薫ちゃん、大学に行く
ある日のさざなみ寮
「旅に行って来るのだ〜〜!!」
と、さざなみ寮の住人である美緒は、旅行用のリュックと水筒を持って元気に寮を出ていった。
今日から一泊二日の学校行事の旅行に行く美緒を見送って、耕介は一息付いていた。
「愛さんは明後日まで研究室に泊まり、
真雪さんはフローラルのサイン会で今ごろ札幌、
みなみちゃんはバスケ部の合宿、
知佳は明日の朝まで病院か…」
ちなみに、あと一人のさざなみ寮の住人であるゆうひは、今はイギリスに留学中だ。
「薫と明日の夜まで二人だけか…」
耕介がにやけていると、ちょうどそこに薫がばたばたと二階から降りてきた。
薫らしくも無い慌てように、耕介はビックリしながらも何事か訊ねた。
「それが、うっかり今日の一限に授業があったのに寝過ごしてしまったんです…」
相変わらず落ち着き無く薫は答えた。
「しょうがないな…、バイクで送ってあげるよ。
今日はどうせもう薫しか居ないし…」
「いや、それは悪いですよ…」
「いいよいいよ…。第一もうバス出ちゃったよ…。
どうやって今から駅に行く気なの?」
そう言われると薫は返す言葉も無い。
「じゃあ…送ってもらいます…すみません耕介さん…」
「いいって…、第一、薫が今日寝過ごしたのだって昨日俺に稽古つけてくれたからなんだしね…。
とりあえず着替えて髪を梳かしてきなよ」
「え…?」
「まさかそのセクシーな格好で外に出すわけには行かないぞ。
薫のそんな格好を見て良いのは世界で俺だけだ!!」
悪戯っぽく微笑みながら薫を見る耕介の視線を追って、薫は自分の格好を見てみた。
余程慌てて着たのだろう…
上に着ている半袖の淡いブルーのシャツは、ボタンを互い違いに掛け、なおかつ所々止めそこなっている。
その隙間から薫の白い肌やかわいいお臍が顔を出している。
「うう〜ん、今日は黒か…。夜が楽しみだ…」
「………え?」
「薫…、ズボンのファスナーが全開だ…」
耕介の言うとうり、薫のジーンズはファスナー全開の上にボタンすら閉められていなかった。
そのため、今日の薫の下着の色はもちろん、デザインすらも完全に見て取れる。
「きゃあああああ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
慌てて部屋に駆け戻る薫を尻目に、耕介は部屋に戻りエプロンを外しG−ジャンを羽織った。
そしてヘルメットと鍵を持って玄関に出てきたところでばったり薫に会った。
「おお、薫。準備できたか?」
しかし、耕介の言葉に薫はプイと視線を逸らすのみだった。
どうやら、さっきからかったのを怒っているらしい。
「ごめんよ、薫。怒らないでくれよ…。
滅多に見れない慌ててた薫がかわいくて、ついからかいたくなったんだって…」
「…別に…怒ってなんかなかとです…」
『嘘だ…』
即座に耕介はその嘘を見ぬいた。
何故なら、薫が本人も無意識のうちに鹿児島弁になっているからである。
感情の爆発などでつい方言が出てしまうのは、誰にでも見られる傾向であった。
「薫、遅刻しちゃうから機嫌直していこうよ…」
その言葉に、とりあえず無言ながらも薫が耕介の後について玄関から出る。
そして、耕介が薫にヘルメットを渡した。
ブルーを基調としたシンプルなデザインの、見たことが無いヘルメットであった。
「これは…」
「うん、薫のためにヘルメット買っておいたんだ…。
ちょくちょく後ろに乗せてデートするのに、デートのたびに俺がノーヘルじゃ薫に怒られると思ってさ」
「ありがとうございます…、嬉しいです」
薫のその言葉に耕介は満足そうに頷くと突然薫の前に跪いた。
「どうしたんですか?耕介さん…」
薫は突然の耕介の行動にビックリしていた。
「お気に召しましたかお嬢様?」
耕介は薫に向けてそんな風に声をかけた。
「もちろんです…」
耕介の意図がわからずに薫はキョトンとしていた。
「それじゃあ、お嬢様をお送りいたしましょう…」
そう言って、バイクを一路海鳴大に向けた。
薫が通う海鳴大は、広大な敷地を誇る、なかなかにレベルの高い国立大学だ。
去年までは真雪が通っていたが、なんとか七年生にはならずに今年卒業していった。
入れ違いに薫と、その親友でもあり耕介の幼馴染でもある瞳が入学している。
敷地内を薫を後ろに乗せたままバイクで走る。
『目立ってるな…』
耕介は思わず苦笑した。
「薫、お前が通ってる文学部は何処だ?」
「そこを右に行ってすぐです」
「OK」
そして、文学部の前についた。
降りようとヘルメットを外した薫を耕介は突然抱き上げた。
「こ、耕介さん…。恥ずかしかですよ…」
「何を言ってるんです?
