本来、衛宮士郎はあまり夢を見るほうではない。
しかし、今晩はある意味いつもとは違っているのだろう。
夢を見ている、そう夢の中で認識していた。

黄金の槍を持ったモヒカンに襲われ、金色の18金ネックレス・・・いやいや、金色の鎧を身に纏ったヤクザもどきの男に助けられた。
憧れていた同級生のイメージは崩れ、彼女が連れているのはとても14歳には見えない老け顔だ。
挙句、神父が蟹×魚の凡そ一般受けしない趣味の持ち主だと、知りたくも無いことを知ってしまい、帰りがけには黄金の野牛に襲われたのだ。

つまり何が言いたいのかといえば、衛宮士郎は疲れていた。
それ故に眠りは深い。
それは、深く深く自らの内に埋没していくような眠り。

「目覚めなさい」

その声が、その内側に閉じた世界に亀裂を入れる。
この瞳を開けば、きっと良くないことが起こる。
きっと、また金色の関係者に違いない。
そんな勘と言うよりも、今までの経緯を考えればどう考えても思い当たるような嫌な予感を前に、頑ななまでにその声を無視する。

「ふう、いつまでそうやって殻に閉じこもる気なんです」

呆れたような呟きに、次いで耳を叩く言葉。

「衛宮士郎の本分は闘うことではない」

それは、以前に聞いた言葉だった。

「ならばどうする?」

殻の外で、諭すような呟きは続く。

「現実で勝てないのなら、勝てる物を生み出すしかない」

その言葉の一つ一つが己の内側に刻み込まれていく。
これは、忘れてはいけない言葉だ。
衛宮士郎の本質を指し示す言葉。

アーチャーに、もちろんサジタリアスではないアーチャーに、何周か前のシナリオでも言われた。

そもそも、ここは衛宮士郎の内面世界。
ここに存在しているのは衛宮士郎の知り合いだけ。
ましてやここは、本来ならば本人にしか入り込めない心の最も深い場所。
ここに存在できる他人など居るわけがない。

そう、他人ならば、だ。

だが、アイツなら話は別だ。
俺に冒頭の言葉を刻みつけたあの男。
俺ではない、オレ。

さあ、眼を覚ませ衛宮士郎。
あの男の前で、これ以上無様な様は見せられない。

己を奮い立たせ、エミヤシロウに向かい合うために、その閉じた瞳を開いた


聖闘士Fate

巨蟹宮篇


「あ、やっと目覚めましたね」

開いた瞳に映ったのは、予想に反して見たことも無い男だった。
間違いなくただの一度も会ったことがない。
多分すれ違ったことすらないはず。
一度でも見ていたら、きっと生涯忘れられないはずだ。

美しい淡い紫の髪も、高貴さすら感じる優雅な微笑みも、女性と見間違うほどに端正な顔立ちも。
何よりも、あの眉毛

まあ、金色の聖闘衣来てる時点で、あちらの関係者であることは間違いないが。

「ここはアーチャーじゃないのかよ!!」

「何でアイオロスが貴方の夢に出てくるんですか?」

心底呆れたように返答されたが、アーチャーはアーチャーでも違うアーチャーなんだよ!
ってか、だったらそもそも、なんで会った事もない無いお前がここに居るのかと、こっちが問いたい。

本当は眉毛に突っ込みたいが、突っ込んだら即BAD ENDに直行間違いないのでここはグッと我慢。

「ああ、私が会った事もない貴方の精神の一番深いところに居る理由ですか?
簡単ですよ、テレパシーで無理やり介入しました

「テ、テレパシー!?」

もう、何が何やらだ。
あ、でもそういえば昨晩セイバーが、麻呂眉の超能力者な仲間が居るって言ってたような。

「って、無理やり精神に介入って、かなり危ないんじゃないのか」

「そうですね、私はともかく、失敗すれば貴方の精神はきっとズタズタでしょうね」

あっけらかんと怖いことを言う人だ。
優しく優雅な微笑を湛えたままというのが、むしろ余計怖い。

「そんなに心配することはありませんよ、私こう見えても、テレキネシスの強さは黄金聖闘士の中でも随一ですから」

「黄金聖闘士ということは、やっぱりアンタも・・・」

「当然ですよ、それとも貴方は他に、こんな派手な鎧を自発的に着て歩く知り合いがいるんですか?」

居るかーーー!!

