俺は今夢を見ている

夢の中で夢だと認識している

それは、普通ならそうそうありえない事だろう

視界に広がるは荒野

あの、惨劇の光景のような、血と、怨嗟と、炎に彩られた荒野ではない


照りつける太陽
乾いた空気
一面に広がる不毛な台地

砂漠とも荒野とも思えるような
―――――そんな、見たこともないような光景が、空から俯瞰するような視界の中一杯に広がっていた


Fateの拳!!〜真相編〜


衛宮士郎の視界の遥か下、ヨロヨロと砂漠を歩く男が見える。
背の高い、がっしりとした体躯の男
それも何処かでみたことがあるような・・・



自然と視線が切り替わる
とうとう大地に倒れ伏した、例の男がアップになる

それで、士郎は気がついた。
自分は、どうやら他の誰かの夢を見ているのだと。
と言うか、自分の知り合いにあんな筋肉質な男はようく考えたら一人しか居ない


「ああ、そうかつまり・・・」


これは、セイバー(仮)の記憶なのだと理解した。


士郎が理解するのを待っていたかのように、まるで、テレビアニメのように、途中で主題歌がはじまり、ナレーションが入る
・・・・・・・・・・・・・これ、夢じゃなくて、ただのアニメじゃないよな?





―――――199X年、地球は核の炎に包まれた



「ああそうか、だから荒野なのか・・・って、嘘付け!!
今、確か200X年だぞ、そんな事実ないし」


自分の頭に響く謎のナレーションは、そんなツッコミにかまうことなく、何故か前回までのあらすじを語っているし・・・


とにかく、士郎が見守る中で、セイバー(仮)は、ただひたすら闘い続けた

次々と現れる、セイバー(仮)に負けず劣らず、暑苦しい筋肉質な男達。
その誰もが、なんかバーサーカーが相手でも、あっさり倒せるんじゃないか、と疑問に思うほど異常な武術を使っていた。


そんな男達を相手にセイバー(仮)は闘い続けた

幾度も致命傷に近いようなダメージを受けても彼は立ち上がった

ある時は、かつての友人を倒すために
ある時は、子供を護るために
ある時は、誰かを救うために

傷つき疲れ果てても休むことはなく、男は荒野を流離い続けた

やがて、こいつは最後には救世主と呼ばれる様になった






とりあえず、一つわかったことがある
・・・・・・・・・こいつ、一回も剣使ってねぇ!!
絶対にセイバーじゃねぇ!!



そもそも、こいつ本当に英霊か?


「死ね、くまどり野郎」

「ブタはブタ小屋に行け」

「おい、こいつから殺していいのか?」



その発言は英霊以前に人としてどうかと思う




さらにこいつの技、最低じゃないか?

良く考えると、人間を内部から破壊する拳法って・・・
なかなか無いよな、ここまで残酷な拳法・・・
なんか、他者封印鮮血神殿の方がまだマシだろ!!


そんなのが、俺のサーヴァントかよ




なによりも、俺は、こいつの在り方にひどく腹が立った


だってそうだろう、こいつが闘う理由、それは――――――――――





















「結局、ただの兄弟喧嘩かよ!!」


そうじゃなかったら、ただの女絡みの喧嘩だし


みんな、欲望丸出しだ



















「―――――郎、士郎、大丈夫?」


『何だ・・・?』


遠坂の声が胡乱な頭に響く
その声に導かれるように、重い瞼をゆっくりと開く


眩しい光が目に飛び込んでくる
開け放たれた窓から差し込む光に目を細めた

細めた視界に浮かぶ、士郎の顔を覗き込むシルエット


『まさか、遠坂。ここで夜這いをかけることで、強制的に遠坂ルートに移行する気か』


高鳴る鼓動


『なんて、すばらしいアイディアだ!!』


でも、おかしいな、声が足元から聞こえてくる気がするんだが・・・
嫌な予感がして、瞼を完全に開く


「目を覚ましましたね、シロウ」


えらく濃ゆい顔が、心配げに覗き込んでいた


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ははははは」


なんだ、夢の続きか
と、現実逃避を謀るも、「セイバー(仮)、お目覚めのチューでもしてやって」という、遠坂の声に慌てて飛び起きる


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・嗚呼、なんて爽やかな朝だ」

もう、死兆星が見えるくらい爽やかだ!!



