お嬢様…、このままお送り致しますよ」
薫をからかっているのが余程楽しいのか、耕介はにこにこしながら文学部のキャンパスに歩いていく。
当然、物凄く目立っている。
それはそうだろう、お姫様抱っこで抱き上げられたまま歩いているんだから目立たない方がどうかしている。
しかも、190を超える長身で、整った顔立ちをしている見たことも無い男性が
早くも美少女と、その朴訥ぶりで校内でも有名な薫を抱き上げて歩いているんだから言わずもがなである。
やがて、周りの注目に真っ赤になっている薫を掲示板の前で恭しく降ろした。
ざわざわしている周りの視線を気にしながらも、薫は掲示板をチェックする。
すると、突然
「えっ!!!!?」
と素っ頓狂な声を上げた。
「どうかしたか?薫」
「そ…それがですね…」
薫は言いずらそうにしながら耕介の傍まで戻って来た。
「急がなくて良いのか?9:00まであと5分くらいしかないぞ」
「それがその…臨時休講らしいです…」
薫はすまなそうにボソッと呟いた。
「え…?じゃあ俺がここまでバイクで送ったのは意味無し?」
「言いにくいんですが…」
薫は、間接的にそれを肯定して見せた。
「が――――――――――――――――――――――ん!!!!!!!!」
わざと大げさにショックを受けた振りをして、そしてちらりと薫の方を見やる耕介。
「耕介さん、ウチ今日一限だけなんでよろしければこのまま…」
薫は真っ赤になって照れている。
もちろん耕介は皆まで聞かなくても薫がデートに誘ってくれているのはわかっている。
と言うか、初めから薫は今日一限しか授業が無いことも知っていて、わざと大げさにショックを受けた振りをしていたのだが…。
「よろしければ…何?」
耕介はわかっていながら薫をからかうように訊ねる。
「あの…今日1日このままウチと…デートにでも…行きませんか…?」
たかがデートに誘うだけなのに、しかも、もう何度もデートに行ってるのにこの照れっぷり。
耕介ならずともからかいたくなる気持ちは良くわかる。
「じゃあさ、薫。このまましばらく大学内でデートしようか?」
「え?別にかまいませんけど…?どうしてわざわざ大学なんです?」
「俺も一度で良いから大学生の気分を味わって見たかったんだよね…」
「なるほど…」
「薫と同じキャンパスで、二人で腕を組んで大学内を歩いたりとかさ…
そんな暮らしも、なんか良いかな…って思ったりしたのさ。
それとも薫は嫌かな?