っていうか、出来るならあんたらとだって知り合いになりたくなかったわ。
・・・あ、一人居たな、黄金の鎧着てる神話の時代の生き残りが。

「セイバーが言ってたムウかシャカって人か・・・」

というか、跪けとは言われて無いから、恐らくはムウと言う人だろう。麻呂な眉毛だし。

何だかわざと失敗して精神をズタズタにしたくなりました

「・・・申し訳ありません」

何もかもお見通しとでも言うような、ぞっとするようなキレイな微笑みに思わず冷汗が。
条件反射的に土下座をしながら気がついたのは、遠坂に少し似てるな、ということだった。

「私が危険を冒してまでここに来たのはですね」

危険なのは主に俺だがな

「貴方にアドバイスをするためです」

「アドバイス?」

というか、突っ込みはさり気に無視ですか。

「先程、何故アーチャーではないのか?
貴方はそう問いましたね。
単純な話です、あの人には貴方へのアドバイスなんて出来ません」

「いや、そもそもアーチャー違いなんですけど」

「というか、私以外の人間にはこの役どころは出来なかったんですよ。
あの人たちは壊すだけの人たちですからね」

確かに、あの人たちのせいで世界観は木っ端微塵だ!!

「貴方は本来『使用者』ではなく『製作者』なんです」

その言葉に、心がざわめく。
衛宮士郎の精神が、いや、この身を魔術師として為す魔術回路が、その言葉にざわめいている。

「私もそうなんです」

「・・・あんたも?」

どう見ても、他の金ピカ軍団と同じく、世界観を壊してるようにしか見えないんですけど。

「これは、大切な事だからよく聴いてくださいね」

その言葉に先程の言葉を思い出す。

そう、衛宮士郎は製作者なのだと告げられた時、脳髄に浮かんだのは赤い騎士。
衛宮士郎には勝てない強大な敵を前に何ができる。
勝てないのならば、勝てるように何かを用いなければならない。
否、現実で勝てないのならばどうする。

その答えを、きっと自らも製作者だと名乗るこの男が―――

「いいですか、小宇宙の究極はセブンセンシズなのです」

―――――言うわけなかった!!!!!



「せぶんせんしず?え?いや、ちょっと。ここは・・・」

「いいですか、聖闘士同士の戦いは、どちらがこのセブンセンシズにより近づけるかにつきるのです」

頭の中の、イメージが遠ざかっていく!

「え、ちょっと、現実に勝てないのならせめて想像の中で勝つとかさ・・・」

「は?」

ウワッ!!今すっごい馬鹿を見る眼で見られたよ。
ほんと、こう言う時の反応が遠坂に似てるな、おい。

「貴方、ナニを言ってるんです?想像だけで勝てるのなら、誰も苦労しませんよ

「・・・いや、そうなんだけど・・・さ」

頭の中に居た赤い騎士が遠ざかっていく。
なんか、赤い剣の丘とか、いろいろキーワードってか、大事な物が浮かんでたはずなのに。

「それは、そうだけど、なんか・・・」

まだ食い下がる士郎に向けて、ハァ・・・なんて露骨に溜息を吐くムウ。

ほんと、遠坂にしろ、このムウって人にしろ、美人がこういう表情すると、この上なく傷つくな。
こうなんの遠慮も無く「このヘッポコ」って態度と視線がザクリザクリと胸に突き刺さっていた。

「第一、考えてください。
本当に想像だけで現実を凌駕するならですよ、あの少女(遠坂凛)はどうなんですか?





