AM8:10

 

 

 

「うおおおぉりゃぁあああああ!!!」

 

「のひいぁああああああ!!?」

 

 

2人の少女の叫び声が町内に木霊していた。

 

1人の少女がローラーボードに乗り、それをもう1人の少女が引っ張っている。

 

乗っている少女―――レンは目に涙をため絶叫し、

引っ張っている少女―――晶は雄叫びを上げながら爆走する。

 

 

 

それはもはや見慣れた登校風景・・・・・

 

 

 

 

 

 

告白  

〜晶の場合〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「とうちゃ〜〜く!」

 

元気よく、そう宣言する晶。

 

「・・・・・あ、あきまへん・・・ほんま、あきまへんて・・・・・」

 

うわごとのように何かをいっているレンを無視し、学校へ入っていった。

 

 

 

 

 

「・・・・っと、なんだこれ?」

 

下駄箱を覗き込んだ瞬間、下駄箱に何か入っていることに気づく。

 

手にとって眺めてみる。

 

「こ・・・これは・・・・・」

 

それはやや簡素な便箋だった。

 

「・・・も、ももももももしかして・・」

 

 

 

・・・彼女はそういうことに聡い方ではない。

 

しかし、『朝、下駄箱に入っている手紙』というシチュエーションから

『ラブレター』という単語が思い浮かばないほど疎くもない。

 

 

恭也とは違うのだよ、恭也とは!(意味不明)

 

 

それはともかく。

 

 

 

 

(お、おお、おおおお落ち着け、俺!)

 

頭が思いっきり混乱を始める。

 

それはそうだろう。

 

よくよく男に間違えられることはあるが、晶だって立派に女の子なのだ。

 

こんなものを貰って平然としてはいられない。

 

(・・・そ、そうだ、中を見なくちゃ。

もしかしたら間違いで入れたのかもしれないし・・・・)

 

震える手つきで便箋を開け、中から出てきた手紙を読んでみる。

 

そこには『かわいい文字』で、こう書かれていた。

 

 

 

 

「城島晶さんへ

 

城島さん、こんにちは。

あなたに、2人きりで会って伝えたいことがあります。

今日の放課後4時半頃、体育倉庫の裏に来ていただけますか?

 

いきなりこんな手紙を送ってすいません。

気を悪くしたなら謝ります。

それでも、来て下さると嬉しいです。

私は、待ってますから・・・・

 

                  白井さやかより」

 

 

 

「・・・・・・」

 

何度も読み返してみる。

 

宛名と差出人をさらに確認する。

 

しかし現実は変わらない。

 

 

 

 

(・・・女の子からかよ!!)

 

晶は心の中で叫んだ。

 

 

 

 

 

 

白井さやか

 

晶はこの女の子を知っていた。

 

自分と同じクラスにいる女の子である。

 

性格は内気で、あまり言葉数は多くない子で、そのためあまり友達もいない。

 

晶も数回しか口をきいたことがなかった。

 

ただ、その容姿は同じ女である晶から見ても可憐であり、

 

聞くところによると、本人非公認のファンクラブまで存在しているらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうしよう・・・・」

 

今までとは違う意味で戸惑う。

 

繰り返すが、あくまでも晶は正常な女の子なのだ。

 

そうゆう趣味はないのである。

 

(誰かに相談してみるとか・・・でも誰に?

レンは論外、師匠や勇兄もあんまり頼りにならなそうだし・・・

というか、俺の回りでこうゆうの頼りになりそうなのって桃子さんと忍さんくらいかな?

桃子さんは放課後までには会えないから・・・

忍さんに相談するのか?

う〜ん、でも茶化されそうだなあ・・・)

 

悩み続ける晶。

 

 

 

 

・・・だから彼女は気づかなかった。

 

自分の後ろから、こっそり手紙を覗き見していた存在がいたことに。

 

 

 

 

 

 

昼休み。

 

晶は今は食堂で席を探している最中である。

 

(あ〜〜、どうしようかな〜・・・・相談するとしたら忍さんだけど・・・・)

 

彼女はまだ悩んでいた。

 

 

すると、

 

「お〜〜い、おさる〜〜。こっちや〜〜」

 

レンの声が聞こえる。

 

見ればレンが晶の分の席を確保してくれたようだ。

 

隣にはなぜか忍がいる。

 

「お、席取っといてくれたのか、サンキュー」

 

「いやいや、礼にはおよびませんよ〜、もてもての晶君

 

ぴくっ

 

晶がレンの言葉に反応する。

 

「すごいよね〜、晶ちゃんってばラブレター貰ったんでしょ?女の子から」

 

忍もレンに続く。

 