俺なんかと腕組んで大学歩いたりして、知り合いに会ったらみっともないとか思うなら無理にとは言わないよ…」
「そんな事絶対に思いませんよ…、耕介さんが恋人だって、大学の友人だけじゃなく、本当は世界中の人に自慢したいくらいなんですから…」
そう言って、微笑むと薫は耕介の腕をとって歩き始めた。
カフェテラスまで腕を組んで歩く薫と耕介。
「ねえ、あれ薫じゃない!!」
「え?あ〜〜〜〜!!!本当だ!!!!」
そう言って二人はわが目を疑った。
海鳴大で薫と知り合ってもうすぐ半年…
その間にたくさんの男が薫に言い寄っては振られて行ったのを知っている。
日頃からキリッと引き締まった表情をして凛とした女性。
それが彼女らを含めた薫の大学の友人のイメージであった。
しかし今の目の前の光景は、そんなイメージを完全に覆す物であった。
薫の表情に凛としたいつもの面影は無い。
柔らかく可愛らしく微笑む幸せそうな顔は少女のように無防備だ。
そして一部では
『男嫌いなのでは…』
と、噂されているほどに男に対して無関心な薫が腕を組んでいる男性は
長身で、足が長く整った顔立ちをしている。
その上、優しそうな雰囲気の中に大人の馨りを漂わせる、一言で言えばまさに「ステキな恋人の理想像」みたいな男だった。
「薫〜〜!!!」
とりあえず呼んでみる。
その声に薫は反応して二人の居るテーブルまでやってきた。
もちろん腕を組んで幸せそうな顔のまま…。
「おお、松永に横山。二人ともやっぱり急に一限が休講になったからここでお茶してるの?」
「うん…まあね。…ってそんな事はどうだって良いの!!!
あんたそのステキな人は薫の恋人?」
そう言って耕介を見上げた拍子に耕介と目が合う。
ニコリと優しく微笑みながら耕介は二人に話しかけた。
「二人とも薫の友達かな?
俺は槙原耕介と言います、よろしくね」
その笑顔を見て、二人は頭が真っ白になるほどにドキンと胸が高鳴った。
「わ、私薫と同じく海鳴大の一年で横山典子って言います」
「私は…その…同じく海鳴大一年の松永幹子といいます。よろしく・・・」
と、たどたどしく挨拶をした。
そんな二人の様子を、薫はやや面白くなさげに憮然とした表情で見ている。
一方耕介は、何故二人が慌てているかも、薫が怒っているかも、いまいち気が付いていないのか
「薫、そう言えば朝ご飯まだだったろう?ここでモーニングセットでも食べるか。
俺買ってくるから友達とゆっくり喋ってな…」
と、ややずれたことを言っていた。
「はい、ありがとうございます」
と言う薫の言葉を背中に受けて、耕介は奥のカウンターに入っていった。
「薫!!あのステキな人薫の恋人でしょ?」
「…うん」
真っ赤になって照れる薫を珍しげに見る幹子と典子。
「薫かわいい〜〜〜」
「真っ赤になってる!!!!」
そんな二人の言葉にますます顔を紅くする薫…。
照れくさいけど耕介とのことを冷やかされるのは心地よい…
そんな事を思っている自分にますます赤面する。
そこへ…
「神咲さん…おはよう。
今日、もし良ければ僕とドライブにでも行かないかい?」
と、声をかけてきた男が居た。
顔立ちは整っている方であろう。
恐らく美形に分類される事は間違いない。
しかし、その顔に張りついたいやらしい笑みがそれを台無しにしてしまっている。
耕介の心の底からにじみ出るような、明るい春の陽光のような雰囲気に対して、この男は粘りつくような嫌な雰囲気をしている。
図々しくも薫の横に座りこんで来て話しかけてくる。
「なあ、神咲さん。良いじゃん一回くらいデートしてくれたってさ…」
その言葉や行動に薫はもとより他二人も露骨に不快な顔をする。
「席を移しましょう…」
幹子が立ち上がる。
「そうね、行こうよ薫・・・」
典子が薫と男の間に入るようにして、薫と供に歩き出す。
しかし、この男はよほどの大物なのかバカなのか、ここまで露骨に嫌がられているにも関わらず、移った席に付いて来て薫の横に座りこんだ。
