その腕は銀でてきている。

血潮は水銀、心は硝子

  民の為、幾度となく戦場を駈け抜け、いまだ無敗

  不敗の剣を持ち、常に負けることなし

  それ故に孤高にあり、孤独

  帰る事なき者を勝利の丘で待ち続ける。

  その心はきっと寂しく光る銀になっていた。



「I Wish」前編


  「問いましょう、あなたが私の主ですか?」
 月光が差し込む土蔵の中、俺はある人に出会った。
 イリヤのような綺麗なプラチナブロンド、綺麗な青を宿した瞳に銀でできた戦装束。
 そして銀の篭手、それはセイバーと初めて出会った時を思い出してしまう幻想的な風景。
 俺はただそれを見ているしかなかった。


 衛宮家 士郎の部屋


「・・・夢か」
そんな酷く現実的な夢を見て、俺は目を覚ました。
セイバーが自分の時代に戻って数ヶ月が過ぎた。
すでに季節は春、そして俺は3年目の高校生生活が始まろうとしていた。
「シロウ、朝よ〜」
そう言ってイリヤが入ってきた。
そりゃもう、俺の布団にルパンダイブするような勢いで布団に突っ込んでくる。
ソレを俺は何とか受け止めて、朝の挨拶をイリヤにした。
「おはようイリヤ」
「うん、おはようシロウ、ご飯をサクラが作って待ってるわ。だから速く起きないと」
「ああ、そうだなイリヤ」
「そうよ、それに早くしないとタイガがシロウの分食べちゃうわよ?」
たしかにそれは困る。
「そうだな、急ごうか」
「うん」


 衛宮家 食卓


「おはようございます。先輩」
「ああ、おはよう桜」
そして食卓には何時ものようにおいしそうな匂いを漂わせた和食が用意されていた。
「悪い、少し寝過ごした」
「別にいいですよ。先輩はいつも働きすぎなんですから、少しぐらい寝過ごしたって」
「そうよ。シロウはこの頃その傾向が強いんだから、少しぐらい骨休めしないとダメよ?」
「イリヤ・・・」
「で、先輩今日から春休みですよね?」
「ああ、そうだな」
「あ・・・あの良かったら先輩、お花見に行きません?」
「花見?」
「オハナミ?・・・それなに?」
「そうだな・・・桜って花があるのは知ってるよな?イリヤ」
「ええ、知ってるわよ?」
「その桜を見ながらパーティするんだ」
「ふーん、なんだか楽しそうね?リンも呼ぶの?」
「まぁ、予定が空いてればなんだけど・・・」
「その必要はないわよ。衛宮君」
「そうなのか?」
「ええ、だって私と桜がこれ企画したのよ?イベントの企画者が参加しないなんて心の贅肉よ」
そう言って遠坂は桜が淹れた緑茶をずずーと啜った。
ん・・・まて?
さっきまで遠坂はいたのか?
いなかった筈だ。
「・・・って!遠坂何時の間に!!」
「そんな事はどうでもいいわ、でどうするの?参加しない分けないわよね?」
遠坂は俺に微笑んで尋ねてきた。
・・・謀られた。
むしろそう思うしかない。 
このあかいあくまと・・・桜に。
ちなみに現在の状況からして俺には勝ち目はない。
「・・・参加させていただきます」
「そうこなくちゃ、あ藤村先生には連絡済だから」
「謀ったな・・・遠坂!!」
「あなたのうかつさがいけないのよ。衛宮君」
「で、今回は料理の関係上、夜桜見物になるから、それまでゆっくりしてなさい」
「へ〜い」


 そして数時間後・・・


 「「「「「「乾杯〜!」」」」」」
そして、そんなこんなで俺は遠坂と桜に挟まれ、俺の手には日本酒が並々と注がれたコップを
持たされていた。
「・・・遠坂これ酒だよな?」
「そうよ?」
あかいあくまはソレを呑みながらきっぱりと答えた。
「俺たち未成年だよな?」
「気にしなくていいの今回は無礼講よ♪」
いや・・・遠坂は気にしなくてもいいだろうが、他の人間は・・・
一応は教師してる藤ねぇは・・・
ダメだ便りにならねぇ、酒呑んで寝てやがる。
イリヤと桜は・・・甘酒飲んで楽しんでる。
「という事よ。花見の席で酒呑まないのは心の贅肉、いいからのめ!」
「いや・・・遠坂出来上がってないか?」
「なにぃってんの〜衛宮く〜ん?」
だめだ・・・このあかいあくまめ、呑んで出来上がってやがる。
「あ〜悪いトイレ行って来る」
そう言って俺は軽く日本酒を飲み干した後、みんなの所から去った。


 桜並木


 「ふぅ・・・」
俺は一息ついて、桜にもたれかかった。
夜空には月が出ていて、それをバックに桜が綺麗に自らの生を表現していた。
とても美しく・・・そして儚い。
それはまるで、
あの少女との別れを思い出させるような儚さ・・・
「何を言っているんだ俺は・・・」
そう、セイバーは自分の時代に帰った。
あれは仕方のない事だ。
だから、俺の隣にいる訳がない。
そう納得させるしかなかった。
だから、俺は笑顔で見送ったはずなのに・・・

どうしてこうまでも悲しく、胸を締め付けるのだろうか?

