それは、許すとか、赦さないとか




それは、許すとか、赦さないとか、そんな問題の話じゃなかった。

――――紅い髪。

紅赤朱一歩手前の遠野家の長女にして我が義妹。

遠野秋葉は間違いなく嫉妬に狂っている。

それとも、秋葉の奴は気付いているのか、いないのか。

気付いているのなら、これは演技なのか、本心なのか。

多分――両方なのだろう。


七夜の衝動に負けかけた自分。

それは紛れもなく本心で、しかしそうなる事自体が台本どおり。

――――八年前の窓の少女。

彼女の、台本どおり。

いつも窓から俺を見ていた彼女、琥珀さん。

身体を貫いた、秋葉の檻髪。

許せるとか、赦せないとかの問題はとうに過ぎていて、

それはルビコンの対岸のような距離。

決して戻れない、離れすぎた間。

それは終着駅の無い、どこまでも続く線路。

ただ、その世界は丸くなく、永遠は永延に続く。

今更戻ることは出来ず、今更止まる事もできない。

真夜中の校舎で繰り広げられた死闘。

溢れ出す狂気と、一人の骸(むくろ)。

即ち、殺すか、殺されるかの瀬戸際。




秋葉が死ぬか、俺が死ぬか。

それとも、二人とも死ぬか。

そこに二人とも助かるという選択肢は無く、死んだ琥珀さんが生き返る可能性も待たない。

それが自らを人形と定め、行動し、自我の崩壊に行き着いた彼女の導く一つの答えだから。

遠野の家を滅ぼすのが、最も自分の考えに正しいと想像し、妄信的にこなしてきていたのだから。

正直、死ぬのは、怖い。

一度、死にかけたから。

八年前に経験したから。

そして、いつでも人が死ぬ事を知ってしまったから。

いつでもどこでも眼鏡を外せば全ての死が視える。

だからこそ、俺は死ぬことが怖い。

だけど――――惜しくはない。

「兄さんは馬鹿ね」

「お前も相当なもんだ」

片腕と、片足を犠牲にして、点に添えられた七つ夜。

痛みはきっと無く、切断面はとっても綺麗。

そもそも、魔の血に濃くなった秋葉に、死んだ後肉体が残るわけも無く。

それが無性に、哀しくて、悔しかった。

――――人は死して、墓に名を刻む。

そんな言葉を聞いたことがある。

結局、死は絶対に訪れると言う事で、要は早いか、遅いかの違い。

そして分かってる事が一つ。

俺は今死ななくても、きっと――――早い。

だったら――――――――

「秋葉。目を瞑ってくれないか」

「にい、さん?」

「いいから」

こいつは、こんな俺を愛していると言ってくれた。

こいつは、こんな俺を八年前に救ってくれた。

そしてこいつは、俺の代わりに自分で死のうとしている。

それがいとおしい。それが狂おしい。

そして何より赦せない。

こいつを殺してまで、少し生きながらえる事なんて意味が無い。

言った通り目を瞑った秋葉の顔がそこにある。

死ぬ前の、ほんの少しの罪滅ぼし。

『点』に添えていた七つ夜を外し、自分の点に向けておく。

顔と顔が、唇と唇が近づく。

そして――――――――





チュッ、という触れ合う音。

見開いた秋葉の瞳を見て、僅かに俺の顔が紅潮し、白い粉が廊下を舞った。

――――白い粉?