「そんなに、邪険にしなくても良いじゃんよ〜〜」
あまつさえ、今度は薫の手を握ってきた。
薫はまるで脊髄の中を毛虫が這いずり回るような嫌悪感で身体を震わせながら思いきり手を払った。
「なんばしよるとね!!!」
怒りのあまり思わず薩摩弁で怒鳴ってしまった。
「どうかしたのか?薫」
そこへ、二人分のモーニングセットを持って耕介が帰ってきた。
「耕介さん!!!」
先ほどまでの男と会話していたのと同一人物かと疑問に思うほどに、薫は嬉しそうな笑顔で耕介を迎えた。
その表情を見て男は腹立ちを覚え耕介に食って掛かる。
「ああ〜〜!?テメエには関係ねえんだよ!!!どっか消えてろこの木偶の坊がぁ!!!」
と、すごんで見せる。
金髪にオールバック、全身にタトゥーをいれた自分が凄めば、真面目そうな耕介がビビルと思ったのか、やや芝居かかって凄んで見せる。
「貴様!!!!」
学校で問題を起こさない様に今までずっと我慢していた薫だが、
耕介を木偶の坊呼ばわりされた事は絶対に許せず男を殴ろうとする。
「止めなよ、薫」
それを征して耕介は一歩男に近づく。
「薫は今おれと、今朝取り損ねた朝食を取るから、とりあえず終わるまでどっか行ってくれないか?」
耕介は、静かな口調でとりあえずそう説得してみた。
しかし、男は耕介がビビッテルと判断したのか、ますます強気に食って掛かってきた。
「なんで、テメエに神咲さんが朝食取り損ねたってわかんだよ!!!?」
「何でって…そりゃあ俺と薫一緒に暮らしてるから…」
その発言に男は一瞬ポカーンと口を開けた。
さらに言うなら驚いているのは典子と幹子も同じだった。
し――――――――――――――――――――――――――――――――――ん………
静寂のあとに…
「薫、あんた密かに同棲してたの!!!?」
「同棲って…」
「なによ〜〜〜!!こんなステキな恋人と同棲し始めたなら教えてくれれば良いのに…」
「だから違うって…」
「第一二人はいつから一緒に暮らしてるの?」
「高二からかな…でも同棲とかじゃ…」
「うっそ〜〜〜!!!実は薫奥手そうなのに進んでるんだ…」
そんな女性陣の喧騒を耳に、男は茫然自失の状態から回復して、逆恨みから耕介を殴ろうと掴みかかってきた。
「耕介さん!!!」
心配そうに典子と幹子が叫ぶ・
「薫!!?あんたなんでそんなに落ち着いてるのよ…
助けてあげないと…あのバカ男、ああ見えても空手部のレギュラーよ…」
「大丈夫だって…」
薫の言うとうり、耕介は男の正拳突きを難無く避けると
「暴力は行けないな♪」
と挑発するような事を言い放った。
そしてその言葉にあっさりと逆上した男は、正拳突きからローキック、そして回し蹴りとなかなかに見事なコンビネーション攻撃で耕介を攻めたてる。
しかしそのすべての攻撃を楽々よけて耕介は相手の額にでこピンを食らわせた。
「いてっ!!!」
「もう、薫に近づかないって約束するならこんなもんで許してあげるけど?」
耕介は鼻歌交じりに男に声をかけた。
「「すご〜〜〜〜〜〜〜〜〜い」」
耕介の実力を知らない二人は目の前の光景に呆然としていた。
「実は凄く強いんだ!!!」
「いいな〜〜!!薫の彼氏強くて優しくて美形で…。
ずるいな〜〜〜〜…」
などとのんきな事を口にしていた。
やがて、男が立ち上がり
「ちっ!!!何をムキになってやがる。
こっちだってな初心(ウブ)なフリして、高二から男と同棲してるカマトト馬鹿女なんて願い下げだよ!!!」
と、捨て台詞を吐いて逃げようとした時に空気が凍った。
「テメー!!!俺の薫に今なんて言った!!!!」
今までの耕介とは別人のような、殺気をぎらつかせたワイルドな耕介が男を後から蹴り倒していた。
「なにす………ヒッ!!!!」
文句を言おうとした男は何も言えずにただ声を潜めてしまっていた。
目の前に立つ男にはどうあがいても勝てない…。
