魔術師さんのSS『非日常の日常』のバットエンドの話となっております

嫌と言う方は読むのは止めてください

それでも良いというなら・・・・・


 

 

 

 

崩壊の刃

 

 


小雨の降り続くなか薫は、死合に行った恭也と耕介が帰ってくるのを傘も差さずに待ち続け・・・・・そんな中森の奥の方から人の気配を感じ・・・・

 

 

「恭也くん・・・・恭也くんなのかい?」

 

 

気配に向かってそう問いただす

月の照らした明かりの下、耕介の三歩後を付いて来た恭也に向かい言葉を掛ける

 

 

「恭也くん・・・・怪我はない?」

 

 

死合の結果を聞かずに恭也の身を案じ言葉を掛ける薫

対して恭也の方は、なんだか覇気がなく、常日頃の彼を知るものなら疑問に思うであろうそんな恭也がゆっくりと口を開き・・・・

 

 

「・・・・・・・・おねーさん・・・・誰ですか?」

 

 

「きょ・・・恭也くん・・・・如何したんだい?・・・はは、悪戯でウチを驚かそうとしているのかい?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

そんな問いかけをしたが反応がないため・・・・・・・

目で耕介に問いただすことにする薫

 

 

「すまない・・・・・薫・・・・・・」

 

 

この一言を言うと黙り込んでしまう耕介

 

 

「恭也くん、ウチが分からんの!?なぁウチのことが分からんの・・・・」

 

 

最後の方は、涙を流しながら恭也に問いただす

 

 

「おねーさん大丈夫ですか?どうして泣いているんですか?」

 

 

まるで幼子のように不安一杯に表情を変えながら薫のことが心配して問い返す恭也

 

 

「ぅぅぅうわぁぁぁっぁっぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜」

 

 

薫の悲しみにくれた叫び声が辺り一面に響き渡る

 

 

「薫・・・とりあえず恭也君を病院に連れて行こう・・・・そうすれば何とかなるはずだ・・・・」

 

 

楽観視しているわけでなく、薫を力づけるためにそう声を掛ける

 

 

「そう・・・・ですね。まだ・・・・・落ち込むのは早いですよね・・・・」

 

 

恭也が戻ることを信じ病院へ向かうことにする二人

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ところ変わって病院〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

「はぁ〜〜〜いったい何をしたんじゃ?」

 

 

医者の診察後の一言はこれであった

 

 

「っと手合わせをしまして・・・・」

 

 

「手合わせじゃと・・・・嘘はいかんな・・・そんなもんでこんなことになるかい。ワシは精神科じゃないから断言は出来んが・・・この少年の心は崩壊しちまっとるぞ」

 

 

山の中の小さな診療所にて告げられた一言は、薫の心を打ち砕くこととなる。

 

 

「先生・・・恭也くんは、いったいどうなったんですか・・・・」

 

 

知りたくは無いことであろう・・・しかし藁をも掴む気持ちで恭也の状態を聞く・・・

 

 

「さっきも言った通り、ワシは精神科じゃないからなんとも言えんが・・・よほど恐ろしい目にあったのじゃろう・・・少年の今までの人格が・・・とにかく心が破壊され尽くしておる・・・恐怖から逃れるために自分を消したんじゃろう。もう二度とコヤツは元に戻らんて・・・・」

 

 

その言葉を聞いた瞬間薫の最後の望みが・・・・・・消えた

 

 

「恭也くん・・・・どうしてこんなことになったんだろうね・・・・・」

 

 

涙を流しながら・・・誰も居ない空間に話しかける薫

 

居た堪れなくなったのか医者に問い詰める耕介

 

 

「先生、何とかならないんですか?これじゃあ、あんまりで・・・・」

 

 

「・・人の話を聞いとらなんだのか?人の心とは、繊細なものじゃ・・・そんな簡単に治せるものか・・・どうしてもと言うのなら、犯人を突き出してせめてもの罪滅ぼしをするのじゃな」

 

 

そんな医者の言葉を聞いて固まる耕介

そう、耕介こそが恭也と手合わせのため彼を潰した張本人と言える・・・・・

 

 

「耕介さん・・・・もういいです・・・・・家に帰りましょう」

 

 

もはや、薫の言葉には何時もの覇気が感じられない・・・・

それどころか、彼女の瞳には何の光もともしてはいなかった・・・

 

 

「薫・・・・・っく・・・・すまない」

 

 

そして神咲家に帰った三人は、今日はもう遅いとのことで寝ようとするが耕介は罪悪感のため・・・・そして薫は恭也を失ったことで眠れぬのであった

 

 

そして翌日

 

 

恭也のことについて神咲の重鎮と当代、そして耕介と恭也を交えての会議が行われることとなる

 