「・・・何弱気になってるんだよ。しっかりしろ」
ぱんと自分の頬を両手で叩き、気を引き締めて戻ろうとした時だった。

 キィィン と微かな耳鳴りがして、そして何時の間にか聞こえなくなった人の喧騒・・・

(・・・何時の間に人払いが?)
即座に俺は頭のスイッチを入れて、落ちていた缶ビールの缶を剣に強化した。
そして魔術で視覚聴覚を強化して、辺りを探る。
奥のほうで剣が何かを切り裂く音が聞こえた。
「こっちか・・・」
そう言って俺がそこへ向かおうとしたと同時に激しい爆発音と閃光が向かおうとした場所から
広がった。


 閃光が起きた場所


 そして俺がその場所に着いて目にしたのは・・・
「ふっ、流石に一撃は耐えたか」
「くっ・・・」
細長い・・・バスターソードと言うには細すぎる剣を持った男とあの夢で見た女性が対峙してい
た。
女性は酷く傷つき、あの綺麗なストレートのプラチナブロンドも乱れ、立っているのが精一杯に
見えた。
「さすがは俺を追い落とした女だ。そうでなければやりがいがない」
「私は・・・まだ折れていていない」
「なるほど・・・確かに戦う気迫は十分!傷もクラウ=ソナスで直に癒える。確かに・・・まだ折れ
るには早すぎるな」
そう言って男は剣を構えて女性に斬りかかった。
その斬撃を女性は篭手で受け流し、左手一本でグレートソードで横に薙ぎ払うが、男はそれを
いとも容易く後退して避ける。
で、出鱈目だ。
いつか見たあの戦いよりも出鱈目だ。
何より、グレートソードでセイバーに近い速度で攻撃を仕掛けるなんて・・・
そしてそれをいとも容易く避ける。
まちがいない・・・彼らはサーヴァントだ。
それも、セイバークラスの
「ふむ・・・流石は銀碗のヌァサと言った所か、満身創痍においてもその剣速、少々肝が冷え
た」
「貴方こそ相変わらず飄々としているわね。ブレス」
「なに・・・真実を言ったまでだ」
「貴方はいつもそうね?あの時だってそうだった」
「まぁ・・・それが性分でな、さて無駄話はここまでにしよう」
そう言って男、ブレスは細長い剣を突きのポーズで構え、その剣に魔力を込めだした。
それと同時に女性、ヌァサも銀のグレートソードに魔力を込めだす。
二人が同じタイミング、同格の魔力、そして同じタイミングで真名を唱えた。

「アン(全てを貫く)」
「クラウ(不敗の)」

銀の魔力と黒の魔力が交互に集まり、その周囲を薙ぎ払い。
お互いの魔力があたりに吹き荒れる。
そして、その魔力が激突した!

「スエラー(剣)!!」
「ソナス(剣)!!」

ヌァサの刀身からは幾つもの魔力の光が迸り、それぞれが意思を持つかのようにブレスを追
尾し、補足し、ブレスを追い詰める。
「ちっ!流石は・・・ヌァサだ。だが!」
ブレスは冷や汗をかきながらも余裕の表情を崩していない、
それを証明するように黒い閃光は確実にヌァサを貫こうとしていた。
「まさか・・・」
彼女はブレスと相討ちなろうとしているのだろうか?
自らを引き換えに、ブレスと言うサーヴァントを討ち取ろうとしているのか?
無茶だ無茶すぎる!
そんな事をしたらどうなるか分かりきっているはずなのに・・・
その時、脳裏にあの光景が蘇った。


セイバーが血まみれになって尚まだ立ち上がろうとしているあの光景を・・・


ドクンと心臓がなった。思考が冷静になり、その速度が異常回転し始める。
回路を完全に把握し、自分の魔力ですら完全に計算が可能になり、俺は即座にアレを投影す
る為の演算を始めた。
かつて自分が言ったあの言葉を撃鉄として・・・
「あんな光景・・・二度と御免だ!!」