それどころか殺されかねないことに本能が気が付いてしまっていた。
恐ろしいほどの殺気を放ちながら、倒れている自分のところまで近づいてくる耕介を前に男は奮えて動けなくなっていた。
物凄いハイキックが男の顔面を襲う。
グシャ…
と言う何かが潰されるような音と共に男の顔にもろにめり込んだ。
すでに戦意を完全に喪失している男の身体を、髪の毛を持って無理矢理立ち上がらせると、
ボディブローを1発2発3発と続けていれる。
「グェ〜〜〜〜」
吐捨物を撒き散らしながら悶絶する男を轟然と見下す耕介…。
「まずい…耕介さん切れちゃってる…」
その言葉に今まで耕介の強さと変わり様を呆然と見ていた二人が反応する…。
「切れてる…って?」
「耕介さん昔は凄く名前が通ってた不良だったらしくて、切れるとその頃の耕介さんに戻っちゃうの…」
「ええ〜〜〜!!!!」
耕介は、すでに意識の無い男の頭を踏みつけ様と足を上げた。
「止めて耕介さん!!!いつもの耕介さんに戻って!!!」
そう言って必至に後から耕介を抱きしめる薫。
1分2分3分…ずっとその体勢のまま固まっていた耕介が、ポツリと呟くように言葉を発した。
「……………ごめん薫…。
薫の悪口を言ったこいつが許せなくてさ…」
「ウチのタメにしてくれたことです…。
謝らないで下さい…、でもやり過ぎですよ…耕介さん…」
「そうだな…、もう勘弁してやるか…この馬鹿も…」
そう言ってスッと振り上げていた足を降ろした。
「グエ…」
もちろん男の頭の上に…
結局カフェテラスからは薫と耕介それに典子と幹子の4人は逃げる様に出てきた。
「あ〜〜あ…、耕介さんのせいでしばらくあそこは使えないな…」
典子が悪戯っぽく呟いた。
「うう…すまん…」
恐縮して耕介はその大きな体を小さくしている。
幹子がそれを慰める様に
「良いじゃない…、しばらくはこうやって外の芝生に寝転ぶのもさ…」
と言って、大きく伸びをした。
「ところでさあ、薫と耕介さんて一緒に暮らしてるんでしょ?
高二からか…随分長い付き合いだね…」
「二人とも何か勘違いしてない…?」
コホンと耕介が咳払いしながら疑問を投げかける。
「勘違いって…?」
「俺と薫は一緒に暮らしてるけど、同棲じゃないよ…」
「「え?」」
「さっきから違うと言おうとしてたのに二人とも聞いてくれないから…」
薫が苦笑しながら耕介の言葉に続けた。
「ウチが住んでる女子寮の管理人してるのが耕介さんだよ…」
「………………何で男が女子寮の管理人してるの?…」
「それは説明すると長くなるから端折るけど、そう言う事だから同棲じゃないよ…」
「な〜〜〜んだ、つまんないの…。あのお堅い薫が同棲してるってニュースでみんなを驚かせられなくてさ…」
「悪かったね、お堅くて…」
帰り道耕介のバイクに乗りながら薫は『同棲』って言葉を強く意識していた。
「ただいま〜〜〜」
誰もいない女子寮に薫の声が響く。
突然耕介が後ろから薫を抱きしめた。
「きゃっ!!!耕介さん突然どうしたんですか?」
「薫とたぶん同じ事考えてた…」
「え?」
「みんなが帰ってくる明日までは…」
一回言葉を切って薫の目をじっと覗き込みまた言葉を続けた。
「俺立ち二人っきりの同棲状態だな…って…」
バイクに乗って耕介にしがみついていた間中考えていた事を、ピタリと当てられて薫は多いに照れた。
そんな薫のかわいい照れてる様子を見ながら耕介は薫の耳に囁いた。
「黒い下着か…、同棲初日の今夜は楽しみだな…」
その言葉に耳まで紅く染めながらポカリと耕介を叩く薫。
「いた・・・」
「耕介さんのH!!!!」
こうして二人っきりの夜は更けていった。
あと書き
随分昔に書いたものですので今読み返すと恥ずかしい。
このころは、たぶんバキにはまってたんだろうなぁと思える耕介の戦闘描写であります。
実は、これは贈呈した作品なんですが久々に贈呈先に行くともう掲示してなかった模様なんでせっかくなんでこっちにアップしました。