




城島晶純愛(?)ストーリー

告白





「いい天気だねー」

「……そうだな」

10月の昼下がり。暑くもなく寒くもないその陽気につられてか、ご近所中の猫が集まっているかのような賑わいだった。縁側に座っているフィアッセは、猫に完全包囲されている。抵抗はしていないが、出るに出られない様子だ。

座布団やらフィアッセの膝やらで寝息を立てている猫たちを見ながら、恭也は趣味の盆栽を剪定する。

愛しのひとと、盆栽と過ごす休日。あぁ、充実している。

そんな昼下がりの高町家に、寿司屋のバイクが横付けされた。別に、出前を頼んだわけではない。あそこの倅と恭也が仲がいいので。

「高町、いるかー?」

寿司屋の衣装そのままに、赤星勇吾は入ってきた。

「着替えてからにしろ、赤星」

「いや、それが今回のテーマらしいからな。それはそうと、少しいいか?」

「テーマって……何だ?」

それは聞かない約束です。



「晶の様子が、おかしい……?」

と、数少ない(つーか、ほとんど唯一の)男友達である赤星クンから聞いた恭也は、表情を変えずに悩んだ。

「……そうか?」

「そうだ」

むぅ。そうだったか?

盆栽を手入れしながら、昨日の、晶の様子を思い出してみる。

早起きして、朝食の準備をしつつ、レンとケンカ。

がっこうに行く時は、レンを腰紐につないだスケボーに乗っけて疾走。到着後、ケンカ。

昼は、何だかんだ云いながらレンと一緒に昼食。食べ終わったら腹ごなしのケンカ。

帰宅(と云っても、高町家だが)後も、夜ごはんの献立をめぐって、ケンカ。

ほぼ、負けるのだが。

「別段、おかしいことはないと思うが……?」

「そうか?」

「晶がそんな素振りを?」

「いや、俺も美由紀ちゃんから聞いただけなんだけど……。何でも最近、夜間訓練が終わるくらいまで起きて、お前たちが帰ってくるのを待っているとか」

「……そういえば」

「その時、少し熱があるような、潤んだ瞳になっているとか」

「あぁ、眠いのをこらえるなら、起きていなくていいとは云ったのだが……」

「朝も朝で、お前たちより早く起きているそうじゃないか。やっぱり、潤んだ瞳で『いってらっしゃい』って」

「早起きが辛いんだろうな」

いい枝振りだった。

「高町」

「何だ」

「云うまでもないとは思うが、晶は女の子だからな」

「うむ、判っている」

「泣かせるなよ」

「判っているというに。まぁ、座れ」

縁側の座布団を指差す。猫をかき分けて赤星、座った。

恭也は、持っていた剪定用のはさみを置いて。

「それで、お前の方はどうなんだ?」

「俺?」

「美由紀と、どうなのかと聞いている」

赤くなる、赤星。

「い、いや、美由紀ちゃんとは……」

「お前はいい男だ……そのことは、長いつきあいだ、判っている」

「う、うむ……」

「台詞を返すが……美由紀を、泣かせるなよ?」

「も、もちろんだとも!」

真っ赤なままで応える赤星。本当に、いい男だ。

しかし……晶が、か。



「晶ですか!?」

ケンカ友達のレンは、過剰反応を示した。

「……何か知っているわけだな」

「いえいえいえいえいえいえ滅相もない。うちがあないおさるのことなんぞ、気に留めるはずもないやないですか」

「そうか」

恭也、素直に引き下がる。が、その裾をレンはつまんでいた。

「おししょ、おししょ。いけずはあきまへんで」

「……意地悪をしたつもりはないが」

「あぁん、ほんまにつれないお方。あない云い方したら、きちんと問い詰めるんが男の甲斐性やないですか〜」

けたけた笑う。

「レン、どうしても喋らないなら……身体に聞いてやるぞーがばーって。したらうちはあ〜れ〜お師匠さまご無体な〜くるくる〜って……」

「喋る意思がないなら無理には聞かない。晶に直接聞くとしよう」

「あきまへん!」

怒られましたよ?

