《第10話》
高町君…貴方、何者なの?
冷たい眼差しが、そう恭也に問いかけていた。
それに対して応えるべき言葉は恭也にはなかった。
まさか未来からやってきた、とは言えない。
信じてもらえるはずがない。
余計疑いを強くするだけだろう
恭也自身、同じ立場で同じ返答を受けたら、相手を即座に敵とみなすだろう。
皮肉なことだが、真実が最も嘘臭いのだ。
思わず口の端に浮かんだ苦笑
しかし、街灯を背にして立つ恭也の表情は影となり、瞳からは見ることが出来ない。
加えて疑惑の眼差しで恭也を睨む瞳には、その歪んだ口の端は嘲弄にしか見えなかった。
瞳に視線に危険な色が混ざる。
「答えなさい!貴方は何者なの!?」
激しい言葉にも、彫像のように恭也は眉一つ動かさないで佇んでいた。
無限とも思える沈黙
気まずい、何てものではなく、いつ爆発するか分からない一触即発のピリピリとした空気。
恭也にその気がなくても、いづれ瞳が爆発するのはその殺気さえ孕んだ視線で分かる。
「・・・・・・とりあえず御剣さんを起こさないと」
両腕に抱いていたいづみに活を入れて気づかせる。
「・・・あれ?私は」
呆然と定まらぬ視線が宙を泳ぐ。
自分を抱く固い感触
「あれ?」
ようやくはっきりとしはじめた意識
定まった視線の先には、恭也の顔が映る
「高町先輩・・・何で?私、千堂先輩にいつも通り挑戦して・・・あれ?」
「御剣さん、大丈夫ですか?」
「千堂先輩?私、また返り討ちにあって、気絶しちゃったんですか?」
「そのことについては道すがら話します、もう立ち上がれるかしら?」
瞳の言葉に、ようやくいづみは自分が恭也に抱き上げられていることに気がついた。
「あ、あれ?えーっと、高町先輩?とりあえずもう大丈夫ですから下ろしてください」
「まだ頭が痛いとか、吐き気がするとか・・・おかしな所は?」
恭也がそっといづみを下ろして心配そうな顔をする。
大丈夫です、と、トントンと軽く地面を蹴り、自分の状態を確認するいづみ
「良かった、咄嗟の事だったので少し強過ぎたかと心配したのですが」
「え?高町先輩が?千堂先輩じゃなくて?」
混乱覚めやらぬいづみの腕を、瞳が強引に引いた。
「詳しくは歩きながら話しましょう」
恭也をもう一度睨むと、瞳は、有無を言わせぬ迫力で、いづみを連れて歩き去った。
その二人の後姿をただただ見つめる恭也。
冬の冷たく乾いた風が彼の身体に吹きかかる。
まるで彼の胸中を表すかのように。
揺らめくネオンの光と、夜の喧騒に彩られた駅前の繁華街
いづみと別れ、いつのまにかそこまで歩いてきたらしい
しかし、その退廃的な光も音も瞳には届いていなかった
胸に渦巻くのは高町恭也という不思議な男の事だけだった
恭也のあの動き、只者ではない
いづみの奇襲に、瞳よりも遠い位置に居たにも拘らず、あっさりとそれを防ぎ、すれ違いざまに首筋に手刀を落とした。
しかも、手加減をするほどの余裕を持って、だ。
御剣いづみは忍者だ。
それも、アマチュアではなく国家資格を持ったプロの忍者だ。
その実力は何よりも瞳自身が知っている。
ここ最近の攻撃は特に成長著しい、最早瞳にも手加減する余裕などないほどの使い手だ。
忍者だけに気配を消されたら瞳にも気がつくことは難しいだろう。
特に今日の攻撃は危なかった。
あと一歩分、いづみに近い位置に立っていたら、反応すらも出来ずに倒されていたかもしれない。
「・・・・・・彼は、気がついてたんだ」
今日の攻防、恭也が水を注さなければ、恐らく勝ったのは自分だった。
それは自惚れではなく客観的な確信。