カチリと撃鉄が落ちた。


「投影・・・開始!」
そう言いながら俺はヌァサの前に立ち、あの鞘を想像した。
外界を寄せ付けぬ妖精郷の壁、この世とは隔離された。たどり着けない理想郷、
この世界最強の守り。


その名 全て遠き理想郷


鞘が展開され、あの黒い閃光を遮断できると思った。
「なるほど・・・全て遠き理想郷か、確かに最強の防御用宝具ではある。だが・・・このような言
葉もあったな」


「矛盾と言う言葉がな」


ミシリ

鞘に一点からヒビが走り、ゆっくりと黒い閃光が鞘を貫いていく
「な・・・嘘だろ」
その言葉と同時に鞘は砕け、俺の身体を貫こうとしていた。
「やらせない・・・」
「え?」
「この人だけは絶対・・・殺させない!」
その瞬間俺の目の前に銀色の髪が舞っていた。
そして、剣が肉を貫く音が俺の耳に確かに入ってきた。


グシャリ


「え・・・」
そして、俺を庇ったヌァサはセイバーの時と同じように大怪我を負ってその場で倒れた。
だが、必死に立ち上がり、敵が前にいるのにもかかわらず俺のほうを見て
「よかった。貴方は無事なのですね。シロウ」
ヌァサは俺の頬を優しく右手で撫でると、そのまま意識を失い、倒れた。
「その青年の為に私を討ち損ねたか、まぁ・・・必然と言えば必然だが、興醒めだ。青年」
「なんだ」
「その女を丁重に看護してやれ、その女はお前の為にここにいるような物だからな」
「どういう事だそれは?」
「そこまで教えてやる義理は無い」
そう言ってブレスは消えていった。
残されたのは傷ついた銀の騎士、そして魔力で吹き飛ばされた桜の花びらだけ・・・
その時俺は気づいてしまった。
聖杯戦争はまだ終わっていない事を・・・

季節は春
誰かが言っていた。
春は出会いの季節だと・・・
そして俺も銀の騎士に出逢った。
自分の何かが変わるかもしれないという予感を抱きつつ


 続く


 タイガー道場@しるばーあーむないと

藤ねえ「というわけで、始まりましたタイガー道場@しるばーあーむないと」
イリヤ「師匠質問があります!」
藤ねえ「なんですか?」
イリヤ「@しるばーあーむないとってなんでしょうか?」
藤ねえ「文字通り、そう読むって言う冗談は置いといて、今回の副題みたいなもの?」
イリヤ「まぁ、確かに直訳すると銀腕の騎士だし」
藤ねえ「今回の疑問点はそんなところ?」
イリヤ「いえ、それだけじゃ・・・」
藤ねえ「ほれ、それはこっちを見ること」

サーヴァントの情報及び武器情報が更新されました。

イリヤ「あ・・・なるほど」
藤ねえ「というわけで、今回のタイガー道場はここまで」
イリヤ「あ、スタンプも押しときますね♪」


 後書き
と言う事で始めましてCzです。(なにがだ)
まぁ今回のネタはケルト神話の英霊が沢山出てきます。(むしろそれしかいないという)
あと・・・ブレスはこんなにかっこいい人じゃないです。
次回は日常編になるのかな・・・?
してみたいけど、あとタイガー道場の告知どおりアレを書いておきます。


 クラス    セイバー
 真名     ヌァサ・アガートラム
 マスター   不明
 性別     女性
 身長・体重 169/秘密
 
 筋力 B(A) 魔力 B(A)
 耐久 B(A) 幸運 A(EX)
 敏捷 C(B) 宝具 C

 クラス別能力
 対魔力:A
 騎乗 :B

 技能

 直感:B
  セイバー(アルトリア)程ではないが、かなりのレベルで自分にとって最適な展開を感じ取る
  事ができる。

 弱点属性:竜+1
  竜の因子を持つ全てに対する判定を行う際に自身の能力のランクを1下げる。
  逆に竜の因子を持っていないものに対しては逆に+1ランクとして判定を行う事ができる。
  まさに竜によって殺されたヌァサらしい技能といえよう。

 義手:右腕
  右腕が存在せず、義手によって補っている。
  ヌァサの場合義手が神霊が作り出したものなので以前の腕より高性能と言えよう。

 魔力転化:B
  魔力を筋力や敏捷力に転化する技能、コレは武具にも行う事ができ、
  魔力によって強化された武具は従来の性能を超える物になる。

 制作:B(銀製のみ)
  銀を使った実戦的な装飾品を作り出すことができる。
  そして、それなりに美術的価値も高い。

 幸運:EX
  異常なほど運がいい。もはや魔法の域である。
  緑茶を飲むときには必ず茶柱がたち、おみくじは必ず大吉になる。
  勿論宝くじ、懸賞は確実に当たる。