その内容は・・・・・

 

 

『壊れた剣士など神咲にはいらぬ』

 

『所詮、不破など、この程度だろう』

 

『こんな男に当代をやるわけにはいかんな』

 

 

などと言うものであった

これを聞いた薫は

 

 

「恭也君が壊れたのは、神咲の勝手な都合じゃなかか!!!それを壊しておいて・・・この言い草か!!!こんな一族滅びてしまえばいいんじゃ」

 

 

そう叫び恭也を連れ、神咲家を飛び出した薫と手を引かれて連れ出される恭也

 

 

「薫おねーさん・・・どこに行くんですか?」

 

 

と手を引かれたまま恭也が薫に聞く

 

 

「恭也くん・・・君の家に帰ろう。桃子さんたちのいる家に・・・・・」

 

 

「桃子おねーさんの家に行くんですか?・・・どうして?」

 

 

この一言を聞いて愕然となる薫

恭也と桃子が血の繋がらぬ親子であるとこのとき初めて知ることとなる。

 

 

(恭也君と桃子さんは、親子でなかったのか・・・・それでもウチは、恭也君を海鳴に帰さなければならない・・・)

 

 

「桃子さんのところに帰ろう。今の君の家はそこなんだ・・・」

 

 

「そうなんですか?じゃあ帰りましょう、薫おねーさん」

 

 

自分などより大人びた言動と雰囲気を持っていた恭也が幼子のごとく微笑、薫に声を掛けた

 

 

自分などより背も大きくしっかりとした恭也のこの言葉を聞いた瞬間・・・薫は・・・

 

 

薫「ごめん・・・ごめんね・・・・・ウチを・・・・・ウチを許して・・・恭也くん」

 

 

彼を抱きしめながら涙を流し、何度も、何度も、謝り続ける薫・・・・

 

 

(ウチは謝らなきゃならん、桃子さんたちに・・・・・そして、償わなければならん、恭也君に対して・・・・・)

 

 

そんな思いを胸に海鳴に帰ることを新たに決意する・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「薫さん・・・ここが海鳴ですか?」

 

 

「そうだよ・・・・恭也君。ここが海鳴だ・・・・桃子さんたちのところに帰ろう・・・」

 

 

海鳴に着いたことをまだ、桃子たちに教えることが出来ずに結局着いてしまった・・・

 

恭也の精神の崩壊を伝えることで桃子に負担をかけたくないと思っているが・・・

 

結局伝えるだけの勇気が無いのではと・・・・・・・・打ちひしがれ続けていた薫

 

そんなことを露知らず、桃子に会うことを少し不安になりながらも、桃子に会うことを楽しみにしている様子の恭也

 

 

(あんなに楽しそうにして・・・・恭也くん。でもウチは・・・・・)

 

 

恭也を連れて翠屋に向かう薫

 

 

『いらっしゃいませー』

 

 

店員の挨拶を聞きながら店の中に入る

 

 

「あ、恭也〜〜帰ってきたんなら電話で連絡の一本でも送りなさいよ。連絡くれれば迎えに言ったのに〜〜〜」

 

 

「桃子おねーさん、お久しぶりです」

 

 

満面の笑顔を浮かべながら桃子に挨拶を返す恭也

 

恭也の言動に疑問を覚えて聞き帰す桃子

 

 

「恭也、あんた如何したの?おねーさんだなんて・・・一体どうしたのよ・・・」

 

 

「すみません、桃子さん。そのことについては・・・・その・・・・」

 

 

「一体何があったの薫ちゃん・・・・恭也に・・・・恭也に何があったの」

 

 

「すみません・・・・今この場で言えるようなことではないので・・・・」

 

 

「松っチャン悪いけど店おねがい・・・・」

 

 

「何言ってるのよ・・・・店長が抜けて如何するの・・・・」

 

 

少し語調を強くして桃子に返す

 

 

「恭也が・・・恭也がおかしいのよ・・・・何かあったんだわ・・・お願い松ちゃん」

 

 

松尾に縋るようにお願いをして店を後にする桃子

 

 

「恭也君に何かあったか・・・・・確かに・・・尋常じゃあないわね・・・」

 

 

恭也の手を握り締めたままで、高町家に向かうことにする薫

そして高町家についてかおるの最初にはなった言葉は・・・・

 

 

「すみません・・・・桃子さん・・・・本当に・・・・」

 

 

涙混じりで謝る薫を前に困惑する桃子

 

 

「一体、恭也に何があったんですか!!」

 

 

落ち着こうとしながらも、恭也の尋常ではない様子から自然と言葉を荒げてしまう

 

そんな言葉を聞き、体を一瞬震わせた後におずおずと言葉を紡いでいく薫

 

 

