世界から断絶したかと思うほどの静謐。
ここは、丘の上に立つ荘厳な教会の聖堂。
顔を上げれば世界の全ての罪悪を背負った聖人が、救いを求める哀れな子羊を見下ろしている。
ここは教会、人々が救いや心の安寧を求めて集う場所。
しかし、そんな物はここにはない。
あるのは、圧倒的な圧迫感と息苦しい程の威圧感。
目の前の男、言峰綺麗と名乗った神父の口から紡がれる言葉は安息ではなく絶望。
語られるのは愛ではなく憎悪。
すでに、聖杯戦争に参加の意思は明示した。
ならば、もう、こんな胸糞悪い場所に居る必要はない。
迷うことなど少しもない。
衛宮士郎には許せない。
こんな、罪もない人々を巻き込むような災厄を見過ごすことなどできない。
何故なら、何故なら衛宮士郎が目指している者は――――――――
「喜べ少年」
何もかも見透かしたような目。
そう、正義の味方を目指すならば必要な物がある。
正義と相反する物。
正義が存在するために相対的に必要になる物。
悪。
それも、完全な悪。
これがなければ正義など存在しない。
それは、正義の味方になることを望む衛宮士郎こそが最も欲していたかも知れない。
きっと、奴はそう言いたいのだろう。
ふざけてる。
己が正義となるために最も悪を望んでいるのもまた衛宮士郎である、だと?
ふざけてる
ふざけてる
ふざけてる
フザケテル
そんな衛宮士郎の葛藤を見透かしたように神父は言葉をさらに紡いだ。
「君の願いは、ようやく叶う。
デスマスク×アフロディーテのカップリングは最高だ」
「それは、お前の望みだぁぁぁぁ!!!」
「お前達が幸せと感じるものを、私は幸せと感じられなかった」
「そりゃ、一般受けしない組み合わせだよ!
「っていうか、あんたの趣味が悪いだけだから!!」
白羊宮編
「ずいぶん遅かったな」
「ああ、火時計だったら巨蟹宮あたりまで消えてるだろう」
「いや、そんなわかりづらい例えされても・・・」
「っていうか、あんた達怪我してるじゃない・・・。まさか、闘ってたわけじゃないわよね?」
暗くてわかりづらかったが、言われてみれば、二人とも額や腕から壮絶に血を流している。
「いや、あんまり暇だから罰ゲームのしっぺ、でこピン、ババチョップ付きでじゃんけんしていた」
「・・・はぁ?」
いい歳こいて何やってるんだ?
・・・ああ、そういえばアイオロスはとても見えないが、俺たちより年下だった。
「って、アーチャーあんた右腕無いじゃない!!」
「すまん、ババチョップの際、思わずエクスカリバーを・・・」
「じゃんけんの罰ゲームで宝具を発動すんな!!」
「いや、凛そんなに怒らないでやってくれ」
右腕が千切れかかってるのに爽やかに苦笑されても・・・
「むきになったのはオレも同じなんだ。
実は、シュラも両手首が粉砕骨折してるし。」
「遊びで戦闘不能になるなぁ!!!!!!」
遠坂の痛烈で最もな一撃で吹っ飛ぶ二人の英霊達。
『・・・遠坂、怒りでセブンセンシズにでも目覚めたんじゃないか』
「しかし、参った」
「何がよ?」
「この後出てくるバーサーカーにどう対抗しよう?」
「うろたえるな小僧ども!!」
今度は士郎までぶっ飛ばされる。
ズシャァ・・・
頭からコンクリにこんにちわ。
車田ぶっ飛びは楽じゃない。
「あんた、何うろたえてネタばれしてるのよ!!?」
「そんな事いったら遠坂だってギルガメッシュって・・・」
ギロッ!
「・・・なんでもないです」
遠坂、セブンセンシズどころか、今すぐ教皇になれそうだ。
怒りの教皇シオン遠坂の後ろからとぼとぼ歩いていく男3人。
「しかし、士郎が言うとおりまずいわね。
この状態でバーサーカーが襲ってくるとさすがにきついわ。
何ていってもこっちは揃って戦闘不能状態ですものね、罰ゲームで」
ふりむいた遠坂の表情は笑顔だった。
怖い。
はっきりいってキレイな笑顔の遠坂程怖い物はない。
まるで、天駆ける黄金の牡羊のように優雅な微笑だ。
「うふふふふ、お兄ちゃん、見つけた」
教会を出てすぐにイリヤが声をかけてくる。
「よかったね、お兄ちゃん、無事にサーヴァント呼び出せたんだ」
無邪気な微笑を向ける白い少女。
「まあ、無事なサーヴァントは呼び出せてないけどな」
どっちも戦闘不能だし。
「じゃあ、死んじゃって。バイバイ」
ゴクリと喉を鳴らす士郎と遠坂。
いったい、バーサーカーは誰なんだろうか。
「やっちゃえ、バーサーカー!!」
「■■■■■■■■!!」
闇の中から咆哮と共に現れたバーサーカー。
やっぱりというべきか、理性を失った状態ではあるがバーサーカーもまた、黄金の鎧を纏っていた。
歴戦の戦士を思わせる鍛え上げられた肉体。
鋭い眼光。
そして、他者を圧するような巨体。
「「「「よし!!!」」」」
派手なガッツポーズをする士郎一行。
「絶対バーサーカーは、幻朧魔皇拳で操られたアイオリアだと思ってたけれど・・・」
「よかったなー、牛で」
「ええ、相手がかませ牛なら半死半生の二人でも間違いないわ」
「ちょっとお兄ちゃん、いくらそんな貧弱なサーヴァントじゃ勝ち目がないからってみっともないわよ」
ポン、とイリヤの肩に手を置く二人。
「何で、二人ともそんな乙女座や獅子座の人が蟹座に向けるような哀れみの視線を向けてくるのよ。
バーサーカーは凄いのよ!何と光の速さで動けるんだから」
「・・・それ、黄金聖闘士なら全員できるんだ」
イリヤの目の前に何かが飛んでくる。
何かと思ったら、アルデバランの角だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
恐らくエクスカリバーで切断されたに違いない。
「随分さっき遅かったけど何かあったのか?」
戦闘中なのにのんびりアイオロスが話しかけてくる。
アルデバラン、完全に舐められすぎ。
イリヤはほんのり泣きそうだ。
「え、さっき言峰教会でね・・・あ、士郎私レモンティーがいい」
とうとう、自販で買った紅茶飲み始めてるし。
「元気出せよイリヤ、ココアでいいか?」
あ、アルデバランがジャンピングストーンで吹っ飛ばされてる。
「うん、お兄ちゃんありがと」
イリヤも何かを悟ってしまったらしい。
「言峰がおかしなこと言ってたから・・・」
「おかしなこと?」
「それは知らないほうが良いわ」
言峰が蟹偏愛だったこと。
それは、士郎も凛も忘れたい記憶以外の何物でもなかった・・・。
魔術師の後書き
えっと、牛ファンの人ごめんなさい。
あと、別の場所でも書いたけどこの作品は基本的にマンガ聖闘士星矢準拠です。
アニメやエピソードGはネタとして触れることはあるかもしれませんが、あくまでネタとしてです。
ですので、アニメやエピソードGだけで出てくる設定や技は突っ込み外でお願いします。
じゃあないとカミュ出した時は「我が師の師は師も同然」理論を考慮しなきゃいけなくなるんで。
あと、今回ちょっと短いです。
まあ、長さは時間とネタの切どころの掛け合いになるんで今後とも目をつぶっていただけると助かります。