朝から、心臓が止まりそうになったが、取り合えず居間で遠坂とセイバーと食事後作戦会議に入った。
ちなみに、飯中に藤ねえと桜が訪ねて来たが、セイバーを見た瞬間、最高の笑顔で士郎に微笑みかけた後、無言で家から出て行った。
恐らく係わり合いになるのを避けたに違いない


「あの二人は良いわよね。桜は『HF』に行かなきゃ係わり合いにならないですむし、藤村先生ははじめから係わり合いにならないんだしさ」

愚痴る遠坂、その気持ちは良くわかる
前回の戦いで、アーチャーは傷を負った。
つまり、ほぼ100%『Fate』ルートなのだ。

「だから、遠坂がさっき夜這いをかけてくれたら・・・」

ギロっと、赤いあくまの直死の魔眼が確実に俺を殺すと感じたので黙った。




『―――――今日、未明、新都にてまたも行方不明者が現れました』


現実逃避にTVのニュースに視線をやる


『被害者はいずれも子供ばかりで―――――』




こっちの苦悩も知らずに、暢気に食事をしているセイバー(仮)
やっぱり、あの夢はこいつの夢だよなぁ



「なあ、お前セイバーじゃないだろう?」


ズバッと、突っ込んだ。


「何を言う、私は剣の騎士、セイバー(仮)だ!!」


いや、自分で(仮)とか言うな


「じゃあ、真名言ってみろよ」


「リンが居る前で正体を明かす訳には・・・」


「安心しろ、遠坂は今や運命共同体だ」


「私の正体はアルト・・・」


「私の愛しい『アルトリア』、の名を語ったら許さない」


隣の部屋から、瀕死のアーチャーが息も絶え絶えになりながら這い出してきた

うわーい!いつの間にか、居間が剣の丘になってるし!!

あいつ、死に掛かってるのに、凄い根性だ


「いいか、セイバーこと『私の』アルトリアはな、騎士王と呼ばれるほど、気高く美しいのだ。それでいて、実に照れた顔が可愛い美少女なんだ!!」


今更だけど、アーチャーって、セイバールートを経た衛宮士郎なのか・・・
少しは正体を隠す努力をして欲しい者だ


「そもそも、歴史に名高い英雄達の中でも、飛びぬけた実績を誇る者だけが王という称号を得るのだ!最も強く名高い円卓の騎士を従えた故にアルトリアは『騎士王』、セイバールートのラストでも出てくるギルガメッシュは世界中の英雄の原点である存在ゆえに『英雄王』なんだ」


おいおい、シナリオ的に今の発言はまずいだろ!?
興奮して、ラスボスばらすなよ!


「とにかく私のセイバーたんはな、白く張りのある肌と、未だ未成熟な肢体、Hの時の照れ具合は、普段の凛然さを知っているが故にいっそう萌え効果をUP!!」


ハァハァ、と息を切らせてセイバー萌えを解説する、自身のサーヴァントを軽蔑の視線を送る遠坂

って、俺にまでそんな冷たい視線を送るな!!
俺だって、あんなのが、自分の理想を極めた姿だと思うと、逃避したくなるんだから!!



「何で、ケンシロウがセイバーを名乗ってるんだ?」


まだ、萌えについて語ってるアーチャーは無視


「なんで、私の正体に気がついているのです、シロウ」


あれだけ、北斗百烈拳とか使ってれば、バカでも気がつくだろ


「さあ、伝説の暗殺拳、北斗神拳の使い手が、剣とは全く関係ないケンシロウが何でセイバーなんだ?」


「私は、シロウの剣ですから」


この野郎!まだ、とぼける気か!!
こうなったら、俺も固有結界、発動したろか!!?


「シロウの剣・・・シロウのケン・・・は!!まさか・・・」


「遠坂、何かわかったのか!?


ゴクリと咽喉を鳴らし、震えたまま遠坂が頷いた


「あんた、まさか、シロウのケン・・・つまり、ケンシロウだから・・・とか言わないわよね!?」


コクリと頷くセイバー(仮)改めケンシロウ








つまり。あれか、俺、衛宮士郎は・・・













ただのダジャレでこんな目にあってるのかぁぁぁぁぁ!!!!!!!!?













「アーチャー、あんたしっかりしなさい」


向こうで、アーチャーがあまりのショックに消えかかってる


「しっかりしなさい、アーチャー」


「凛、私はもう限界だ・・・」


「しっかりしてよ、アーチャー」


「凛・・・私を頼む、頼りないヤツだが・・・」


「何、自分だけ逃げようとしてるのよ!!」



あっはっは、阿鼻叫喚だ
今回の聖杯戦争、もう、だめだなぁ




相変わらず、居間のテレビではニュースが流れていた



恐らく続く


後書き


久々の更新です
今回、セイバー(仮)がどうしてセイバーとして召還されたかの真相です
誰もがわからなかった(ヲ)、セイバー(仮)の正体は、なんとケンシロウだったのです!

さて、今回はギャグは少なめ
まあ、真相語るための会ですから、ご容赦を

次回、ライダー(仮)との戦いです
ちなみに、拍手などでいろいろリクエストしてくれる配役ですが、キャスト決まってるんでご容赦ください
いや、私だったら、こいつを当てはめる、見たいのは大好きですから送ってくれるのは嬉しいですが、使ってくれってのは勘弁してください


さて、次回ははっちゃけたギャグを書くぞ!!