「恭也君は、ウチとのなかを神咲に認めてもらうために、ウチの父の一樹、弟の和馬、そして、さざなみ寮管理人の耕介さんと仕合ました・・・・」

 

 

「恭也君は、父と和馬には、多少の苦戦を強いられるも勝つことが出来ました・・・・・でも、耕介さんとの戦いの中・・・・あまりの恐怖から・・・心を・・・・」

 

 

薫の話が終わるまで、ただ、静かに聞いていた桃子がふいに

 

 

「どうして・・・こんなことになっただろうね・・・・・」

 

 

「恭也は、本当に甘えない子だった・・・・・」

 

 

ぽつりぽつりと語りだす桃子に今度は、薫が聞き手に回る

 

 

「最初に会ったときは、礼儀正しくて手の掛からない子だなって思っていたの・・・でもね、それは違ったのよ。あの子は、誰に対しても一歩引いていたの・・・」

 

 

「どういう意味ですか・・・・」

 

 

恭也の誰に対しても一歩引いているということの意味を知りたくて思わず桃子に尋ねる薫

 

 

「あの子は、誰に対しても自分を出さなかったわ。あなたに出会うまで・・・・。知っている?恭也は、私の子じゃないことを。あの子はね母親に捨てられた子なのよ」

 

 

「そ、そんな・・・・」

 

 

予測していたものの、知る事実に動揺を隠せない薫

そんな薫を余所に、話を続ける桃子

 

 

「あの子の本当の母親はね、夏織って言うのよ。どうして恭也のことを捨てたのかは、私も知らないわ。結構小さい頃に気付いていたみたいよ、自分は捨て子だって・・・・・・そして、幼い頃から士郎さんに育てられたみたいだから、甘えることを・・・ううん、甘えさせてもらうことをできなかったの」

 

 

「そして、士郎さんが死んだ時に言ったわ。『母さん、僕は泣けないから・・・約束したんだ。とうさんと・・・みんなを守るって・・・だから、母さんは泣いてあげてよ』ってね。それからの恭也は、さらに甘えなくなったわ。何時も自分を傷つけてそして強くなって・・・・誰にも支えられることなくみんなを支えて・・・・・」

 

 

「そんなあの子が、初めて甘えていた・・・最初は嫉妬すらしたわ、薫ちゃんに・・・・でも、やっとあの子も幸せになれるって思ったら、そんな気持ちもすぐに消えたわ」

 

 

「も、桃子さん・・・・」

 

 

「ねえ、薫ちゃん。どうしてこんなことになったんだろうね・・・今まで甘えることの無かった恭也が初めて人に甘えるようになって、やっと幸せになれると思ったのに」

 

 

「すみません、ウチは・・・・ウチは・・・」

 

 

「ねえ!!!どうして、どうして恭也がこんな目見合わなきゃいけないの!!!やっと、やっと人並みの幸せを掴もうとしていたのに・・・ねえ、どうして。答えて薫ちゃん」

 

 

ここにきて冷静に見えた桃子の何かが切れた

 

 

「どうしたんですか?桃子おねーさん、薫おねーさん」

 

 

「恭也、恭也・・・どうして・・・どうして・・・・」

 

 

泣きながら恭也を抱きしめる桃子

 

そして、泣きながら心の中で恭也に誓う薫

 

 

(ウチは、償わなければならん・・・恭也君から奪ったもの全てに対して)

 

 

こうして、高町家に居候しながら恭也の世話を始めることとなる薫

 

 

 

耕介は、自分のせいで恭也を壊したと自責の念に囚われることとなるが、十年近くのときを経て、さざなみ寮の暖かい支えにより何とか立ち直ることとなる

 

 

しかし、神咲家は恭也崩壊後から数年後・・・・一族の払いきれない怨霊により崩壊

一部の人間を残して滅亡してしまった

 

 

これを聞いたとき薫は、涙を流さなかったという

恭也を奪われた所為か

それとも余りの悲しさからか

それは、彼女のみが知ることである

 

 

 

どことなく活気の無くなってしまった高町家

 

 

そんな中、恭也だけが幼子のように表情を変えながら楽しそうに遊び続けるのである・・・

 

 

「恭也くん、そろそろ家のなかに入って・・・」

 

 

「まだまだ、遊びたいんですけど〜〜〜薫おねーさん」

 

 

「そんなことを言ってもダメだよ、桃子さんが心配するからね」

 

 

「う〜〜ん、分かりました。帰りましょう、薫おねーさん」

 

 

にっこりと微笑みながら薫に返す恭也

 

 

そんな恭也の手をそっと握り帰路に着く薫

 

 

二人の見た目が大人なのにまるで親子に見える二人

 

 

そんな、日々を過ごすこととなるのであった