はじめに。
これは、私が始めて書いたSSです。(2001年3月くらいかな?)
あえて、誤字以外まったくいじらないで掲載してるんで、改行?知らないなぁ。
と、すばらしく読みづらい一品なんで、覚悟の上でお願いします
護るべき貴方へ
2月14日
「恭也〜!これあげる。」
と、忍から差し出されたのは、バレンタインのチョコレートだった。ここ1週間、忍がずっと翠屋に通っていたのはこれのためだったのか…。そう思うと恭也は、嬉しくて思わず忍を抱きしめたい衝動に駆られた、が、なんとかそれを我慢した。なぜなら今、恭也は高町家のリビングに居るわけで、当然回りにはフィアッセや美由紀、晶、レンなどの家族がいるからだ。もちろん忍との関係は家族全員が知ってはいるが、やはり照れくさいことには変わりは無い。
「…ありがとう、うれしいよ」
照れ隠しに、ややぶっきらぼうに礼を言う恭也を見て、桃子やフィアッセがニヤニヤしているのに気付いたが、恭也はなにも言わずにチョコを一口食べた。チョコレートは甘い物の苦手な恭也のためにかなりビターに作られていた。
「どう?美味しい?」
「ああ、うまいよ」
「よっかた、甘すぎないように仕上げるの大変だったんだから」
と、微笑む忍の指には包帯が巻いてあった。
「その指は?」
「指?ああ、これはちょっと火傷しちゃって…。チョコなんてはじめて作ったからドジっちゃって…、でも全然たいしたこと無いの。気にしないで」
自分のために火傷してまでチョコを作ってくれた忍が愛しくて、恭也は思わず忍の火傷した指先に優しく口付けをして、次に忍のうっすらとリップの塗ってある艶やかな唇に恭也が貰ったチョコレートよりも甘いキスをした。
「恭也…。恥ずかしいよ…。」
忍は耳まで真っ赤にしてうつむいている。そう、そこで恭也は思い出した…、皆ガ見ていることを。
(レン)「お師匠〜、意外と大胆なんですね〜。」
(桃子)「いつのまにか大人になったのね〜。お母さんは嬉しいわ」
(フィアッセ)「お姉さんも嬉しいよ〜」
(美由希)「…………………ドキドキ」
(なのは)「お兄ちゃん、カッコイイ〜」
(晶)「し、師匠…。なんで小太刀を構えてるんですか?お、落ち着いて…」
皆に散々からかわれた後で、恭也は逃げるように美由希と夜の鍛錬に出た。ちなみに最近忍は週に2日か3日ほど高町家に泊まり、残りの日は逆に恭也ガ忍の家に泊まるという生活になっている。ノエルさんは事件が起こってから半年以上経っているが未だに目覚めない。恭也としてはあの広い家に忍を一人きりにはしたくなかったし、忍がノエルさんが目覚めた時に近くに居たい、と言う気持ちも解るのでこのシステムがとられたのだった。しかし、恭也が忍の家に泊まる日でも美由希との夜の鍛錬は欠かすことは無かった。美由希は最近ますます実力を上げている。すでに神速もマスターし、もはや恭也が美由希に教えることも残り少なくなってきた。それが解っているからこそ恭也は夜の鍛錬を欠かさない。美由希は恭也にとって大切な妹であり恐らくはたった一人の愛弟子であり、そして最後の御神の剣の正当なる後継者である。
「それじゃ始めるか」
美由希の斬撃は以前とは比べようも無いほどに鋭さを増し、左右から恭也を攻め立てる。見のこなしにも隙が無く、もはや本気で闘わなければ勝てる相手では無くなっていた。自分を美由希が倒した時に美由希が自分を超えた時であることを恭也は自覚していた。そしてそれはそう遠い事で無いことも…。
鍛錬から帰ってきて、恐らくは眠っているであろう忍を起こさないようにそっと部屋に入る。
「おかえり、おつかれさま」
「なんだ起きてたのか。どうしたんだ?」
「うん…。少し話がしたくって。良ければ庭に出ない?」
外は雲一つ無い美しい月夜だった。
「美由希ちゃんはどう?」
「ああ、もうすぐ勝てなくなるだろうな」
少し寂しそうに恭也は呟いた。
「寂しいの?」
「半分な…。でも師匠としては嬉しいよ。父さんとの約束も守れたしな。それに俺には『私はずっと恭也と一緒に生きていきたい』って、いってくれる大切な人を守るっていう新しい使命もあるし…。」
「気が付いたんだ。私のメッセージに…。」
「ああ、チョコの裏に書いてあったやつだろ?でも、俺としてははっきり言葉で伝えて欲しいな。忍の口から」
悪戯っぽく微笑む恭也。大人っぽくて、寡黙のこの人がこんな子供みたいな表情をすることを知ってる人がどれだけいるだろう?
「私だけが恭也の特別な女の子だって自惚れてもいいのかな?」
その問いに答える変わりに、恭也は忍が今まで見てきた『高町恭也』の中でも最高クラスに優しくて暖かい笑顔をむけると満天の星空よりも多くのキスをした。そしてその後に忍にささやいた。
「生涯を賭けて貴方を守ること誓う」と……。
「クスッ…。なんかキザね。恭也らしくないな」
「…フン。似合わなくて悪かったな。安心しろ、もう二度と言わないから」
「…でも嬉しかったな。『貴方』なんて恭也が言ってくれるなんて…。ありがとうね」
真っ赤な顔をして恭也は
「もう部屋に戻ろう。風邪をひく」
「そんなに照れなくてもいいじゃない。恭也、好きだよ〜」
それから一月後、3月14日
「忍、これは…あの、その、なんだ。バ…バレンタインのお返しと言ってはなんだが、良ければ受け取ってくれないか?」
恭也がしどろもどろに忍に渡した包みの中身は、忍の薬指にぴったりのプロミスリング。
「卒業したら…。忍と一緒に生きていきたいと俺は思ってる。返事を聞かせてくれないか?」
忍は感激と驚きのあまりただ頷くことしかできなかった。恭也に指に指輪をはめてもらい抱きしめられた胸の中でそっと呟いた。
「恭也…。大好き」と。