『吏凡』

午前10時
洗い物などを済ませた士郎はひとり居間でぼーっとしていた
そこへ仕事で寝るのが遅かった同居人の凜が起きてきた

「おはよ・・・」

「ああ、おはよう遠さ・・・か?」

相変わらず朝、というか寝起きに弱い凛に苦笑しながら振り返った士郎は、それが凜だと分からなかった
いや、分かっているのだが、まったく違う人物に見えた

「んく、んく・・・」

冷蔵庫から牛乳を出していつものように飲んでいる凛の、長い黒髪が揺れる

「あれ? お前、いつものリボンどうしたんだ?」

士郎の何気ない疑問にビクッと凛の肩が震える
凜の艶やかな黒髪はいつものツインテールではなく、ストレートにおろされていた

「おい、どうしたんだ? この世の終わりみたいな顔だぞ?」

士郎の言葉通り、凛は絶望に打ちひしがれたかのような顔をして今にも泣き出しそうだ

「・・・何でもない」

「なんでさ。何でもないならそんな顔しないはずだろ」

腰を下ろした凜の肩を恐る恐る抱き寄せた士郎は、拒絶がないことに安心して言葉を紡いだ

「言いたくないなら無理して言わなくてもいい。でも、俺にできることがあるなら言ってくれ。相談に乗る位はできるから」

「うん、ありがと」

いつになく素直に礼の言葉が凜の口から漏れた
そして凜は士郎の胸に顔をうずめてゆっくりと語る


曰く

「もともとね、そろそろ限界だったの」

「昔から使ってたお気に入りのリボンだったの」

「士郎と、みんなと一緒に聖杯戦争を戦ったリボンなの」

主だった部分はこのような内容で、あとは士郎にはよく聞こえなかった
ただ、それが凜にとって愛着もあり、掛け替えの無いものだったのは士郎にもよく理解できた

「そっか、いろんな思い出とかが詰まってたんだな」

「うん。だからちょっと悲しくて。もう少しだけ胸貸してね」

「ああ、いくらでも貸してやる。思う存分使ってくれ。だから、それが終わったらいつもの元気な遠坂に戻ってくれな」
士郎はぐずる凜の頭を優しく撫でた

「うん・・・えへへ、ごめんね。それとありがと。ちょっとくすぐったいけど嬉しい」

士郎からは凛の顔は見えないが、髪の透き間から覗く耳は真っ赤に染まっていた

「いいよ、別に。その、俺も遠坂に頼られて嬉しいから」

空いている手でぽりぽりと頬を掻く

「ほら、俺ってさ、まだぜんぜん半人前で頼りにならないからさ」

「そんなことない。確かにまだまだ半人前のへっぽこ魔術師だけど、わたしは頼りにしてるわよ」

こつん、と士郎の胸を軽く小突いて士郎から少しだけ離れる凜

「そう言ってもらえると嬉しい」

改めて髪を下ろしてる凜の姿をまじまじと見る

「な、何よ」

「うん、こうやって髪を下ろしてる遠坂もいいなって」

「な、いきなり何てこと言うのよばか!」

真っ赤になって喚く凜

「なんでさ。ツインテールは可愛いと思うし、良く似合ってたけど、ストレートに下ろしてるのも似合うじゃんか」

そう至極真面目に答える士郎の目が嘘を言っていないことに気付いた凜はますます赤くなっていく

「そ、そうかな? ありがと士郎」

凜は顔を隠すように、ぽす、と再び士郎の胸に体を預ける

「ね、士郎。士郎はツインテールとこれとどっちがいい?」

「んー・・・」

凜の言葉に真剣に悩み出す士郎

「どっちでもいいよ。結局のところ俺が好きなのは遠坂だし。遠坂がツインテールがいいって言うならプレゼントさせてもらうけど?」

悩んで出てきた自分の言葉で凜と同じくらい赤面してしまう士郎
その顔を凜に見られるのが恥ずかしくて、士郎は凜の頭を少し強く抱いて顔を上げられないようにした
が、言われた凜も直球な士郎の言葉に沸騰寸前だったため、顔を上げようとすることができなかった

「・・・・・・」

「・・・・・・」

しばらくそのまま無言の時が過ぎて行く

「そ、そうだ。遠坂、今から見に行くか?」

「へ? な、何を?」

ちょっと上ずってしまった士郎の声だが、同じくらいテンパっている凜は何とも思わなかったようだ

「新しいリボン。俺にプレゼントさせてくれ。ほら、無い物ねだりはできないけど、あれば着ける着けないが選べるだろ」

凜を、というより自分を納得させるように頷く士郎

「それじゃ、プレゼントしてもらう。だからちゃんと士郎が選んでね?」

そんな士郎の心情を察した凜はとても嬉しそうににっこりと笑って士郎に抱きついた




後に書くから後書き
というわけで、須木 透です。
凛嬢応援SSの第二弾、いかがでしょうか?
ちなみにタイトルは『りぼん』と読むんですよ。
の割にはあまりりぼんに焦点がいってませんです、はい。
感想、誹謗中傷、何でもお待ちしています。

魔術師の戯言

あま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いSSですね
プリンに砂糖と蜂蜜をまぶしてガムシロップと生クリームで和えた位甘い!!
いや、私甘いの好きですよ、少女漫画も読みますから
リボンも読んだなぁ・・・

いや、私が自分で甘いの書くと悶えて床を転げまわるんですが、須木さんはどうなんでしょう?

しかし、やっぱり日頃の凛と照れてる凛のギャップっていいですねぇ

感想送りまくりましょう
甘いの書いたあとは皆さんの愛が必要です・・・少なくとも私は
拍手の場合『須木さん』と銘記よろしく