はじめに
時代は瞳3年生(つまりとらハ1)で、真一郎とはまだ出会ってません
耕介は???を選んでますが、瞳とも関係を持った事があります
翠屋の勝手な想像ですので、原作主義の方は戻るボタンへGO
昼休みも半ばまで過ぎた頃
時間を持て余していた瞳は、一人廊下を歩いていた
心に一人の男性を思い浮かべながら・・・・・・
『別れ・後悔、そして出会い』
耕介に別れを告げて早1年
瞳は、自分の中に耕介に対する恋心が未だに燻っている事を、しっかりと感じていた
それもその筈、耕介の許を離れた理由は別に嫌いになったからじゃなく、天秤にかけられる事を恐れただけなのだから
瞳とて離れたかった訳ではない
だけど1+1は3じゃない
どちらかが離れなければいけないのは分かりきった事
瞳の性格からして、戦う前に逃げるという行動は考えられなかったが
過去のある出来事が、瞳を恋愛事に対して臆病にさせていた
だから1年前、さざなみ寮で―――
『―――には幸せになって欲しい。耕ちゃんならそれが出来るから・・・・・・だから・・・・・・さよなら』
自分の言いたい事だけを伝え、逃げるようにその場を去った
あれ以来さざなみ寮には行ってない
離れる決心をつけた時、後悔しないと決めた筈なのに・・・・・・今の自分は・・・・・・
「はぁ〜〜〜っ」
思わず溜め息が出る
未だに想いを引き摺っている自分が酷く滑稽に見えた
気分転換を兼ねて窓の外へ視線を向けるが
自然とさざなみ寮の方を向いてしまう事に、少しだけ目を潤ませた
「だめだなぁ。全然吹っ切れてないじゃない。自分で決めた筈なのに・・・・・・」
ポツリと一言呟き、歩き出す
それは瞳の心の叫びだっただろう
だが、それは昼休みの喧騒にかき消され、誰かの耳に届く事は無かった
◇ ◇ ◇
暫く歩いていると、ふと視界の隅に映る物があった
重厚な雰囲気を醸し出し、どっしりと構える『それ』に引き寄せられるように、部屋の中に入った
規則正しい白と黒の羅列
黒い光沢が自分は此処にいる、と主張しているようだった
瞳はそれに近付き、懐かしそうにそっと触れた
「そういえば、最近は護身道に力を入れてたから弾いてなかったっけ」
鍵盤に置いた指に、少しだけ力を入れる
ポン♪
室内に響く澄んだ音が、心を癒してくれる
そんな気がして椅子に座り込み、慣れた手つきで想うがままに奏で始める
久し振りに弾いた為か、時間も忘れ、夢中になっていた
キーンコーンカーンコーン♪
昼休みの終わりを告げる予鈴が聞こえ、漸く瞳は我に返った
「っと、いけないいけない。夢中になっちゃったわ」
ガタッと椅子が鳴るほど勢い良く立ち上がると、急いで音楽室を出る
が、出口の所で振り返り、ピアノに語りかけるように呟いた
「また・・・・・・弾きに来るからね」
瞳の言葉にピアノが返事を返すように太陽の光を反射した
瞳は微笑を浮かべると、教室に向けて走り出す
教室に向けて走る瞳の表情には、音楽室に入る前の陰りが無くなっていた
それは音楽の持つ不思議な力のお蔭なのかもしれない
聞いている者の心を癒す
癒しの旋律と呼ばれる力のお蔭で・・・・・・
◇ ◇ ◇
数日後
あの時から、私は昼休みに用事が無い時は、ピアノを弾く事が日課となっていた
何時もの様にピアノを弾いていると、音楽室の入り口の方から視線を感じた
不審に思い、振り返ってみても誰も居ない・・・・・・いや、音楽室の入り口が少し空いている
どうやら誰か覗き見(盗み聞き?)しているようだった
覗き見は感心する事ではないけど、事を荒立てるほどでもない
そう考えた私は、鍵盤に視線を戻し、最近のお気に入りである『ちいさなぼくのうた』を弾きながら
頃合を見計らって覗き見をしている人物に声をかけた
「そんな所で聞いてないで入ってきたら?」
ドアの向こうにいる人物が、ビクッとなるのが判った
今頃外でおろおろしているだろうと容易に想像でき、自然と笑みが零れる
暫くするとカラカラとドアが開く音と共に、可愛らしい女の子の声が聞こえてきた
「ししし、失礼します〜」
やけに恐縮、緊張している声が印象的だった
切りの良い所まで弾き、後ろに振り返る
大き目の赤いリボンを着けた一つ下の後輩が申し訳なさそうに立っていた
中学生、いや、小学生でも通じるかも知れないほど小柄で、護ってあげたいと思わせる雰囲気を纏っていた
私と正反対なタイプかな?
そんな事を思い、後輩の緊張を解く為に微笑みかけた
「始めまして。私は千堂瞳。貴女は?」
「ののの、野々村小鳥です。始めまして」
緊張した面持ちでペコリとお辞儀する野々村さんに
名は体を現すって本当ね
と、かなり失礼な事を思いながらクスッと笑う
「そんなに緊張しなくても良いのよ? 別に怒っている訳でもないしね」
その言葉に安堵の表情を浮かべる野々村さん
そんなに怒ったような顔してたかしら?