しかし、その勝敗を分ける『一足一刀』の間合。
あの時、恭也が呼び止めてくれていなかったら・・・
多分自分は負けていただろう。
一瞬、その考えにムッとする
「・・・・・・それは置いておいて」
逆に言えば高町恭也という人間は、プロのいづみの奇襲すら完全に察知していたと言うことだ。
『一体、彼は何者なの?』
そして、何よりも驚くべきことは、あの攻撃を避けた、ということ。
完全に背後からの不意打ちなのに
かばった相手からの攻撃だと言うのに
不十分な体勢だったというのに
御剣いづみをその腕に抱いていたと言うのに
何よりも―――――瞳(わたし)の最速にして最強、つまり会心の一撃だったと言うのに
それも、ただ避けたんじゃない。
あっさりと・・・
涼しい顔で・・・
何事もなかったかのように・・・
つまり、それは、瞳の会心の一撃は・・・
恭也にとっては、そう、高町恭也にとっては、なんでもない物でしかなかったと言う事
自惚れているわけじゃない
―――――秒殺の女王と言われた私の攻撃が!?
自分より強い人なんて他にたくさんいる
―――――全国でも相手になる人なんて居ない私が!?
胸に渦巻く謙虚さと自負の螺旋
その螺旋の行き着く先は
―――――高町恭也、彼は一体何者なのだろう?
彼女は気がついていない
―――――出会ったから幾度彼の事を考えたか
彼女は気がついていない
―――――只者ではない、そう思いながらも、時が経つにつれ彼の名を呼ぶとき、自らの頬が僅かに紅潮しているのを
彼女は気がついていない
―――――ただ、純粋に彼のことを知りたいと思っている自分に
彼女の胸に去来するのは
別れの瞬間の
彼の哀しそうな
それで居て全てを受け入れたような
僅かな
無表情の彼に顔に浮かんだ、本当にごく僅かな
寂寥の色
あの漆黒の瞳を曇らせて、木枯らしの中に佇むシルエットが頭から離れていかない。
「とにかく・・・」
深夜の自らのベッドの上で、未だ眠れずに天井を睨む
「明日彼と話をしよう」
もちろん語り合うは、剣と棍
剣士はその生き様が切っ先に出る
かつて、薫はそう言った
武道家として、瞳もまたその意見には賛成だ
だから、彼と闘おう。
そう決めたら何故だか胸が軽くなった。
眠りに沈む中で彼女の意識は、二人で共に歩いた夕焼けの帰路の情景を移していた。
艦長の戯言
大変お待たせしました
瞳ちゃん、乙女チックモードですね
なんと20万HIT突破
しかし、最近気がかりなのは、ほとんど、マジで哀しくなるほど感想などが全くこないこと
今忙しいのもあって、なんかモチベーションが上がらないんですよ。
贅沢なこと言ってるんですけどね〜
いや、やっぱり何らかの反響があると、次もがんばるぞ!と思えるわけです。
と、思わず愚痴ってしまうほど最近カウンターと感想量が反比例なんです・・・
ぜひ、ぜひ、つまらなかった!とか、続き書いて!、とか、でも良いんでなんか一言よろしくお願いします
戯言+
すいません、一晩たってこの後書きに冷や汗が・・・
以上に愚痴っぽくって、恨みがましいです。
なんか、不快な気持ちになった人絶対いますよね、これ・
本当にごめんなさい
もっと、感想を!!
つーのは本音ですが、なんかやりすぎだ。
疲れていた上に、書き上げたのが深夜3じだったもので・・・
あんまり気にしないでください。
いや、感想はもちろん欲しいです(きっぱり)
あと、10話は書き直す確率が・・・
へっへっへ、旦那。
もしかしたらレア物かも知れませんよ!
って、開き直るな!
この先の話で修正できるなら書き直さないかもしれないですが
(04 2/5)