 カリスマ:C
  指揮下の者に有利な修正を与える。
  1国の主としては少し物足りないが、十分なカリスマだといえよう

 宝具

 不敗の剣(クラウ・ソナス)
  ランク:EX
  種別 :対人用宝具
  レンジ:1〜9999
  対象 :999
 解説
  多人数用の攻撃宝具、大量の敵を捕捉し複数の魔力による攻撃を行う。
  この補足効果は一つの対象に複数割り振る事が可能で、
  そうする事によって1対象に与えるダメージを加速度的に増加させる事ができる。
  ダメージの基本はSTRが基本となるがランダムでAGIの修正も加わる。

 デュアン・ケヒトの銀腕
  ランク:B
  種別 :汎用宝具
  レンジ:1
  対象 :1
 解説
  医療神デュアン・ケヒトが作り出した銀製の義手、使用者のイメージどおりに形を変更し、
  防御、攻撃、患部の排除などが行う事ができる。
  防御宝具と使用した場合、装甲値はDEF×MAGとなり、ACは現在のAC×DEFとなる。

 詳細
  ケルト神話に登場するダーナの王、銀腕のヌァサという異名を持っていた。
  ちなみにヌァサとは「幸運をもたらす者」の意である。
  フィモール族との戦闘で腕を失い。その事から王位を奪われるがデュアン・ケヒトらの助け 
  により王位に返り咲く。
  その後、ルーに王位を譲りフェモール族との最終決戦でバロールが召喚した竜、クロウ・ク
  ルームワッハに殺される。
 
 
 クラス   ???
 真名    ブレス
 マスター  不明
 性別   男性
 身長・体重 175/75kg
 
 筋力 A   魔力 A
 耐久 A   幸運 B
 敏捷 B   宝具 −

 クラス別能力
 強奪:B 
     サーヴァントから宝具を奪い取る技能、その宝具をそれなりに使いこなす事ができる。

 技能

 直感:B
  セイバー(アルトリア)程ではないが、かなりのレベルで自分にとって最適な展開を感じ取る
  事ができる。

 魔力転化:A
  魔力を筋力や敏捷力に転化する技能、コレは武具にも行う事ができ、
  魔力によって強化された武具は従来の性能を超える物になる。
  彼にとっては小枝でさえ魔剣に等しい力を与える事ができる。

 宝具

 全てを貫く剣(アン・スエラー)
  ランク:EX
  種別 :対人用宝具
  レンジ:1〜99
  対象 :1
 解説
  対人用の攻撃宝具、あらゆる防御効果を無視して対象にダメージを与える事ができる。
  だが、ゲイ・ボルクのように必殺の宝具ではなく、回避や防御(もっとも防御は意味がない 
  が)を行う事ができ、非情に使いづらい宝具になっている。
  ダメージの基本はSTRが基本となるがランダムでAGIの修正も加わる。
  ダメージ判定が行われる場合装甲値を無効とし、その判定に使用した防御効果を全て無 
  効とする。(魔法も含む)

 詳細
  ケルト神話に登場するダーナの暴君、フェモールとの混血であり、ブリジットの夫である。
  フィモール族との戦闘で腕を失い。その事から王位をヌァサから奪う。
  後にヌァサに追放され、フェモール族に下る。



 武器

  クラウ・ソナス 使用者 ヌァサ・アガートラム
   ケルト四大秘宝の1つで、銀製の150cmはある銀製のグレートソード
   抜いたら最後どんな敵でも追い詰める魔剣だが、この魔剣の恐ろしい所はそこにあるの
   ではない。使用者が怪我を負った場合、大気の魔力を収集してそれを治癒力にし、使用
   者を癒す能力がある。無論魔力自体も補給可能であり、サーヴァントがこれを使用した場
   合長期間の戦闘や宝具の連続使用を可能にする。
   そう言う意味では武器より回復用の宝具と見たほうが正しいかもしれない。
   ちなみに残りの4大秘宝はブリューナク・ダクダの大釜(聖杯相当)・アン・スエラーであ  
   る。

  アン・スエラー 使用者 ブレス??
   異常なほど細長いバスターソード、バスターソードと言うより、もはや大型のエストックやレ
   イピアに近い。その形状から突きに特化した戦闘を求められる。
   あらゆる防御効果を無効にする。

戯言

Czさんから、FateSSいただきました
本人談によると、どうやらケルト神話中心のようです
ちなみに、私はあまり詳しくないのです(ヲ
どうやら、世代的にはランサー(クーホーリン)の一個前の世代の英雄達です
最後のブレスの言う、ヌァサとッ士郎の関係とは何でしょう?
はてさて、読んだら感想を!
いつもどおり拍手の場合『Czさん』と、銘記してくださいね