「もぅ、仕方ないですなぁ……。おししょ、うちが喋ったとは云わんでくださいよ?」

「うむ、レンには聞かなかったことにしよう」

「びみょーにニュアンスが違いますけど、まぁええですわ。何とびっくり晶は!」

「……晶は?」

「おししょに横恋慕しくさっとりますのや!」

「うむ、それは判っている」

「……はい?」

レン、耳に手を当てて。

「もーしわけないですがおししょ、うちの耳が遠くなったかもしれまへん。今、何と仰いました?」

「晶が俺のことを好きだというのは判っている、と」

「うりゃ」

チャイナ服の下から取り出した鎖鎌を、恭也の頭めがけて、振り下ろした。

よけなかったらどうするんだ、こいつは?

「何をするか、レン……?」

「おししょーっ!判っておったなら、何できっぱりはっきり云わんとですか!?」

「いや、しかしだな……」

「しかしも案山子もお菓子もあらへん!とっとと晶のところに行って『お前みたいな男女お断りやへへーん』って、云ってきたりなさい!すっぱり斬り捨てるんがあいつのためや!」

一気にまくし立てて、そして赤くなる。

「そ、そんで……うちと……」

「それが本音か……」

「え、えーやないですかっ!うちやったら晶とは違って、将来性ばっちり!アレはもう育たれへんけど、うちはこれからびしばしどんどんおーきく……」

ならない……つーか、なれないと思う。

「おーきく……」

自分でも、そう思っているらしい。レンの声は次第に小さくなる。

「なれたら……えーなぁ……」

床に座り込んで、鎖鎌の先でのの字を書き始めた。傷がつくのは感心しないので、庭に移動させておく。

「さて……」

晶は……出かけてはいなかったと思う。

美由紀のお部屋に行ってみると、案の定中から声。

『こ、これが……女の子の……?』

困っているような晶の声だ。応える美由紀の声。

『そぉだよ。あんまり見ないでね?わたしの、使い古しだから……綺麗じゃないし』

『そ、そんなコトないって……少し色づいてるけど、ちゃんと綺麗……』

『ふふっ、ありがとう……』

……ナニをしているというのだ、妹よ。それも、こんな昼間から。

『で、でも……ホントに、俺にもできるのかな……?』

『晶も女の子なんだから、できるよ。ほら、指いれてみて……?』

『う、うん……』

あふれそうになる妄想と鼻血をこらえつつ、恭也は、赤星を血祭りに上げるのを決定した。美由紀とつきあうのはともかく、すでに使い古しとは何事か。そーいうのは兄(正確には義兄だが)の許可を取ってから……ぶつぶつ。