何故そん、なも、の、が、、、、、、、。


「あはー。志貴さん、二股はいけませんよ」

薄れゆく意識の中、遠く、遠く、何故か琥珀さんの声が聞こえた気がした。































それは、許されるとか、赦されないとか、そんな問題の話じゃなかった。

右手にはピンクの薬が入った注射器。

左手には翡翠印のメシ大盛の大皿(宴会用五人前)

そして自白剤と興奮剤が打たれてヤク中みたいな注射痕のある俺の右腕。

隣の牢獄では、Eカップブラが目の前につるされて精神崩壊しかかってる秋葉の姿。

パパン、ママン。

オイラ、もう駄目かもしんない。


「志貴さーん? 何をボーとしているんですか?」

「は、はい琥珀様。どうか命だけは、どうか、どうかっ?!」

「あはー、そんな事する分けないじゃないですか。第一殺したらそれで終わりだし」

「えっ?」

「何でもないですよー」


何を言っていたのか、聞きたかったような、聞いてしまうと後戻りできそうに無い予感とか、とにかく正常な精神ではいれそうに無い。


いつもと変わりないはずの笑顔が恐ろしい。

そもそも、拘束具で手首を一括りにされていること自体、いい加減辛すぎるというものだ。

俺は哀れを請うような視線を向ける。

琥珀さんの笑顔が――――変わった。

ジュルリ、と口に溢れ出していく粘り気のきつい唾液を飲み干し、好色そうな視線を向ける。

瞳は既に濁っており、肌からはかすかに甘い匂いが漂ってきた。

これは 、、、ヤバイ。

これはヤバイ。

とてもヤバイ。

ニゲロ、ニゲロ、と心が叫びをあげるというのに、足に付けられた鉄球の重りと拘束具がそれを許してはくれない。

「こ、琥珀さん? あのね、こうやって動きを封じた捕虜にそういう事をするのは、国際問題にもなるようにいけない事なんですよ。分かってます?」

「んふふー。勿論分かってますよ。
鉄は熱いうちに打て。男は若いうちに喰えって言うんでしょ? 
分かってます。分かってますから安心して下さい」

「わ、分かってないっ、絶対に分かってないってばっっ!!
ちょっ、いや、だめ、あ、ああ――――!! ………………あふんっ
あ、秋葉!! 秋葉助けてくれ。兄の貞操を!!」

最後の手だった。

最悪、先日の二の舞になる可能性だってあった。

そもそも、秋葉が琥珀の手伝いをするという考えも捨てきれなかった。

だが、最後の最後に諦めて何が男か!! 立てよ国民!!

「秋葉―――――――――!!」 

「にいさー―――――――――――――――――んっ!!」

秋葉は現れた。

紅く髪を染め、茫然自失だった精神を持ち直し、吸血種としての能力を駆使して鉄格子を曲げ、俺の前に姿を現した。

嬉しかった。

ただただひたすらに、喜びだけがあった。

そして遥かにそれを上回る――――――――






















絶望だけがあった。






「琥珀っ、兄さんは私の「物」です。断じてあなたの物じゃないわ。
だけど…………今日は一緒に楽しみましょう?」

「それも良いですね。了解しました。でも、志貴さんを譲るつもりはありませんよ」

「ふふふふふ……」

「フフフフフ……」

両者ただならぬ笑みを浮かべ火花を散らす。

正に、一触即発。

翡翠、

いや。 

誰か、

誰でも良いから、

とにかく、

こいつらから助けてくれ――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!









次回は何とG・Wによる2時間スペシャル!!

翡翠の「あなたを犯人です」、ななことノエルの「ザ・ニンジンクッキングと聖典の改造の仕方、カレーの匂いがあればいつでもどこでも私はドーピング!!」

秋葉の「豊乳計画・目指せCカ――――――――プッッッッ!! これで後輩にも負けてないわ!!」 の三本をお送りいたします(嘘)


魔術師からの御礼の言葉


chaosさん、SSどうもありがとうございます!
おかしいなぁ?
確か美由希のSSもらえるはずだったのに・・・

いや、何はともあれ、chaosさんが本格的に月姫はまってくれて良かった良かった

ちなみに秋葉は貧乳だからいいんですよ!
Cカーーーーップの秋葉ちゃんなんて秋葉ではないのです
いや、私貧乳好きではないですよ、むしろ巨乳好き

秋葉様だけが特別なのです!

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