とらいあんぐるハートSS    


『日溜まりの中で』   



3月某日   高町家 縁側   
1人の男が縁側に座りながら本を読んでいる   
ふと、男…高町恭也は顔を上げ、空を見る  

「…いい天気だな………」   

そう一人呟きながら、読んでいた本を閉じる   
本を、横に置き伸びをする  

「にしても…誰も居ないと暇だな」   

そう言いながら、庭の盆栽を眺める  

「休みに入ってからと言うもの、ずっとこんなだな………」   

そう、一人ごちながら、最近のことを考える   
試験が終わり、卒業休みに入ってからと言うもの   
足の方の治療もあり、鍛錬も休みにしているので、   
家でのんびりするか翠屋を手伝うかぐらいしかないのが、ここの所の状況である。  

「………まいったな……本当にする事がない………」   

横に置いた本に目をやるが…、既に読み終わった本をまた読み直すのも躊躇われる   
時計に目をやると、まだ昼になったばかりだ  

「しかたない…天気も良いし……美由希が戻るまで、寝るか………」   

そう言って、柱に頭を預け目を瞑る   
すると、数分もかからずに寝息が聞こえるようになった。     

1時間後   
玄関   
制服を着た一人の女性が、長い三つ編みの髪を揺らしながら、玄関をくぐった。  

「ただいま〜、恭ちゃん居るの〜?」   

女性こと、高町美由希は、靴を脱ぐと同時に恭也の名前を呼んだ。  

「……居ないのかな?」   

そう言いながら、リビングに行くが  

「居ないなぁ…恭ちゃん〜?」  

「部屋で寝てるのかなぁ?」   

そう言いながら、恭也の部屋に行くと…  

「…あ」   

柱に頭を預け、寝ている恭也を見つけた  

「やっぱり寝てたか〜」   

起こさない様に静かに近づき、横に座る  

「ただいま…恭ちゃん」   

横で声をかけても起きない、熟睡しているようだ  

「………恭ちゃん〜?」   

頬を指で軽くつつくがやはり起きない  

「ダメかぁ〜、まぁこんなに良い天気だもんね、熟睡して当然かなぁ……ん?」   

床に置いた手が何かに当たるのを感じ、視線を落す   
そこには先ほどまで恭也が読んでいた本が置いてあった。  

「あ、恭ちゃん、ちゃんと読んでくれたんだ」   

最近、鍛錬も出来ないから暇だと言う恭也にこの本を貸したのだった  

「今度、新しい本貸さないとなぁ」   

そう言いながら、また恭也を見るが未だに起きる気配がない  

「恭ちゃん〜、起きないの〜?」   

声をかけるがやはり起きる気配がない  

「むぅ…………あ、そうだ…」   

何か閃いた様で、美由希は恭也を起こさないように、ゆっくりと恭也の頭を、自分の膝に置いた  

「一度、やってみたかったんだよね♪」   

笑みを浮かべながら、恭也の頭を撫でる  

「にしても、ほんと良い天気だなぁ」   

空を見ながら美由希はそう呟いた。   


2時間後   

(ん………何だ?)   

ようやく意識が覚めて、起きようと思った恭也だが…自分がいつの間にか横になっているのに気づく  

(それに…頭の後ろに柔らかいものが……それに、誰かが頭に触って……)   

目をゆっくりと開けると…そこには、柔らかな笑みを浮かべながら恭也を撫でる美由希が居た  

「…美由希?」  

「おはよう、恭ちゃん…もう夕方前だけどね」  

「膝枕……してくれてたのか」  

「うん、よく寝てたから、起こさない方が良いかなってね」  

「そうか………」   

起きようと思ったが、この状態が心地よくてそれを躊躇わせる  

「ねぇ、恭ちゃん、今日何の日か覚えてる?」  

「………何かあったか?」   

美由希は少し呆れたような顔をして  

「帰って来たら買い物に行こうって言ったじゃない」  

「あ」  

「忘れてたんでしょ」  

「…すまん」  

「もう…今度はちゃんと約束守ってよ?」  

「わかった」   

そう言うと、美由希はまた穏やかな顔に戻って、恭也の頭を撫でる  

「…美由希」  

「ん、な〜に?」  

「もう暫くこのままで、居させてくれないか?」   

そう言われると美由希は、笑みを浮かべながら  

「いいよ、今度恭ちゃんにもやってもらうからね」

 「俺の膝じゃ、寝づらいだろう………」  

「うん、だから腕枕ね」  

「…………わかった」  

「楽しみにしてるからね」  

「……わかったよ」  

「じゃ、お休み恭ちゃん………」  

「ああ………」   ]

そう言うと、恭也は再び目を閉じた   

そして、また静寂が戻る  

「そう言えば…皆帰ってくるの遅いなぁ…どうしたんだろ?」   

今更だが、普段なら帰ってきてる時間なのに、帰ってこない晶達の事を考える   


同時刻   玄関前   


恭也と美由希が、縁側で二人の世界を形成してるその頃   
玄関前で、入ろうにも入れなくて困っている3人組が居た  

「あちゃあ…師匠達………凄く良い雰囲気だぞ………」   

縁側の方を見つからない様に見て、困った顔をしているボーイッシュな少女、城島晶が言った  

「今入ったら美由希ちゃん達の時間、邪魔してしまいそうやなぁ」   

晶の横の少女、レンこと鳳 蓮飛も同じく困った顔をしている  

「二人とも、幸せそうだね〜」   

その二人の間で、晶達より小さな女の子、高町なのはは嬉しそうだった。  

「しょうがない、翠屋戻るか………」  

「せやな……」   

そう言いながら、二人は元来た道を戻り始める   

なのはも二人についていくが、その顔は二人とは違い満面の笑みに満ちていた。   

その後、翠屋に戻った晶達は、桃子達に事情を話して、二人にはゆっくりして貰おうと、夕食の時間まで戻らなかった。   

晶達が、桃子とフィアッセも一緒に戻ってきて、縁側を見ると   
恭也は、美由希の膝に頭を乗せて、   
美由希は恭也の頭を膝に乗せたまま寝ていた。   
そんな二人を、晶とレンは少し恥ずかしそうに   
なのはは、無邪気に笑顔で   
桃子とフィアッセは、柔らかな笑みを浮かべて見ていた。   

その後、桃子に起こされた二人が、揃って顔を真っ赤にしていたのは言うまでもない