ともあれ。恭也は、ドアをノックする。

「美由紀、入るぞ」

『きょ、恭ちゃん!?やだ、ちょっと待って!』

『師匠!?ぅ、うわぁあぁっ!?』

ばったんたんと、中で騒いでいる音。恭也はかまわずドアを開けた。

青少年の名誉のために云っておけば、決して、見たかったわけではない。ただ、時と場合と相手を選ぶべきだと説教するつもりで……云々かんぬん。

しかし、室内でくりひろげられていたのは、恭也の妄想した女同士のイケナイ空間ではなかった。

いや、ある意味もっと非道いものだったが。

「……ぶるま?」

女子体操服に身を包んだ美由紀の、お尻の部分に……なぜか、晶が、指を入れていた。

「きょ、きょうちゃん……」

「ししょー……」

「……何事なんだ?」

一気に、気合が殺がれた。恭也は半ば以上呆れながら尋ねる。

「こ、これは……アレなの」

「……アレとは?」

晶が指を抜くと、美由紀がそこに、改めて自分で指を入れる。

そして、くいっくいっと引っ張って、お尻のたゆみを直す。

「……ね?」

「……意味が判らん」

「つ、通じないの!?勇吾さんをもノックアウトしたこの『くいっくいっ』が!?」

「さ、さすがは師匠……!」

……よく判らないが、赤星はコレでノックアウトされたらしい。もう、あの男のことはどーでもよくなってきた。

「……で?」

改めて聞いてみる。

「あ、あのね……晶が……」

美由紀、体操服の裾を下げてぶるまを隠そうとしつつ。

「晶が……も、『萌え』について、知りたいって云うから……」

「……もえ?」

「萌えです」

真面目な顔で、晶うなずく。

「……萌えとは、何だ?」

「説明するのは難しいんですけど……たとえば師匠、想像してみてください」

「む」

「フィリス先生が、水色のスモックと黄色いスカートで『おにいちゃん、あそぼー♪』とかやったら、どう思います……って、師匠!それです!その鼻血が萌えなんです!」

「こ、これが……萌え……!」

「……恭ちゃん……外道……」

あのドクター8歳児が、禁断の幼稚園児こすぷれ……!恭也も男の子である。だが鼻血で済んだだけ、まだ理性は残っているらしい。

「というわけで、俺も萌えについて、美由紀ちゃんの協力を仰いでいるところなんですけど……」

「……晶」

「はい?」

鼻血を拭いて、恭也は、晶をしっかりした眼差しで見据える。

「やめておけ。お前がこんな格好をしても、誰も喜ばん」

ががーんっ!

晶ちゃん、かなりショックを受けた表情になる。

「そ、そーですか……!?」

「フィリスちゃん……もとい、フィリス先生がどんな格好をすれば萌えるか、ノリで見抜いたお前なら判るはずだ。那美さんが、お仕事バリバリできるようなキャリアウーマン風スーツに身を包んで萌えるか!?月村に留袖が似あうと思うか!?かーさんに」