「しかもお相手はあの白井先輩だっちゅうんだから・・・・

これを知った男供はさぞかし嘆くんやろうなぁ」

 

「白井さんって言えば、風芽丘にもファンクラブのメンバーがいるくらいだもんね〜」

 

晶は沈黙している。

 

「まさか断らんよな〜?おさる」

 

「そうそう。愛に形なんて関係ないんだよ?」

 

 

 

すっげぇイイ顔しながら話しかけてくる2人を見て。

 

晶は相談しようなどと甘いこと考えていた自分を恥じた・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、私たちがちゃんと見守っててあげるから!」

 

「しっかり受け止めてあげるんやで!おさる!」

 

放課後の体育倉庫付近。

 

2人に励まされている(?)晶の姿があった。

 

「うう・・・・なんでこんなことに・・・・」

 

泣き言を呟きながらも倉庫の裏へと足を進める晶。

 

(あ、いた・・・)

 

そこにはまだ時間になっていないというのに白井の姿が。

 

やや顔を赤らめながら、そわそわしている様子である。

 

 

 

 

 

「これは、いよいよ本気っぽいわね・・・・」

 

「楽しみですな〜、忍さん」

 

現場から少し離れ、物陰に隠れながら様子を伺っている2人。

 

「お、晶ちゃんが話しかけに行った!」

 

「・・・・おお!ちゃんと会話しとる!」

 

彼女たちの視界内で、晶と白井との会話が行われてゆく。

 

 

 

 

 

「あ、あの。白井・・・さん?」

 

微妙に歯切れが悪く声をかける晶。

 

「城島さん、来てくれたんですね!よかった・・・・・」

 

白井はほっとしたのか、それまでのそわそわしていた雰囲気がなくなる。

 

「え〜、んで、俺に話したいことがあるって・・・」

 

「はい、そうなんです。実は、私・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・何しゃべっとるんでしょうな〜?」

 

「く〜。こんなことなら家から小型マイク持って来ればよかった〜!」

 

レンと忍が、悶々としていると、

 

 

「あははははははは!!」

 

 

突然晶が笑い声を上げた。

 

そしてくるりと向きを変えるとこちらの方に歩いてくる。

 

「晶の奴、こっちに来ますよ?」

 

「何があったんだろ?」

 

疑問を浮かべつつも、白井に見つからぬよう首を引っ込める2人。

 

 

「おい、レン」

 

晶が話しかけてくる。

 

「な、何してるんや、晶」

 

「そうだよ、恋人をほっぽいてちゃ駄目でしょ?」

 

2人が非難めいた視線を浴びせるが、それに動じることもなく晶は続ける。

 

「そういう話じゃなかったんですよ、これは。

・・・あ、ほら、白井さん」

 

晶の後ろから、白井が出てくる。

 

「って、え?白井先輩?」

 

「わ、私たち、覗いてたわけじゃないんだよ?」

 

目を丸くするレンと、言い訳を始める忍。

 

だが晶が二人の台詞を遮って、

 

「喜べレン。白井さんがお前に話があるそうだ」

 

「はへ?」

 

レンが気の抜けた返事をすると、白井がずいっとレンに近寄って、

 

「鳳蓮飛ちゃん、でいいんだよね?」

 

「えっと、いや、レンでかまいませんが」

 

「じゃあ、レンちゃん」

 

「はあ」

 

「・・・・・・抱きつかせて♪」

 

「・・・・・はぁ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結局なんだったの?この話って」

 

「だから、白井さんが告白したかったのはレンだったんですよ。

でも、白井さんって内気だから何の面識もないレンといきなり話をするのが怖くって、

一応同じクラスで、少しは話したこともある俺を仲介にしようとした訳です」

 

「・・・・内気ねえ。あの状況を見るとにわかに信じがたいものがあるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や〜ん、もう!レンちゃんてばかわい〜!」

 

「白井先輩、だから抱きつくのはやめてくださいて!」

 

「あ〜〜〜〜、亀さんみたいにかわいいの〜〜!」

 

「のぉおおお!?だ、誰か、誰かヘルプミ〜、ヘルプミ〜プリ〜ズ〜〜!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、いっか♪

これはこれで楽しいし!」

 

「レンも、あれだけべた褒めしてた白井さんと

くっつくことができて、さぞかし本望でしょう」

 

「そだね」

 

レンの叫びにはまるで耳を貸さず。

 

忍と晶は2人の行為をいつまでも見守り続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

 

題名を見てラブラブものを予想していた方、すいません。

 

私は所詮、ギャグしか書けないSS書きです。

 

あと、レンの方言は凄くいい加減です。

 

ご了承ください。