自分の頬に手を添えて考え込んでしまう
「あの・・・・・・千堂先輩?」
「ん? なぁに?」
「ピアノ、お上手なんですね」
「まぁ小さい頃からやってるからね。私の唯一女の子らしい特技かな?」
男勝りな性格だから、と苦笑いを浮かべながらそう言うと、野々村さんは音が出るほど首を横に振った
「そんな事ないですよ。憧れの千堂先輩が女性らしくないなんて・・・・・・」
熱弁する野々村さんをキョトンとした顔で見詰めていると
真っ赤になって恥ずかしそうに俯いた
「ふふふ、私に憧れてくれるなんて光栄だわ。でもなんで私なの?」
「え? だって千堂先輩って成績優秀・スポーツ万能・容姿端麗と、3拍子揃ってるじゃないですか。
男の子なら放っておかないだろうし、女の子だって憧れるのは当然だと思いますけど・・・・・・」
面と向かって此処まで褒められるとかなり恥ずかしい
照れた顔を隠すように鍵盤へと向き直る
「ありがとう。じゃあ、お礼っていうのも変だけど一曲弾いてあげるわね。何かリクエストはある?」
「はぅ?! 良いんですか?」
「勿論よ♪」
「えっと、じゃあさっき弾いてた『ちいさなぼくのうた』をお願いできますか? 私の好きな曲ですから」
「そうなの? 私もあの曲好きよ。・・・・・・そうだ?! 野々村さん歌わない?」
「ええ〜〜〜〜っ?!」
思いもよらない提案に驚いて困ってる
こういう時は無理矢理始めるのが吉ね
「うん、それが良い。じゃいくわよ〜♪」
「はぅはぅはぅ」
♪〜♪〜♪♪〜♪♪♪♪〜♪
有無を言わさずピアノを弾き始める
野々村さんは手をバタバタさせ、何とか止めようと私に声を掛け様としてるけど・・・・・・無視ね♪
演奏を止めない私を見て諦めたのか、がっくりと肩を落として何か呟いてる
まあ「こんな筈じゃなかったのに〜」って所かしら?
やがて、あまり大きいとはいえない声で歌いだした
「♪♪♪〜♪♪♪♪〜♪」
歌が進むにつれて、野々村さんの声も段々と大きくなってくる
うん、良い声してる
引っ込み思案な性格みたいだけど、自信を持てばもっと素敵な女の子になるのにな
そんな事を考えていると、曲の終わりが近付いてきた
♪〜♪♪♪〜♪♪〜♪〜
最後の音を鳴らし終わると振り返りながら拍手する
「綺麗な声をしてるわね野々村さん」
「はやや、そんな事ないですよ。それより千堂先輩の演奏も上手でした」
「そう? ありがとう」
何かが満たされた気分になる
一言で言うなら充実感
音楽が、先日まで乾いていた心を潤してくれた
そのお手伝いをしてくれた野々村さんに、沢山の意味を込めてもう一度礼を述べる
「ありがとう野々村さん」
私の意図が解らず、首を傾げている野々村さんを微笑みながら眺めていると
キーンコーンカーンコーン♪
昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴り響いた
「昼休みが終わっちゃったわね。・・・・・・ねぇ野々村さん、もし良かったらまた私の演奏に付き合ってね」
「はい。私でよければいくらでも」
野々村さんの返事に満足して、その場を離れた
耕ちゃんとの別れが、新たな出会いを作ってくれた
私はこれからも出会いと別れを繰り返しながら生きていくだろう
だけど後悔はしない
たとえ不本意な別れだったとしても
それは新たな出会いのきっかけなのかも知れないのだから・・・・・・
あとがき
瞳様応援SS〜♪ 以上
ギン「は? 今回のあとがきってこれだけッスか?」
そう。瞳様ガンバレ〜♪
ギン「まぁいいッスけど・・・・・・」
あ、これを読んだ人は瞳様に1票入れてくださいね〜
ギン「無茶苦茶言うッスね」
ではでは〜
魔術師の戯言
はい、瞳様親衛隊長からいよいよ下賜されましたこのSS
今回も瞳様の魅力を引き出すべく、最大限に美しい瞳様が所狭しと散りばめられてます
前回、投票所を盛り上げまくった瞳様が大苦戦
・・・というか、今回は前回のベスト5が漏れなく苦戦しております
どうした!!
みんなの愛はその程度か!?
真面目な感想を・・・
1の瞳ですから大人っぽいですね。
物憂げな態度が似合うキャラは1ではこの人を置いて他にはちょっと居ないですね
大人の恋愛というか、失恋の痛みとそれを超えてセカンド・ラブを掴む所なんて、本当に大人の恋愛ですし、実際初恋が成就して幸せになる人のほうが圧倒的に少ないはずです
失恋の痛みを超えて成長する瞳、ある意味最も現実的な恋のお話です
それでは、これを見て瞳嬢に投票する人が増える事を祈ります
拍手で、感想出す人は『翠屋様』と銘記してください