『オレの桃子まで穢すつもりなら、斬るぞ』

……どっかから(たぶん地獄だろう。天国には逝けそうもない奴だった)亡き父の声が聞こえて、恭也は言葉を切る。

「という具合に、それぞれの個性にあわせた服装をしてこそ、萌えなんだ!」

「そ、そーですね、師匠!」

「恭ちゃん……最低……」

まだ理性が残っているらしい。つーか、着替えろ。

「というわけで、晶。お前はぶるまじゃいかん。むしろ半ズボンにしなさい。そして俺のことを『あにぃ』と……」

「あぁ、声が聞こえる……鬼畜に成り果てた兄を斬れと、父が云っています……」

どこから調達したのかお巫女さん装束に身を包んだ美由紀が、真顔で龍燐を抜いている。服装が服装なだけに、微妙にはまっていて、ある意味怖い。

「わ、判った美由紀、兄が悪かったと認めよう。剣を置け」

「ホントに……?」

めがねの奥の瞳はいぶかしそうに兄を見ている。信じなさいと諭されて、ようやく妹、剣を納めた。

「……やっぱり、俺……女の子の格好なんて、似あいませんよね……」

そして、改めて呟く晶。

「……そうだな」

晶の頭に手を置いて、恭也。

「だがな、晶。お前は、それでいい。多少……かなり、男っぽくても、それがお前の個性なんだから。無理に変わる必要はないだろう?」

「そーですよね……!」

晶、嬉しそうに、恭也を見上げる。そして。

「じゃぁ、師匠の制服、貸してください!」

「これ以上わたしの部屋汚したら、本気で斬るからね、恭ちゃん!」

また鼻血を吹きそうになった恭也くんだった。まだまだ若い。

恭也のお部屋に移動して、晶の好きにさせる。廊下で待っている、ふたり。

「晶と……いつもこんなことをしてるのか?」

「いつもではないけどね……」

まだお巫女さんのままで、美由紀、応えて。

「ほら、晶をうちに連れてきたのって、わたしだから……。困ったりしたときは、よくわたしのところに来るんだ」

「レンとは違う意味での親友……だな」

「うん」

誇らしげに笑う、美由紀。

「着替えました!」

そして、なおさらに誇らしげな、晶。恭也の学生服に身を包んでご満悦だ。

「恭ちゃん……廊下なら汚していいってモンじゃないんだよ?」

「どぉ、美由紀ちゃん?俺、似あってる?」

くるーりと一回転。

何と云うか……「兄の制服を、おねだりして着せてもらっている、弟」?みたいな具合に仕上がっていた。

つーか、ほとんどそのままだし。

「に、似あうよ……ねぇ、恭ちゃん?」

「そ、そうだな……」

ここまではまるというのも想像していなかった。恭也、しっとりうなずく。

「似あうかぁ!……いちころ?」

「いちころ、いちころ。ほら、恭ちゃんこんなに大喜び」

「喜ばせていただいております……」

「……そっか……」

はしゃいでいた表情から一変、真剣な眼差しになる、晶。

「……晶?」

「……聞いて、ほしいんだ」

その、あの……ともじもじしながら。

兄妹、小声で。

「わ、わたし、席外すから……!」

「待て、行くな……!この晶とふたりっきりになどされたら、なけなしの理性が……!」

「だ、大丈夫!晶だってそれを望んでるんだから!」

そんな争いが見えていない様子の晶くん、訥々と。

「俺……ここんちに拾われて、大事なことを、教えてもらいました。両親が仲悪くて、荒れてた俺に、まっすぐ生きることを教えてくれて……俺、本当に感謝しています」

「う、ううん、気にしないでいいんだよ〜、そんなコト!当たり前のことをしただけなんだから!ねぇ恭ちゃん!」

「う、うむ、ヒトとして当然のことをしたまでで……」

「でも、感謝だけじゃないんです!俺、本当は……あの時からずっと、あなたのことが好きで……!」

一度、耳まで真っ赤に染まって。

「……好きで……」

視線を、落とす。

「あ、晶……?」

「年下だけど……こんな俺だけど!本当に、好きなんです!」

「ま、待て晶、心の準備が……!?」

「だから……俺のことも、好きだって云ってください!美由紀ちゃん!」



……ほへ?



晶は、美由紀に、抱きついた。

「わたしーっ!?」

「ずっと、ずっと……!美由紀ちゃんに半殺しにされてここんちに拉致された時から、ずっと好きだったんです!」

「ええええーっ!?」

「どうか、どうか、俺のこと……!」

「ま、待ってよ晶!わたしたちは女同士で……それに!わたしには勇吾さんが!」

「勇兄なら、殴りあってでも倒します!俺の、俺の恋人になってください!みゆきちゃあぁんっ!」

「いーやーっ!」

ばたばたばたばたーっ!

……行っちゃったー。

「……はっ!?」

正気に戻った恭也は慌てて庭に走る。リビングで、なぜかなのはが下着姿になって倒れていた。

まぁ、そんなコトはどーでもいいと思われるようなことが、庭では起こっていて。

「石破……らぁぶらぶてんきょー剣!」

怪しい業を使って壁を破る、お巫女さん姿のままの美由紀と、寿司屋の衣装のままの赤星。龍燐が、血に泣いていた。

「美由紀ちゃん、乗って!」

「はいぃっ!」

「みゆきちゃあぁんっ!」

出前用のスクーターにタンデムするふたり。それを追う、ブレザー姿の晶。そして。

「待って、待ってェな、晶く〜ん!」

恋する乙女色に瞳を染めたレンが、ハンカチを噛みながら、なのはの服に身を包んで追いかけていった。

「かーさんに、何て説明したらいいんだらう……?」

疲れ果てた恭也は、剪定用のはさみを取り直した。

忘れることにしたらしい。

「んー……んっ」

猫まみれになって寝ていたフィアッセが、ようやく起きる。

「あー……いい天気だね〜」

「そうだな……」

10月の昼下がり。世は全てこともなし。



無責任に終わる。



付記

はい、晶ちゃん好き好きなF・フースキーです。

晶「ホントに……俺のこと、好きなんですか……?」

もちろんだとも。その愛の証として、前のサイトでは13回シリーズで「人妻あきらさん」を書いて……

晶「いぃやぁーっ!あの話は思い出させないでーっ!」

やはりエロ抜きだとギャグに走るのが、僕の欠点だな。まぁ、正直お前さんのエロはやり尽くした感もあるが。

晶「ティオレさんが、ティオレさんが……いやぁーっ!俺もぉお嫁にいけないーっ!」

そんなわけで、久しぶりにエロ抜きの話を書いたので、全編ギャグに納まっています。これを読んで笑ったあとは、晶に票を入れましょう。ちなみに僕はフィアッセが大好きです。

晶「何物なんだお前はーっ!?」


魔術師の戯言

はい、F・フースキー閣下の不条理ギャグ系、ほんとにこれ晶応援してるんですか!?SSでございます。
いや、晶って実はいじめられっこ?
あ、原作でも結構いじめられっこか・・・。
女装(笑)させられたり、馬車(スケボー)の馬になったり、レンにどつかれたり・・・・・・
しかし、それ故に美味しいというか愛されてるというか・・・・・・
謂わば弄られてこそ光る芸人ですね
例えて言うなら・・・・・・出川?
流石に可愛そうか?
しかし、ティオレさんと晶でエロSS?
・・・・・・・・・・・・ボクちゃんお子様だから想像できないや。

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