確かに正論だ!!





「想像だけで、何とかなるなら、今でも遠坂は憧れの女の子のままだ」


そのあと延々とムウから解説され、気がついたら小一時間くらい話を聞かされてた気がする。
何でも、黄金聖闘士は俺たちの思っている以上に強力な存在だと。
俺が、その強さを1だと思っているのなら、その10倍も20倍も恐ろしいとか。
幼い頃から、聖域とか言うところで、修行に明け暮れてたんで普通じゃ無い人が多いとか。
まあ、私は聖域から抜け出して、ずっと世間で暮らしてきてますから違いますけど、とか言っていた気がする。

でも、階段もない5階か6階建ての家に住んでる時点で普通じゃないと思うんだ。

そんな、ためになるのか脅しなのか、単なる嫌がらせなのかわからない話を聞き、衛宮士郎の意識がゆっくりと覚醒していくのを感じた。





眼を覚まして朝の光の眩しさに思わず眼を細める。

重い身体を引きずり、胡乱な頭のままでとりあえず朝食を用意する。
食卓を囲みながら、遠坂とセイバーとアーチャーが今後の行動について話しているのが聞こえる。

「恐らくは全員、あんた達と同じ・・・」

「結論を出すには、もう少しサンプルが・・・」

「ならば、確認に行くのが・・・」

「居場所がはっきりしている敵なら・・・」

「よし、じゃあ今晩早速アサシンを確認しに・・・」

断片的な会話の中で、時に話を振られるが、それに対し、あやふやなままで上の空の返事を返す。

あんな夢を見たからか、とろんとした意識は、なかなか覚醒せずに、ムウの最後の言葉が頭の中をリフレインしていた。






「本当だったら、さっきも言ったとおり、唯一『聖衣(武器)を作り出す』スキルがある私こそが『アーチャー』役にはまるはずだったんです」

「そんな、ネタバレだかなんだかわからない微妙な発言をされても・・・」

「でも、まさか『射手座』なんてそのままの人が居るのに、『アーチャー』名乗るわけにもいかないじゃないですか!!」







 


魔術師の後書き

最近、マイブームで再びセイント星矢が着てるのと、妙にコメントやメールで聖闘士Fateネタが多いので、続きが書きたくなっちゃった聖闘士ネタです。
短いけど、ゴメンしてください。
しかし、チャンピオンで連載されてる前聖戦のマンガけっこうお気に入りです。
タウラス大活躍だしw

実は、このあとの話の途中まで書いてあったのですが、次回ネタがノリノリで量が増えそうなんで、先にムウ@英霊エミヤのアドバイス役
ネタをわけてあげちゃいます。

まあ、黄金の12人の中で『物作り出せる技能』はこの人しかもってないですから。
アーチャーこと、アイオロスにはさすがにアドバイスは無理でしょうし。
ムウなら、テレパシーって事で、何で精神世界に居るのってのもクリア可能ですし。

ちなみに、もう一人のアーチャーには当然別の人を用意してます。

もう、配役も含めて全部決まってるんで、メールで予想してもらっても変更利きませんので。
バシバシ当てに着ちゃってください。
WEB拍手は不特定多数の人に返事公開しますから正解とも不正解とも言いかねますが、メールで言ってきた人には正解なら正解って返事出しますよ。
一応、全キャラ多少強引にでも理由付けはしてますから、けっこう当ると思いますよ。

作中でも
セイバー@シュラ、は聖剣つながり
アーチャー@アイオロスは、射手ですから
バーサーカー@アルデバランは、大きい、12人で一番のパワー、死んだと思ったら生きてる、かませにされやすいww
ランサー@モヒカン、この人だけ黄金ではないのも理由も一応あるのですよ。

さて、残る席はあと5役。
このあとは、全員黄金ですので、予想してみてください。
難易度高いのはライダーかな。
キャスターも意外と盲点かも。